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04 17
2012

書評 労働・フリーター・ニート

仕事に迷った人に―『働く理由』 戸田 智弘

4887595654働く理由 99の名言に学ぶシゴト論。
戸田 智弘
ディスカヴァー・トゥエンティワン 2007-07-12

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 仕事に迷っている人にはいい本になるのではないかな。ただ章ごとのテーマが尻切れトンボの印象があって、もっと掘り下げてほしいテーマもあった。以下引用。

「すべての人生のことは「させられる」と思うから辛かったり惨めになるので、「してみよう」と思うと何でも道楽になる」
 曽野綾子



 この「させられ感」というのは大きな壁で、学校や会社から「させられている」と思うようになると、そこからすこしでも減らそう、ラクしようという発想になる。でも世の中は物々交換の商売と考えると、払った値段より低い価値やサービスしかしない者にはお金を払いたくないと思うものである。会社もそう考えるのではないか。

小学校の門をくぐってからというものは、一生懸命にこの学校時代を駆け抜けようとする。その先には生活があると思うのである。学校というものを離れて職業にありつくと、その職業を成し遂げてしまおうとする。その先には生活があると思うのである。そして、その先には生活がないのである」
 森鴎外



 これが森鴎外の言葉だとは意外である。明治から日本人はずっと同じだったのである。目的地に早くつくことより、プロセスや過程が大事なことを知っておくべきである。

「多くの場合、「やりたいこと」には現実感が乏しい。自分の体験から導きさだされたものではないからだ。一方、「やりたくないこと」には現実感がある。多くの場合、何らかの体験や経験に基づいて「やりたくないこと」が導きだされる」
 戸田智弘



 これ、実感としてよくわかる。「やりたいこと」はやったことがないから、やれるかどうかわからない。やりたくないことは実体験から導かれる。中島義道はやりたくなものを排除してゆくとやりたいものが最後に残るといっているが。

「才能というのは、その人が小さい時から自分の孤独と傷を癒すために、必死で自分を首肯しようとしてきた結果のことなんです」
 小倉千加子



 重い言葉。作家とか孤独とかのけ者にされた過去から才能を生み出した例とか多いですね。

「才能は自分の中にはなく、社会の中にある」
「才能は自分の中になく、他者の中にある」
 山田ズーニー



 才能というのは他者や社会からの影響によって生まれるのであって、孤立して生まれるものでもなく、ひきだすのも個人の中からだけではない。

「ありふれたことだが失敗と成功は表裏になっている。みんな失敗を厭うもんだから成功のチャンスも少ない」
 本田宗一郎



 人は失敗を恐れて平穏な道を選ぶのだが、やりたいことやほしいものを得られずに終わる。失敗や恥の先にしか成功や成就はないのである。

「お客様は、自分のやりたいことに対してお金を払うのではなく、お客様のやってほしいことに対して、お金を払う。自分のやりたいことと、お客様のやってほしいことは、まず一致しないと考えたほうがいい」
 木村志義



 みんな自分のやりたいことをやるというのだが、商売やお金というのはお客のやってほしいことに支払われるものである。自分のやりたいことにお金を払ってくれるわけではなく、自分がやりたいことはお金を払ってする趣味である。お客のやってほしいことをベースに、自分のやりたいこと、価値あることを考えるべきである。

「「もし商売をやるんだったら、自分はどんな商売をしたいか」「もし店をやるんだったら、自分はなにを売りたいか」「もし会社をおこすのだったら、自分はどういう会社を作りたいのか」と考えることは、自分が何をやりたいのか鮮明にしてくれる
 村上龍」



 この発想はしみじみわたしも大事だと思いはじめている。自分がゼロからつくりだす発想をしてはじめて、会社や仕事もわかってくる。雇われるとか仕事を与えられるものだと考えていると、お金のもらえるはじめが見えなくて、自分のラクとかトクでしか仕事が見えなくなる。

「「仕事=金儲け」という効率のよさを選んで、日本人は、仕事から派生する人間関係の幸福を捨ててしまった。仕事の効率の悪い方が、そこで働く人間達は豊かな人間関係を持つことが出来る」
 橋本治



 これは日本社会の陥った大きな過ちですね。サービスやお金の効率化を図ったために豊かであたたかい人間関係を失ってしまった。人間関係をそぎ落として効率的なサービスだけを求めたから、ますます人間関係から得られる豊かさ、満たされた気持ちから疎外されてしまっている。

働くことで他者とのつながりができ、それらを通して自分の存在意義を確認できる。人間は、他者によって承認されることを通してでしか、自分を承認できないからだ。自分で自分を承認することはできないのだ」
 戸田智弘



 これはたしかにと思う反面、反発する部分もある。無職やニート、年金生活者の空しさはこんなところにあるのだと思う。人とのつながりの承認がないのである。でもそれは仕事からだけではなく、地域であるべきであったと思うのだが。

 それと承認を他人だけに求める生き方は他者への依存と隷属をもたらしてしまう。承認は自分から得られないのか。自分を励ましたり、認めたりする自分は、自分の内面の最後の砦としてずっと必要なものではないのか。


続・働く理由 99の至言に学ぶジンセイ論。 働くということ 仕事の思想―なぜ我々は働くのか (PHP文庫) 仕事は楽しいかね? 僕らが働く理由、働かない理由、働けない理由 (文春文庫)
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