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12 19
2011

書評 ビジネス書

『「WHY型思考」が仕事を変える』 細谷 功

456979078X「WHY型思考」が仕事を変える (PHPビジネス新書)
細谷 功
PHP研究所 2010-08-19

by G-Tools


 この「WHY型思考」というのはまさしくわたしが知識を漁る際につかってきた謎かけ法で、この問いかけがあるために知識はつぎつぎとドアを開いてきたといえるだろう。それをコンサルタントがどうまとめているかを見たいと思った。

 この思考のあり方をまず問うのはコンサルタントではなくて、知識人や教育学者ではないかと思うが。「なぜ?」と問うことにより広がる知識の世界、教育でなぜを問わずに決まった答えを覚えさせる学校。多くの問題提議をかかげるテーマだと思うのだが、もはや社会問題といえるべきテーマが仕事の応用だけの技術論に閉じ込められるなんて。。

 著者の細谷功は「WHY型思考」の対比に「WHAT型思考」というものをもちだしているが、わたしにはいまいちぴんとこないネーミングだった。「そのままくん」や「操り人形」、「マニュアル人間」とか、いわれていること、決められていることをそのままくりかえす思考停止のことをさすのはわかるが、それは「WHAT」ではなく、「考えないこと」、「自分の頭で考えないこと」で充分だろう。

 要するには決まったこと、きのうまでにできあがったことをそのままくりかえすことだ。学校では決まった答えを教えられ、社会に出てもきのうまでの決まりや規則を遵守し、なにひとつ違ったこと、ほかのことをなさない。ルーティンやマニュアルが決まった社会や企業では必要とされてきたのだが、製造業のキャッチアップが終わった日本にとってもはや危険な思考法だろう。

 しかしその日本で「なぜこうなっているのか?」「なぜこういうしくみになっているのか?」と問われることはほとんどない。学校にしてもきのうまでに発見された「真実」と「答え」を教えるのみ。きのまでの知識というのは過去の範例や既成の社会をくりかえすさいには適しているのだが、新しいもの違ったものが求められる時代においてもはや危険な過去の遺物だろう。それなのに新しい世界や変化を切り開く「なぜ?」という問いが発せられたり、学校で推奨されることはないのである。

 「自分で考えろ」とか「考える頭をつくる」という掛け声はよく発せられる。しかしそのあいまいな言葉ではなくて、「WHY型思考」と絞り込んだことにこの本の慧眼は光るのだろう。「なぜ?」と問うことは表面にあらわれたことを見るだけではなく、その本質や理由、背景を問うことだ。学校のクイズ形式の勉強では表面の問いと答えの閉ざされた世界に閉じ込められ、そしてきのうまでの「真実」と「慣例」に従って同じことをくりかえすだけだ。

 社会学なんてものは「常識」や「当たり前」、「自明性」を疑ってみる学問だ。学問なんてものは既成の知識やあり方について「なぜ?」という問いからはじまり、その問いなしにははじまらないといっていい。でも学校というのはその「なぜ?」ではなくて、なぜを問うた答えを覚えさせるだけである。つまり問い方の思考法を身につけさせるのではなくて、答えを与えてしまう。自分で考える頭を養えないのはとうぜんである。

 ちなみにわたしは知識や学問にかんして「なぜ?」を問いつづけてきたのだが、仕事についてもこの思考法を応用してみるべきなんて思ってもみなかった。「なぜ」を問うことによって仕事の改善や向上がおこなわれるのですね。ルーティンの仕事だから考える隙間なんかないとバカにしてきたせいだろうか。

 WHY型思考というのは教えることができなくて本人が自発的にそうならないと絶対に育たないといわれている。わたしのばあいも疑問を感じてそれを文章に書いてゆくうちに関連書を読みあさり。。といった循環をしぜんにかたちづくっていった。自分の疑問や「なぜ」を追いかけてゆくうちにしぜんに身につくものだろう。

 バーナード・ショーいわく「人に何かを教えても、その人は何も学ばないだろう」

 「WHY型思考」というのは答えのない世界である。学校で教育をうけた人はこの世に答えは絶対あると教え込まれ、社会に出ても答えはだれかが知っている、どこかにだれか知っているエライ人がいるはずだと思い込んでいるのだろうが、「WHY型思考」の人間にはこの世界にはなにひとつ「答えなんてない」と思っている。「なぜ?」の問いには無数の解釈や仮説があり、それが絶対だといえる根拠や証拠も確実ではない世界にずっととどまることである。

 もしかしてあなたはこの世界に正しい「答え」や「正解」があるとまさか思っていませんよね。


▼自分で考える本は無数に出ているのですが。
すぐに実行できるのに誰も教えてくれなかった考える力をつくるノート (KEIO MCC Intelligence Series)考える力を伸ばす教科書―ダイアローグと論理で思考力を高める「考える力」はこうしてつけるすごい「考える力」! (知的生きかた文庫)考える技術

自分のアタマで考えよう自分で考えることができる人、できない人自分の頭で考える考え方のつくり方―自分のアタマで考えるメソッドポール・スローンの思考力を鍛える30の習慣

究極の思考術―あなたの論理思考力がアップする「二項対立」の視点15「思考」のすごい力Think!別冊NO.1  一流の思考力 (シンク!別冊 No. 1)

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