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04 12
2012

労働論・フリーター・ニート論

「与えられた人生」からいかに自立するか―『キャリア・カウンセリングが会社を強くする』 岩尾 啓一

4766783174キャリア・カウンセリングが会社を強くする―本気で、個人も会社もしあわせになる法、教えます
岩尾 啓一
経済界 2004-10

by G-Tools


 キャリア・カウンセリングというのは即効的なアドバイスをもらえるのではなくて、自分で解決するためのアドバイスだそうだが、ほとんどの人は教えてものだと思っているらしい。

 日本人というのは仕事も人生も「すべからく与えてもらうものだ」という信念にどっぷりつかっている。

 教育も仕事も与えられて、ほかに選択肢がなかったのだからとうぜんだともいえる。そして「与えられた」ものからリストラで放り出されて、途方にくれるという構図があまりにも多かったのではないだろうか。

 「与えてもらう人生」から脱却して会社や組織から自立する個人が生まれ出ることがこの転換期に必要なのだが、「お任せ人生」から抜け出すには個人の意識転換も大事だが、会社や国家、社会意識の転換もそれ以上にアナウンスされる必要があるのだろう。根はかなり深いものだと思う。

 強権的で一方的な「与えてやる」教育や会社のあり方のままでは自立的な個人、自立的なキャリアなどのぞむべくもない。どっぷり「与えられた」人生につかった生き方から脱却するには、個人もそうだが、会社や国家のほうも口をあけて待っている人たちへの依存を断ち切らなければならない。双方の依存があるから、おたがい自立できないのである。

 「疑問をもったら負け」だとか「人と違う道をいけばお終いだ」という人生コースが決まっていたこの国の会社人生において、みずから人生や仕事を切り開く個人のキャリアはどれだけ受容されるのだろうか。決められた人生コースから外れたものは受け入れないという会社があまりにも多いのである。

 キャリア・カウンセラーの著者は失業者相手の支援事業で、九割もの人が職務経歴書の存在を知らないことに驚いている。また派遣労働者に対して自分のお金をつかって自己投資する人がまったくいないことの気概のなさに驚いている。これらは会社が選択を奪って自立的な生き方を許さなかった行動と表裏一体である。

 教師の研修でもだらけていたり、不作法な態度に憤っているが、このオサーン、たぶん上から目線とか、受講者を侮蔑する目線をもっていそうな気がする。この共感や同じ目線の欠如は、支援をむづかしいものにしているんではないかと心配になるのだが。カウンセリングに必要な受容的態度よりか、拒絶的態度が先に立っている気がするのだが。

 教師は受験勉強に必要な知識を教えてくれる。しかし、それを使って、どう自分の人生を切り開いてゆくかということには、教師はなにも教えられない。

 この狭間において、新卒で企業に入れなかったフリーターやニートの階層は増えてゆくのである。自分で生きてゆく力・方法を教えられなかった若者たちは、与えられた会社人生のコースからも外れて道を迷うのである。

 ただ与えられた人生を幸福に感じてきた人も少ないのも事実である。著者は再就職支援で会社をやめた人を何千、何万と見てきたというのだが、「会社に対して「感謝」とか「愛情」をもってやめていった人はほとんどいなかった。「憎しみ」に近い感情をもってやめていった人がいかに多かったか」といっている。はたして「与えられて」安定した人生は幸福だったのか。

 会社の人事評価で低評価になった人というのは、「人と積極的に関わってゆく部分に対して腰が引けてしまっており、リサーチなど「静態的」な能力に対する嗜好が見られる」ということがいわれている。会社というのは指導性(リーダーシップ)を重視するのである。

 キャリア・カウンセラーの不信というのはあると思うが、その業界を渡り歩いた人でないと感覚的にわからない部分がたくさんあると思う。バックラウンドや経歴が違う人になんのアドバイスができるのかと。

 エンジニアの仕事をしてきた人が営業職のアドバイスをすることはできないし、ヒラの仕事をしてきた人が社長へのアドバイスをすることもむずかしいだろう。個人が数多くの職業をすべて知ることは不可能なので、カウンセラーの役割はともに答えを探ってゆく、みずから決定することを補助する役割が求められるのだろう。なんでもわかる、アドバイスできると教える立場が求められるのではない。

 2001年の大卒者のデータだが、三年以上勤めたものは27%しかおらず、あとの七割という大半は転職してしまったか、無業になってしまっている。

 これは怠けや忍耐力がなくなったという問題ではなく、なにか是が非でもほしいものがあるという欠乏がないのだから、ガマンするとか忍耐をムリして継続するモチベーションがもうないのだからだろう。こんな時代に欠乏の時代にできた勤務体系や長時間労働、就業規則などもう維持することができないと考えるほうが妥当というものである。

 キャリアをみずからつくりだしてゆく、切り開いてゆくという行動がこれから必要になる時代だと思う。カウンセラーの視点はみずからをかえりみる視点を与えてくれる。

 いかに自分のキャリアを考えずに、人生設計のない人が多いかと嘆く視点がこの本から見えた。それは選択を奪われて与えられつづけられた国家と会社の人生と表裏一体である。



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