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02 22
2012

書評 ビジネス書

意外にいい本―『トヨタ流「改善力」の鍛え方』 若松 義人

4415070574トヨタ流「改善力」の鍛え方―強者のノウハウはあらゆる場で必ず強い! (成美文庫)
若松 義人
成美堂出版 2004-03

by G-Tools


 意外にいい本だった。

 ただトヨタとタイトルがつくのはいやだけど。大企業だからとか売れているからとかで礼賛されるとしたらなんの説明もしていないし。上昇気流に乗っていたからとか、市場拡大期をうまくつかめていたから大きくなっただけだったとしたら、トヨタ式の方法がよかったとはなにもいえない。大企業によりかかった成功礼賛本はそれがコケたとき、すぐに馬脚をあらわす。

 改善の本であるが、あまり改善の話ばかりだったとは思えない本であったように思う。かんたんな抜き書きだけになるが、興味をもたれた方は読んだほうが文脈からのほうがよくわかる。

 「規則だから」とお客様の不便に目をつむる。「前例がないから」と社員の不便や働きにくさに目をつむる。よくあることだが、「慣れてください」とか「我慢してください」では解決にならない。不便を便利に変えてこそ仕事だといえる。

 サービスというのはある水準に達したとしてもそれがすぐに当たり前になり、つぎつぎともっと進んだサービスを求められる。逃げ水のようなものである。いまは満足のいくレベルだとしても、少しでも改善を怠るとあっという間にとり残されてしまう。

 「忙しくて人が足りないくらいだ」と思い込んでいる。「いまやっていることが悪いんだ、ムダがあるんだ、まだ改善の余地があるんだ」と考える。

 スタッフの仕事は専門化する傾向がある。「あの人でないとわからない」となってしまう。仕事の標準化が進んでいないだけで、たいていのものは初心者でもできる、そうすることが必要だ。

 病院や銀行では長く待っても「混んでいるから仕方がない」ですませてしまっている。「なぜ混んでいるか」という真因を追究して、仕事のやり方を見直すことが必要だ。

 ノウハウは自分で苦労して身につけるもの。安易な他力依存はみずからの成長をさまたげる。

 テレビは視聴率のデータの後追い主義だから、顔ぶれ、ネタ、タイプが同じものになる。パターン化し、多様性から程遠くなる。過去のデータは過去の成功をくりかえさせてしまう。成功法を改善するのが成功者だ。

 決定は新たな決定の叩き台にすぎない。

 相手が悪いでは改善はできない。自分の売りたいもの、都合にいいものを売ったり、押しつけたりしていないか。技術者は技術に絶対の自信をもっていたり、顧客のニーズは全部わかっていると思い込んでいる。つくり手や会社の都合で仕事をするな。

 身のまわりのサービスを当たり前と考えるな。すこしでも不便を感じたなら、「なぜ」と問いかける。

 小売店は己の実態をつかんでいない。客はどんな人か、商品の動きは、一日どれだけ売れ、動いているか、初歩的なことを数字でつかんでいない。モノサシがあるから判断や評価が可能になるし、比較もできる。主観で仕事するな。

 恐い監督や演出家がいるという。でもある人にはやさしく、ありがたい人にうつる。「怖いという人は役者としての準備が足りない人とか、本当のことをいわれるのが怖いのでは」。耳の痛いことでも謙虚にうけとめれば進歩と発展がある。自分が最高と思うと進歩は止まる。

 問題点の指摘だけに終わると恨みを買ってしまう。どうすれば改善できるかいっしょに考える。

 壁にぶち当たっていつも引き返していてはいつまでたっても壁は突破できない。あきらめない人が最も強い人。よくやったとかおしかったと感想をのべるだけでは成長がない。いったん壁を越えてしまえば、自信となり、さらなる成長へとつながる。

 失敗は責任を問うより、二度と同じ失敗をくりかえさないための原因追究がなによりも大事である。さもないと同じ失敗をなんどもくりかえし、みんなが失敗を極度に恐れるだけになってしまう。隠すようになれば最悪である。

 わたしはむかしじっさいにはなんの役にも立たない思想や社会学ばかり好んで読んでいた。いまはその空虚さを感じるようになってきたので、結果や現実に活かせる方法や手段がものすごくほしくなってきた。知識は知識を知ることの楽しみももちろんあるが、現実に落とし込めない知識ばかり蓄積してもあまりにも空しいと感じるようになってきた。

 ふつうの人はその逆というか、ハウトゥやノウハウばかり求めて原理や理由をつかめないので、自分のものにすることや、応用や用途に失敗してしまうと思うのだけど。



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