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10 15
2005

書評 労働・フリーター・ニート

『まなざしに管理される職場』 大野 正和


4787232495まなざしに管理される職場
大野 正和
青弓社 2005-10

by G-Tools

 日本の職場は仲間に迷惑や負担をかけないために働くという指摘はまったくその通りだと思う。それも金銭的な報酬や労使関係より、もっと大事なことになっているのである。

 だから自主的な残業は長くなるし、有給のとりにくい環境が生まれるし、なんのために働くのかといったことや労使関係があいまいになったりする。仲間の評価のために働くのは一方ではやりがいを生むが、迷惑をかけたくないという過労死や働きすぎという負の側面も生み出すのである。

 今、アメリカでも日本的経営のチーム制をとりいれたおかげで日本のような働きすぎの兆候があらわれているという。欧米は従来、仲間のチェック機能がまったくなく、上司からの命令による「働かせる/抵抗する」という一方的な関係だけであったが、だからこそ労使対立が際立ったりしたのだが、その理由がこの対比によってよくわかるというものである。

 仲間の評価を恐れるために働きすぎをやめられない日本人という姿はひざを叩きたくなる指摘なのであるが、残念ながらこの本はその先の一歩も踏み出していない。私はだからどのような問題や影響がここからあらわれており、そしてそれを肯定するのか否定するのか、もし否定するのならどのような解決策を見いだすのか、といったことをいちばん知りたかったのである。ちょっとそこが腹立たしい本であった。

 仲間の罪悪感のために働くといったあり方から、契約や金銭報酬のために働くという方向にスライドしないと、つまりその力学の客観性を養わないことには、いつまでたっても日本人は盲目の労働主義から抜け出せなくなるだろう。日本軍の失敗もこのような集団力学から生まれたものだと見なせると思うし。日本の職場は盲目の職場集団になりやすいのである。


 ▼著者本人からメールをいただきました。たしかに「ではどうするか」に触れていないとおっしゃられておりました。欧米の限定された契約観の実例やありかたを学ぶべきなのかなあと思います。仲間の迷惑のために働く日本の職場という指摘は、日本企業の本質をつかんでいると思うので、ぜひこれからもこのありようを分析していってほしいと思います。

 HP 「<私>の研究と過労死」
 http://www.geocities.jp/japankaroshi/
 E-mail ohm40@nifty.com

 過労死・過労自殺の心理と職場
 


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