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04 20
2012

書評 ビジネス書

自己実現は仕事の外? 内にある?―『「キャリアアップ」のバカヤロー』 常見 陽平

4062727110「キャリアアップ」のバカヤロー 自己啓発と転職の“罠”にはまらないために (講談社プラスアルファ新書)
常見 陽平
講談社 2011-04-21

by G-Tools


 参考になることやいいことは書かれているのだが、全体になにいっていたのかなとまとめにくいな。「キャリアアップや転職は幻想だ」とか「的外れな自分磨きにハマるな」ということをいっていたのかな。

 キャリアアップにバカヤローといっても、極端にそんなクソくだらないことはやめてニートやフリーターでラクに生きろとこの本はいわないわけで、就活やコンサルタントでメシを食う著者は、けっきょくはスキルアップでないまでも生き残る術を教えるわけで、キャリアアップ本にならざるをえないのがこの本の全体がぼやける理由かな。

 こういう本はニートやフリーターのすすめまでは絶対に書かないわけで、キャリア本やスキルアップ本の同類に収まざるをえないので、社畜やブラック企業、労働至上主義までの問題圏まで射程はとうぜん広がらない。

 まあ、「悪い」キャリアアップに惑わされないで、「真の(笑)」、「ほんもの(笑)」のキャリアアップを目指しましょうという本になるのだろう。ニートや社畜批判からの声にはどう答えるのだろうかと疑問に思うが。

 まあ、この本に期待していたいちばんのトピックは「ビジネス書や自己啓発書を読んで、人は変わることができるのか」という問題あたりになるのだろうか。資格にしろ、いまやっている仕事に生かせない、行動に組み込めない知識や技術は学んでもムダだということである。

 生き残れないかもしれない、企業に求められるのは「神様スペック」といわれるほどの高基準になっている現在、人はビジネス書や自己啓発を読んでみずからを武装してゆこうとしている。勝間和代なんかがその空隙を埋めたわけだが、批判をうけて撃沈していった。

 けっきょくのところ、軍艦が沈んでいる甲板でいくら勉強したところで、多くの人は変われないのではないだろうか。ニートやフリーター、下流の人たちのようにあきらめていまを気楽に楽しんで生きるしかないのだろうか。「ガンバリ系」と「あきらめ系」の衝突の中で、「ガンバリましょう系」に属するのがこの本である。

 自己啓発でがんばっていても仕事ができない人のカン違いは、自己満足になって、顧客が期待していることを理解できていないことがあるのかもしれない。顧客を必要とするものを与えるのが仕事であって、あんがい会社から仕事を与えられると思ってい人は気づかないかもしれない。「顧客の想像以上の価値を与える」ことが仕事がデキるということである。

 「やりたい仕事がしたい」とか「もっとクリエイティブな仕事をしたい」という気もちが強まっているが、これも自己満足であって、顧客はだれも他人の自己満足にお金を払わない。自分の満足があるときにだけお金を払っていいと思う。「やりたい仕事をしたい」という風潮はかなりのところ、的外れじゃないだろうか。

 やりたいことをやって自己実現したいという風潮はニートや下流でラクして生きたいという方向で重なっていて、顧客の満足のために苦労や我慢して便益をあたえるという方向からズレていて、忍耐や苦痛を我慢するという敷居をどんどん下げているだけではないだろうか。仕事の自己実現の考えが、キャリアアップやジョブ・ホッパーなどのいつまでも終わらない向上と不満をもたらすのではないだろうか。

 生き残らなければならないから自己啓発や仕事術の本を読むのだが、自己実現の欲求がそこに重なるとカン違いの的外れの方向につっ走ってしまう。だれも自分の自己実現などに金を払ってくれない。それは金を払ってする趣味である。お客さんの満足を与えてはじめてお金を払ってもらえる。他人の満足に自分の苦痛や忍耐を喜んで払えるのかということが仕事ではないだろうか。

 自己満足や自己実現を仕事以外の生活や趣味に求めたのがニートやフリーターであって、この本では仕事の中にそれを求める方向に走っている。仕事のリア充をめざしていて、外野からは社畜や終身刑だと揶揄される生き方である。

 自己実現は会社や仕事の中にあるのだろうか。それともそんなものは仕事や会社の中にはなくて、あくまでも仕事の外に求めるべきものなんだろうか。

 わたしなんか完全に会社人生からスピンアウトしたのだが、メシを食えない恐れもあるので、会社に自己実現を求めてきた人たちの教えをたれるような本をさいきんはさかんに読み出している。圧倒的に自分との落差・劣位を思い知らされる瞬間である(泣)。

 自己満足や自己実現は仕事や会社の外にあるのだろうか、それとも内に見つけるべきなんだろうか。

 内に見つけようとした人たちがキャリアアップの罠にハマって、顧客の満足を視野から外した自己満足を追ってゆくことになっているのが現状ではないだろうか。「やりたい仕事」、「自分が輝く仕事」にだれがお金を払ってくれるの?



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