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04 28
2012

書評 ビジネス書

五木寛之の本でも読めばよかった―『挫折力』 冨山 和彦

4569791964挫折力―一流になれる50の思考・行動術 (PHPビジネス新書)
冨山 和彦
PHP研究所 2011-01-19

by G-Tools


 挫折というのはなにをもって挫折というのか定義がむづかしいだろうし、挫折にはヒロイズムのナルシズムがただよっているようで、どうも真に受ける気がしない。

 この著者の方、そうとうの肩書きがずらずらと並んでいて、どうも挫折したように見えないですが。コンサルタントから産業再生機構で名をあげた方のようで、この人、挫折の本を書く資質に値するのかという思いのほうが強かった。以下、本の内容から。

 優等生は「間違いを恐れること」、「嫌われたくない」という思いが年を追うごとに高まってゆく。優等生は強い立場の人の心を読むことにひじょうに長けている。自分を抑えてテストの意図を読むことで正解にたどりついてきた人は発想力や想像力が劣る。

 答えのない問題を考えたり、問題設定を自分で行い、自分なりの答えを創造してゆくことができない。

 危機のときに機能しないリーダーは「解の公式」や「正しい公式」があると思い込んでいる。学者やエコノミスト、ビジネス書に頼る。世の中にそんな「正解」などない。トライ・アンド・エラーで学んでゆくしかない。ああでもない、こうでもないとアイデアを絞りつくしたあとは、覚悟を決めて実行する。

 これらは優等生リーダーの批判によくいわれること。多くの人から同じことを聞かされるとほんまかいな、と疑いたくなってくるね。

 挫折を糧によみがえるためには「敗因分析」が必要なのだが多くの人はこれを苦手としている。いやなことはふりかえりたくないね。それで同じ失敗をなんどもくりかえす。過去の自分を他人だと思うと気楽にできるというのが著者のアドバイス。

 問題や失敗というのは学ばせてくれるというのはたしか。その機会がないとそれについて考えたり、問題を探ろうということにはならない。成功すれば、いちばん学ぶことも反省することもない。

 不幸を癒せるのは不幸を経験した人だけといわれている。順風満帆の人に励まされてもなにもうれしくない。悩みに苦しんだ人ほどその悩みを多く知っているのだろうね。いまは成功した人に学べとなっているが、悩みや困難にもがいていない人に学べるのか。

 何かを失えば、そのぶんだけ身軽になる。こだわりがなくなり、新しいものが得られる。「何かを得るためには、何かを捨てなければならない」。

  たぶんこの本の購入の決め手はリアルな権力との扱い方が描かれていたからだと思うが、権力の源泉はカネとヒトを動かせる力だと単純なことにまとめてしまうあたり、個別の経験と普遍な理論をまとめることに成功してはいないんだと思うが。まあこのエライ人に対してわたしがなにをいっても飛んで火に入る夏の虫だが。

 「挫折力」というのは五木寛之の本でも読んでいたほうがよかったかもしれない。この本の著者、肩書きや立場がすばらしくてぜんぜん挫折の共有ができなくて、つまらなかった。

 ダメ人間やできない人間の挫折や失敗ではない。仏教者や心理学者からの声を読んだほうがよかったかもしれない。この人、ホントに「挫折力」という本を書く資質に値したのか。


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