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2011

書評 ビジネス書

『すぐに稼げる文章術』 日垣 隆

4344980131すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)
日垣 隆
幻冬舎 2006-11-30

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 わたしは自分のためにものを書いてきたから、人に読まれるもの、人の読みたいものを想定することが苦手である。文章術は読者がどういうものを読みたいかを想定する方法を教えてくれればいいのだが、この『稼げる文章術』はさいしょから読者に読まれることを発想するわけだから、その手に近い本かなと思って読む。

 趣味の創作というのはだいたいは自分のやりたいことからはじめるのであって、読者がどういうものを読みたいかを考えながら書かないのではないかと思う。創作者ってなかなか読書の読みたいものを想定する想像力をはぐくむのが苦手なのではないか。読者の読みたいもののツボを押さえられる人が世に出てゆくのだと思うが。

 以下、この本に書かれていること。

「書評とは①その本を買いに走るように行動提起する文章 ②レビューそのものがエッセイとしておもしろく読める、そのどちらかでなければいけない。「この本は買うな」と言いたいのであれば、わざわざレビューなど書くなということです」。

 わたしは読むに値しないと思った本も書評に書く。書評はそういう本をより分ける導きでもあるべきだと思っている。商業印刷物の書評は売るための書評をのせるものかもしれないが、ブログの書評は売るためだけに書かれるのではない。

 おもしろい文章を書くためにいいところ、悪いところを言語化してみるといっている。そういう理解がないと自分の文章が悪文と同じわだちをふんでしまうといっているのだが、書評でも同じだろう。悪いことを書くということはその失敗の理由を理解して、ほかの本でも失敗しない理解をかたちづくることでもあると思う。

「文章がおもしろいということは、ひとことで言えば意外性があるということです。意外性をもった書き出しと文章運びがなされていることがおもしろい文章の実態なのです」

 これを読んでまっ先に村上春樹の文章を思い出した。比喩の意外性や哲学的な文章の挿入で、村上春樹の文章は意外性に満ちている。タイトルでもありきたりであたりまえのことをいっていても人はなんの興味も示さないもので、意外性でひきつけるものがなければならない。意外性を感じる読者を自分の頭の中に住まわせておきたいものだ。

「本来相手には必要ないかもしれないものを、読者の時間を奪って読んでもらうわけですからね。場合によっては文章に対してお金を払って読んでもらうのですから、それなりの工夫が必要です」。心したい指摘である。

 文章で稼げるようになるにはその人しか書けない、喉から手が出るほどほしい素材や内容が必要である。ネットでタダで優秀な文章を書く人が増えている現在、文章で稼げるようになるのは平々凡々なものしか書けないようではダメだろう。

 文章を書くというのはそれまでいわれてきたことに対して、不満や違和感があるからこそ文章を書く。考えるということは、反論し、否定すること。深い指摘である。日常に満足していて、ほかの人と同じことをやっていたらいいと思う人に文章や表現の意欲はわいてこないものだ。

「インパクトのある文章の正体とは、読んだ人の約3割から反発を招く文章」。反論や反発を恐れているようでは読まれる文章は書けない。ブログの炎上はかなり感情的な反発を多くの人に感じさせるものだから勘違いしてはならない。8割の人に感じさせてはならないし、ましてや炎上マーケティングなどの勘違いもよしたほうがいい。

「たとえ明確でも、ありふれた主張であってはおもしろくありません。斬新さが必要なのです」。

「文章をリピーターにしていくためには、文章に中毒性を織りこむことは欠かせません。…文章の中に覚醒剤のようなものを入れこむことが大切だと思います」。

 美術大学や芸術大学があっても卒業しても学校の先生になるくらいしか道がない。作品を売って、美術で食ってゆく道をこれらの大学はまったく教えていない。これはほかの大学や学校でもそうで、学問や知識は教えても食ってゆく方法や利用法というものは一分たりとも教えていない。欠如したビジネス的な発想や方法が求められているのではないだろうか。

 日垣隆はtwitter上で見かけたことがあるが、ひどい人格障害者ではないかと思えるような誹謗中傷を吐いていたような覚えがあってうんざりしたのだが、この本ではその印象はうすれてふつうに論理的に読めた。知識というのは人格上の向上や陶冶もふくめてほしいものだが、この人のばあいは論争に勝つとか、勝利にこだわる気質をもっているのだろう。

 日垣隆の『売文生活』という作家の収入をぶっちゃけにさらした本は興味深かった。『ラクをしないと成果は出ない』という本はビジネス書の真似をしてみまたしが、失敗しましたという本に思えた。日垣隆という人はジャーナリズムがおもな活躍の場所かしらないが、ビジネス書的なものにも色気を出している。思想的でも哲学的でもない立ち位置が中途半端に感じる。
 

こう考えれば、うまくいく。 ラクをしないと成果は出ない (だいわ文庫) 2週間で小説を書く! (幻冬舎新書) 売文生活 (ちくま新書) 知的ストレッチ入門―すいすい読める書けるアイデアが出る (新潮文庫)
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