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02 16
2012

社会批評

ミュージシャンはなぜ早死にしてしまうのか ―知られざる孤独と苦悩

 前回も「成功した才能にはなぜ死神がつきまとうのか」について考えてみたが、こんかいももうすこし幅広く考えてみたい。なぜミュージシャンは若死にしてしまうのか。

 ジム・モリソン、享年27歳。ジミ・ヘンドリックス、享年27歳。ジャニス・ジョップリン、享年27歳。ホイットニー・ヒューストン、享年48歳。マイケル・ジャクソン、享年50歳。カレン・カーペンター、享年32歳。尾崎豊、享年26歳。坂井泉水、享年40歳。エルヴィス・プレスリー、享年42歳。



▲ジム・モリソン 享年27歳


▲ジミ・ヘンドリックス 享年27歳


▲ジャニス・ジョップリン 享年27歳

 ホイットニー・ヒューストンは48歳、マイケル・ジャクソンは50歳で亡くなった。ふたりの共通点は80年代に最高の成功を収め、黒人であることである。

 ともにふたりは華々しい活躍のあとにスキャンダルにまみれた。とくにマイケル・ジャクソンは性的虐待疑惑、整形、奇行、豪華な邸宅とゴシップにまみれた。悪意と疑惑の的にされた。成功の頂点のあとに急激な転落が待っていた。

 成功への嫉妬・憎悪がそのような像を必要としたのだろうか。売り上げがビートルズを越えたことに快く思わない白人の人たちもいる。人種差別が表向きは押さえられたとしてもそのような感情がすぐなくなるとは思われない。成功しすぎた嫉妬と敵意がかれにいっせいに向かったのだろうか。ゴシップにまみれた像はそのような大衆感情が生み出したとも考えられる。

 ホイットニーは自身の世界的名声にくらべて格下夫の葛藤や暴力、また人気やヒットにめぐまれない不遇ということもあったのだろう。



▲ホイットニー・ヒューストン 享年48歳


▲マイケル・ジャクソン 享年50歳

 ドラッグに溺れて亡くなるということもじつに多い。成功して名声をえた人たちがどうして破滅や早死に向かわせるようなドラッグを好むのだろう。ふつうなら成功も名声もえていない人のほうが自堕落なドラッグに染まりそうなのだが、そうではない。

 歌うということ、ショービジネスというものに強烈に不安や恐れから逃避したいと思わせるなにかがあるというしかない。周囲からの期待、もっと完璧な演奏、ヒット、最高の曲、そして売れなくなったり、落ち目になることの恐怖、収入がとだえることの恐れ。そういったものがないまぜになってドラッグへの逃避に手を染めやすくなるのだろうか。

 周囲のものからは成功や評価をえているからそんなことは思いもしないのだが、ある調査では落ち目になったときより売れているときのほうが危険は高まるといっていた。評価や名声があるからこそ、そのプレッシャーや重圧は並大抵ではないということだろうか。



▲カレン・カーペンター 享年32歳

 成功や名声はそうなれない大勢の人の嫉妬や悪意を生んでしまうということもあるだろう。敵意や憎悪を一身に背負ってしまうということもあるかもしれない。人の好意や賞賛の声ばかりとはかぎらない。賞賛が大きければそれだけ敵意や憎悪を向けられる可能性もある。その面につぶされてしまう人もいるだろう。人から嫌われるためにショービジネスに出る人はいないだろうから、嫌われたり憎まれたりすることはずいぶんキツイことだろう。

 ひとつ指摘すると音楽は情動を刺激するもので、感情の高まりや埋没を生みやすいともいえるかもしれない。感情に支配されやすくなって、コントロールできなくなるということも考えられる。あるいは刺激や興奮が高まるのでそれを抑えるためにドラッグを使用しやすくなるのかもしれない。

 尾崎豊なんて自分の悩みや葛藤に向きあう曲を多くつくった。悩みに向き合いすぎて、その感情を増大させたのかもしれない。悩みと向き合うことは火に薪をくべるようなところがある。太宰治もそうだろう。



▲尾崎豊 享年26歳

 才能や名声にめぐまれている人ほど、自分の無価値さや無意味さに悩むということもあると思う。人から憧れられたり、賞賛される人がどうしてと思うだろうが、そのような賞賛をえないと自分が無価値で生きている意味がないと思うからこそ、成功への道を強くのぞむのである。

 ふつうや凡人で満足できる人は努力も高い理想もそうもたない。ふつうであることやたいして業績や功績をあげていなくてもそれで満足できるからだ。成功や名声を強く望む人というのはそのふつうであるとか凡人、どこにでもいるひとりであることに耐えられない。名声や評価をえないとなんの価値もないと思うからだ。

 じつは名声ある人というのはそうでないとなんの価値もないと思う人であるかもしれないのだ。成功や才能の渇望というのはその裏返しかもしれないである。

 そうであると名声をうしなうことの恐れ、評価をえられなくなったあとの意気消沈や落ち込みというのも人より強くなるだろう。ふたたび自分の価値のなさや意味のなさに向き合わなければならないのである。評価や賞賛の渇望というのは、愛されない自分への恐れがエネルギーになっているかもしれないのである。

 名声や賞賛をのぞむ人というのはなにも才能や技能がないと価値がないと思う人なのである。条件つき、制約つきで愛される人なので、なにもないちっぽけな自分を許せない。人より自分が自分自身であることの恐れを強くもつ人であると考えることもできる。



▲坂井泉水 享年40歳

 われわれは感動や感銘をあたえてくれたミュージシャンを賞賛し、渇望する。賞賛や名声をえていたトップスターたちが早世や若死にすることの理解はとうてい想像のおよぶものではない。

 成功者や有名人はもうわれわれ一般人のように悩んだり、不安になったりしないと思われて孤独になるのもあるだろう。もう「われわれとは違う人、超越した人」になる。もう理解されたり、同情されない。その孤独のスキマにドラッグが入ってくるというのもあるのだろう。

 われわれはかれらを商品やモノのようにあつかうし、飽きればすぐに捨てたり見向きもしなくなるし、低評価や批判も平気でする。ショーマンたちは生身の人間ならたえられないような商品あつかいや中傷もされることもあるだろう。ほかの人の嫉妬や憎悪、敵意がかれらに向けられるかもしれない。マスコミのスキャンダルやゴシップはその増幅装置である。

 ある意味、かれらはそのようなわれわれの餌食であり、格好のターゲットにもなりうる。名声や賞賛の影にはかならず批判や悪意、敵意もひそむだろう。そういったおおぜいの人たちのむきだしの悪感情をうけて、身を崩す人もいるだろう。有名や名声をえることはそういった大衆の集中砲火をひとりで浴びることである。

 早死にする要因をまとめてみたらつぎのようになる。

 1) 大衆からの嫉妬・敵意
 2) ドラッグ
 3) 期待や完璧へのプレッシャー
 4) 感情や悩みの執着
 5) 才能がないと価値がないという恐れ
 6) 一般人に同情や理解されない成功者の孤独
 7) 批判や中傷の商品扱い

 ミュージシャンや有名人が早世したり、死を早めないために、その原因追究や解決策が探られてほしいものである。「有名人早死に症候群」とでも名づけて、その治療と療法が開発されるべきだと思う。感動を与えてくれた人たちが老熟の時期をむかえずに死期を早めるのはあまりにも悲しい。



▼リンク
 夭折した著名人一覧 - Wikipedia
 ロックミュージシャンの死 享年、死因一覧。
 ロックミュージシャン、早死にする傾向=英研究| エンタテインメント| Reuters

▼名誉・名声について
4087734404もうひとつの愛を哲学する ―ステイタスの不安―
アラン・ド・ボトン 安引 宏
集英社 2005-11-04

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4102033017幸福について―人生論 (新潮文庫)
ショーペンハウアー 橋本 文夫
新潮社 1958-10

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4061597493マルクス・アウレリウス「自省録」 (講談社学術文庫)
M. アウレリウス 鈴木 照雄
講談社 2006-02-11

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447873268X成功して不幸になる人びと ビジネスの成功が、なぜ人生の失敗をよぶのか
ジョン・オニール 神田 昌典
ダイヤモンド社 2003-12-05

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Comment

長生き至上主義に対するアンチテーゼを体現してるのかもしれない。
武士道みたいですけど、ぱっと咲きさっと散ることの美しさみたいなね。
長々生きたって伝説の人にはなりえない。
ほんとに「太く短く」のお手本みたいです。
命の時間だけが幸せの条件ってことでもないのかもしれませんね。
早死にする天才たちはそれだけ濃い人生を駆け抜けたのでしょう。だからこそ死後も生き続けるのでしょう。
ブルースリーやジョンレノンを長生きさせるなんて誰にも不可能だし、ともすれば品下がりになる可能性も考えちゃいます。
三島が今現在生きていたら結構ウザくって、みんなあまり相手にしてないのかも。


卒業

存命ですが、氷室京介は引退します。
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