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03 12
2012

TV評

名作『イグアナの娘』をひさしぶりに見れたので精神分析する

 1996年にテレビドラマ化された『イグアナの娘』は名作だと思う。おりにふれて前から見たかったドラマだが、ネットの動画でふたたび見れる機会にめぐまれたので、ちょっと書いておきたいと思う。

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 ▲鏡に写った自分のイグアナの顔をみて脅えるリカ(菅野美穂)

 こちらで見れるかどうか。なければ「無料動画」で検索してみてください。11話まである。http://www.tudou.com/programs/view/eIH8z6R4ZEQ/

▼You Tubeでごらんになれます。



 自分のすがたがイグアナに見えてしまう女の子の物語である。母には娘がどうしてもイグアナに見えてしまい、冷たくあしらわれることによってすっかり自信のない娘に育ってしまい、自尊心をとりもどすまでの物語である。菅野美穂が主役である。

 劣等感や自尊心の欠如におびえる女の子から、友だちをえたり好きな人に認められたり、自立を勝ちとってゆくさまは感動的である。ダメな女の子から成長した女性になる物語は気持ちを奮い立たせてくれる。わたしにとってはずっと名作ドラマである。

 トラウマ・ドラマの走りである。イグアナというのはもちろん劣等感や自信のなさ、自分をダメだと思う心、自尊心の欠如、母への依存心などの象徴である。イグアナはかたちあるものではなくて、かたちのないものが具体化されたものである。

 これはカエルが王子様になったりするおとぎ話と同じである。たとえば童話でのカエルというのは性的嫌悪の象徴だったりしてその克服がえがかれる。子どものころにはその意味がわからないわけだが。

 『白雪姫』と同じである。『白雪姫』では母からの自立、性的成熟がテーマになっているわけだが、まあ大人になってもそのテーマを知らないかもしれない。

 『氷点』というドラマがあったが、これもまったく『白雪姫』と同じだと思うのだが、殺人者の娘を育てるという設定は、母にとっては娘は死の予告者であり、若さの衰えの恐れの象徴でもあるということである。『イグアナの娘』ではおもに劣等感や自立がテーマになっているのだが。

 母に娘がイグアナに見えてしまうというのは、母自身の劣等感や自尊心の欠如が娘に投影されたものである。娘はその母から精神的虐待をうけて、すっかり自信のない子に育ち、母の劣等感をそっくりうけついでしまう。それは母自身の劣等感である。

 母には娘がイグアナに見えるわけがわからず、つまり自分の劣等感を娘に投影していることに気づかずに、娘を殺そうとしたり、精神的虐待をおこなう。娘が自信や自立を勝ちとってゆくにしたがい、母は自分の顔がイグアナに見え、娘の自立が完璧なものになると死んでしまう。

 つまりこれは娘にとっての劣等感の消滅である。この物語は母が現実のものであるというよりか、娘自身の劣等感が具体的なすがたをあらわしていると見るのがいいのかもしれない。娘が自立したときに母は消滅してしまうのだから。

 母からうけついだ劣等感を認め、劣等感をありのままで生きてゆこうとしたとき、母は自分の顔がイグアナに見え、投影がひきもどされて母は死んでしまう。劣等感は主人公の心の中で消滅してしまうのである。それは抱きしめてともに生きてゆこうとしたとき、克服されるのである。

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 ▲鏡に映った自分のイグアナの顔に「あっかんべー」するリカ。

 精神分析や交流分析では母や親が幼少期から虐待してきたから憎め、抑圧されたその感情を思い出すのだといった話をよく聞くのだが、この虐待する母というのは現実の母ではなくて、内面化された自分を責める心やこき下ろす心が具体化されたものをあらわすのではないだろうか。敵は現実の母ではなくて、わたしの心の中に住みつづけている。

 精神分析や交流分析では過去や幼少期の問題にされ勝ちだが、これは過去の問題ではない。現在の問題であり、現在の心のあり方自体が問われるべきだろう。だから過去の問題としてカン違いされ勝ちな精神分析はわたしは嫌いである。現在の心のあり方自体が問われなければならない。

 90年代にトラウマやアダルト・チルドレンといった精神分析、交流分析系のことばが流行ったのだが、認知療法やポジティブ・シンキングといった過去を問題とせず、現在の考え方だけを焦点にすえるセラピーも同時に出てきた。わたしもこの立場にくみするので、過去や親の問題と捉え勝ちになってしまう精神分析・交流分析派には懐疑的である。

 過去になにがあろうと、現在の考え方・捉え方自体が問題なのである。そこをカン違いしてはならない。


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4896914228昔話とこころの自立
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