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04 11
2012

労働論・フリーター・ニート論

労働者も「安く買い叩きたい!」

 わたしたちだって買い物するとき、高い価値のあるものをすこしでも安く買い叩きたい。少ない金額で最大の価値を手に入れたい。不良品や故障品をつかまされたら怒り狂うだろう。

 この消費者の感情というのはそのまま会社の雇う側に適用したら、会社や経営者がわたしたちを雇うときの損得勘定や胸算用がよくわかるのではないだろうか。

 雇われる身としてはすこしでも労働時間を少なくして、労働量も少なめで、ラクな仕事で最大の給料や処遇を手に入れたい。消費者としてはそう行動するのが最大の効用である。

 しかし企業で働く身になったら、自分の利益を最大にする行動や考えはつつしまなければならない。なぜなら上司や会社はわたしを使うことによって最小の投資で最大の利益を得ようと待ちかまえている消費者なのである。お客さんなのである。

 うかつに自分の最小投資・最大利益のホンネをもらしてしまえば、会社側の最小投資・最大利益の行動と抵触してしまう。会社に入れば、会社側の利益にはせ参じる気持ちを最大限に発揮することがもとめられるのである。さもないと総スカンか、使えないやつだ、サボっていると評価されてホサれるだろう。

 会社側にとっては最小の金額で最大の効用をうることが従業員にもとめられる最大の美徳である。経営者から見れば給料以下の働きしかしない者は「払い損」なのであり、給料以上の働きをする者は「おトク」であり、「大儲け」なのである。

 会社は利益や儲けが少なくなれば従業員を買い叩いて、最大利益を搾りとろうとするだろう。こき使われる身にしてみれば強欲や権力を傘にきた搾取だと腹にすえかねるだろう。

 しかし会社もお客に買い叩かれている。お客も少ない金額で、最大の利益を得ようとしている。安売り競争がおこっている業界ではもっと買い叩かれるか、さもないとほかのライバル会社に利益と客をもっていかれるかもしれない。

 お客に安く買ってもらうために苦しい会社や経営者が考えることは従業員の給料を下げて商品の価格を下げるか、従業員を最低賃金を下回るような長時間労働でふたり分の仕事をしてもらうことである。ふたり分の仕事をひとりでしてもらえるなら、経営者はふたり分の労働力を買わずにふたり分の労働量を手に入れられる。

 こういう経営者や、こういう労働力ダンピングでしか生き残れない値下げ業界があまりに多い、あるいはそうでしか生き残れない業界があまりにも多いのが日本のサービス業の性格かもしれない。

 会社というのはわたしの労働力を安く買い取って、最大の利益を手に入れようとするお客である。わたしは買い主の利益にそうように安い給料で最大の効用を与えるか、最大の効用を与えて給料をつり上げる努力をしなければならない。

 といっても買い手の権力があまりにも大きくなりすぎる労使関係は、権力の抑制がおこなわなければならない。一方的な権力の行使によって長時間労働に縛りつけたり、業績不振を理由にクビをかんたんに切ったり、給料を大幅に下げたりされないよう、権力の抑制を厳しくとりしまる必要がある。

 日本ではその権力の抑制がザルのようにダダ漏れにされたままであり、労働者の不幸と悲哀がいつまでも終わることはない。労働者は人間であり、長時間労働やとつぜんの解雇などの酷使・雇用責任の放棄にたえられるものではない。権力のアンバランスを抑制させる役割の国家が買い手側の権力と同調してしまっているのである。

 デフレの業績不振によって企業は安く買って、最大の効用を得るために社会保険や長期保障をあたえない非正規雇用の労働契約を増やしつづけている。これは労働者に与えよという条件の社会保障や長期保障を与えずに、労働者を得ようという払い逃れである。おまけにそのような雇用形態を怠けゆえに選びとった若者が悪いという世間の声もまかりとおる。

 非正規というのは企業が正規の値段で買わずに、社会保障・長期保障の掛け金を払い逃れした雇用形態であり、企業が国家の課せられた条件を逃れたゆえに「非正規」なのである。責めは企業が受けるべきものではないのか。それがこの国では事業がなりたたないといった言い逃れで、払わずにすむのである。

 購入のときに義務づけられていた課金を払わずに、商品を手に入れたようなものである。これがずるずるとつづいて増えるのが日本である。

 どの立場の者も安く買って大きな利益を得たい。お客に売るときは安い値段で最大の効用があるように宣伝して、メリットが得られるようにしなければお客をひきとめておくことはできない。

 求職者が仕事を得るためにはいかに会社に役立ち、得するかを説明しなければならない。わたしはできません、力不足ではだれもわたしのサービスを買わない。最大のメリットあるものを選ぶ。役にたたないものはとうぜん選ばない。

 労働者は最小のコストで最大のメリットを得られるのがいちばんの合理的な行動である。しかし会社の論理では最大のコストをかけるように圧力をかけられる。会社側は最大の労力を手に入れるほうがトクだからである。

 この国の不幸は会社の利益と同一化してしまって、労働者側のホンネがいえなくなったことである。休みたい、ラクしたい、サボりたいのホンネがいえなくなった。会社のメリットと労働者のメリットは対立してとうぜんなのに、この国ではその対立を表立たせることはご法度である。会社の権力の抑制がまったくおこなわれていないか、放任されているために、対立相手に同調・同化するしかないのである。

 もし最小投資によって最大利益の極大化が図れずに、最大投資だけを求められる不利な契約ばかり押しつけられるなら、ニートのように働かないほうがトクかもしれない。ワリに合わないのである。ごく正当な合理性なのかもしれない。

 この記事の意味は自分の買い物をする目で、相手側の利益・メリットのあり方を見てみよということである。そうすれば安く買い叩いたり、最大のメリットを求める行動が見えるだろうということである。わたしたちはひじょうに蓮っ葉で、ドライな購入行動をしているもので、それはわたしを雇う会社や経営者も同じ目でわたしたちを見ているということである。


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