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2011

書評 ビジネス書

『2012年、世界恐慌』 相沢 幸悦 中沢 浩志

40227333732012年、世界恐慌 ソブリン・リスクの先を読む (朝日新書)
相沢 幸悦 中沢 浩志
朝日新聞出版 2010-05-13

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 すこし納まった観があるが、ギリシャに端を発したユーロ危機のおさらいのつもりで読む。

 2010年5月発売の本。ギリシャやユーロの危機は前々からくすぶりつづけていた。まあ、日本のバブル崩壊と同じで押さえても押さえてもマグマは噴出してくる。どうして日本と同じわだちを世界は踏んでしまったのだろう、日本という最悪の見本があったのに。

 アメリカ、ヨーロッパ、日本の危機の三章立てで、それぞれの危機のありようがわかりやすくなっている。ニュースや新聞は細切れで断片的に情報が入ってくるだけなので、こういう本を読むとつながった物語としていっそう理解できるようになる。本を読まないと理解さえできないと思える。

 ほとんど本書からの抜書きになるが、こういう内容にコメントをつけるのはむづかしい。

 21世紀に入ってからアメリカだけではなくヨーロッパでもすさまじい住宅バブルにわいたそうである。イギリス、スペイン、アイルランド、イタリア。このバブルにはユーロ導入と大きく関係があった。ユーロ導入のため財政赤字の削減につとめたらインフレが沈静化し、長期金利がかなり低下した。ローン金利低下のため住宅バブルに火がついたとのことである。

 ユーロ危機というのは三つの危機が重なっていて、この住宅バブル崩壊とアメリカに端を発したリーマンショックによる損失の増大、そして東欧諸国に膨大な金融投資をおこなってきたことによる。オーストリアなどはGDPの七割、イタリアも多くの金融投資をおこなっており、この危機がスペインやフランス、ドイツの危機を誘発させる恐れがある。

 リーマンショックで東欧のハンガリー、ラトビア、ルーマニアはIMFの支援を受けている。ポーランドも同様の措置を受けている。このマネー爆弾がヨーロッパを襲う懸念がずっとある。

 ギリシャは長く社会主義政権がつづいたため、福祉水準の引き上げや公務員の厚遇などバラマキ政策をおこないつづけた。財政赤字が雪だるまが増えたところにリーマンショックである。ギリシャはユーロ導入のさいウソの数字を出してそれがバレてマーケットに叩かれたという経験がある。財政が健全ではないのはわかっていたのだが、ギリシャはイスラムの前哨基地として政治的にユーロ入りを許されたという話がある。

 スペインは90年代後半からEU平均を上回る経済成長をつづけたが、おもにそれは住宅バブルのせいだった。07半ばにバブルが崩壊、リーマンショックがそれに拍車をかけた。

 日本の債務残高は10年度末で863兆円、GDP比で180%に達する。国家破綻の瀬戸際に立たされたギリシャですら110%にすぎない。国債の90%以上が国内で消化されるから大丈夫だという話だが、家計の純資産額の1063兆円に迫っており、あと200兆円しか国債を発行できないといわれている。

 ユーロ危機には投機筋の暗躍がある。国債がデフォルトすれば損失金額が保証されるというCDSがある。投機筋は財政危機の国に空売りを仕掛け、その利益とCDSの二重の金儲けができる。

「CDS契約を購入するのは、他人の命を対象とする生命保険に入り、その生殺与奪の権をにぎるようなものだ。だれもそのような権利をにぎることがないようにするのが、規制当局のつとめである」といったジョージ・ソロスは1992年の欧州通貨危機や97年のアジア通貨危機を仕掛けた張本人のひとりである。

 つぶせば儲かるという金融商品が存在すること自体がおかしいのである。CDSが世界大恐慌の引き金を引く可能性は大いにある。

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▲おいおい、日本は大丈夫なのかい。危機におちいった国よりはるかに。(「欧州債務危機問題の規模に関するまとめ」から)

 こんかいの危機というのは金融機関の危機をとびこえて国家財政の危機である。最後の砦の危機である。20世紀というのは国家が福祉や経済危機の面倒を一手にひきうけてきて、国民の危機をなんでもかんでもかぶってきたのだが、ここで最後の砦も守られないといった観を呈してきたようである。国家が国民を守るという思想や政策に経済が挑戦を浴びせかけているといったらいいか。

 ヨーロッパがどうなるか、それ以上にヨーロッパに暮らす人たちの暮らしや生活はどうなってゆくのか、日本のお手本や先進国の鑑となってきた国々がどうなるのか、ひとつの時代の曲がり角に立ち会っているのだろう。ヨーロッパの没落の第二幕がはじまったのだろうか。わたしはそこに暮らす人たちの生活や仕事はどうなっているのか、思想や考え方は変わってゆくことになるのかを知りたいと思うが。


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