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03 02
2012

書評 ビジネス書

ジャーナリズムの本?―『新版 編集者の学校』 元木 昌彦

4062812622新版 編集者の学校 カリスマたちが初めて明かす「極意」 (講談社プラスアルファ文庫)
元木 昌彦
講談社 2009-02-20

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 ん、あれ? 編集の仕事ってなんだろうと思うほど、ノンフィクション作家のインタビューとか取材法が語られていて、それはそれですごい職人ワザが聞けるのだが、なんの本だったのかという感がいなめない。

 ジャーナリズムとかノンフィクション作家の指南本といったほうが近く、わたしは本はどうつくられるのかとかどう企画されるのかとか、つくられる過程とか知りたかったのだが、思い切りズレていった感がある。

 わたしはシンクタンクでワープロ雑誌の編集をバイトでしたことがあるが、テレアポばかりでなんの仕事やってるんだろうとやめた。記事はライターの外注だったし。新聞社のぼうや(ゲラの運び屋バイト)もしたことがあるが、編集部の人は定規をもって見出しとか文章が収まるかとかの作業をしていただけだった。編集ってなんの仕事だろうという思いがぬぐえなかった。

 編集の仕事は八割が企画を考えることだといわれているから、企画を考えることがおもな仕事なのだろう。

 幻冬舎の見城徹なんて四六時中、作家やアーティストとつきあっていないと本を出してもらえる人間関係がつくれないと、坂本龍一とか尾崎豊とか友だちづきあいみたいにベッタリしていたそうだ。編集の仕事って人のつながりをつくることが仕事なの?

 自分の感動したものをとにかく見ろ、読めという情熱をぶつけることが編集の仕事だという。広報マン的な仕事なのである。

 この本は三人ほどの編集者に話を聞いていて、あとの人たちはほとんどノンフィクション作家やジャーナリストの取材法やインタビュー法になっている。編集の話と違うな~と思いながらも、この人たちの肌感覚で語られる取材法は達人というか、超人だという域に達していて、思わずひきこまれるのだけど。

 ジャーナリズムは「のぞき」と「泣かせ」だと喝破しているのは、小林道雄というノンフィクション作家。わたしはあまりノンフィクションは読まないので作家名をよく知らないのだが、この本の作家はだいたいは名前を聞いた子がある人たち。ジャーナリズムの本質はこのようなゲスなもので、嵐山光三郎も正義の味方など思うな、興味の味方だと思えといっている。

 小林道雄という人は少年の凶悪事件は、目立つことを価値にしてしまったメディアの功罪にあるといっている。まったく同感である。

 吉岡忍の達観もすごいなと思う。見つけたいのはその人の思考のパターンだといい、リズムやクセで人間はものを考えており、その人なりの思考のパターンを見つけるのが取材だと考えている。事件の当事者も話したがっているのだが、口を開いてくれるまで信頼をつくるということだ。

 短い記事を書くときも、長い本を書くときも、明らかにすることはひとつだ。このひとつをつかめないとあれもこれもの文章になってしまうのでしょうね。

「自分とは関係ないや、と思って取材に行く人が多いですね。悪いやつは悪いやつ、それはおれではない、というのが、すぐに顔や態度に表れる。…おまえ、もう社か自宅に帰れよ、といいたくなる。おまえに関係ないことをいくら取材したって、そんなもの、ガラクタだぜ、とね」

 編集の本と思っていたら、ジャーナリストの卓越した肌感覚や皮膚感覚のリアルな人との関係のつくり方が聞ける本である。達人のからだで極めた言葉はやはり違う。

 でもこれって編集の仕事なんだろうか。人とのなま身の関係性の重要性をずっと語られていた本だという気がする。人間の精神とか思いとかをかたちにしてゆく仕事だからなんでしょうね。


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