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11 03
2011

レイライン・死と再生

古代、性交が太陽や宇宙を生み出すと考えられていた

 性交が太陽や宇宙を生み出すというのはとっぴな考え方に思えるが、人類に多くの恩恵をあたえてきた農業では植物の受精によって穀物がみのるわけだから、その考えを生命でもない太陽や大地に敷衍するまでの距離はそうないだろう。

 植物や生命は秋に衰え、多くは冬に死滅する。永遠にこの状態がつづき、ふたたび植物の繁栄はやってこないかもしれない。そういう恐れは人間が繁殖の起因である性交をおこなうことによって盛んに繁栄がよみがえる祈りに転嫁してもおかしくないだろう。植物の繁栄や季節の再生は人間の性交によって刺激されなければならないものだった。大地は性によって象徴されるものとなり、女性の胎内や男性の男根の象徴が地上にメルクマールされるのである。

 太陽も宇宙も神々の性交によって生まれるものとなった。太陽は夜に死に、朝に毎日よみがえる。あるいは冬に一年の太陽は死に、春にふたたび新しい太陽は生まれ変わるものだった。それが神々の性交によるものなら、人間はこの再生と繁栄を願うためにみずからも性交の儀式をおこなわなければならない。その行為はかつては王の権力のしるしであったか、もしくは王が神の証拠であった。

 大地はこの地上のあらゆる生命を生み出す母なる母胎であった。だから洞窟や裂け目などに大地の母なる母胎が求められ、そこは聖なる空間、豊穣や繁栄をもたらす生命の源となったのである。

 ミルチャ・エリアーデの『大地・農耕・女性』には農耕と性の同一視の多くの事例がとりあげられている。

4624100085大地・農耕・女性―比較宗教類型論
M.エリアーデ 堀 一郎
未来社 1968-01

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 畑は耕された女性であり、うねは陰門であり、種子は精液であり、少女はその体内に畑をもち、鋤は男性生殖器であり、耕作は生殖行為である。畑で若い夫婦が供寝したり、裸の女が種子をまく習慣があったり、農婦が種をまく畑に乳をふりかけたりした。人間の性と農耕は同一視されていたのである。

 人は生まれる前、岩のあいだ、岩などの裂け目、洞窟などに母の胎内に挿入されるまで成長していたと考えられていた。水の動物から(魚、鮭、鰐、白鳥)からもたらされるとも考えられていた。赤ちゃんはコウノトリからもたらされるという子どもに聞かされる話はその名残りかもしれない。ヨーロッパでもこんにちでも赤ん坊は淵から、泉から、川から、木からやってくると信じている人もいるそうだ。子どものころに聞かされた「おまえは橋の下から拾ってきた」という話もこんなところに起源があるのかもしれない。

 この性交論的コスモロジー(宇宙観)は近代工業社会によって否定され、貞操や終身愛を誓うという結婚観に変わったが、この世界には季節のふしめや祭り、儀式などにさまざまに顔を出し、日本の山岳や農村部でも信仰や祈りなどのかたちで残されている。

 まったく死滅したわけではなく、けれどもこの世界観の根本である性交が宇宙をつくりだすという汎性的世界観の理解が不足したためにかつての信仰や世界観の意味が見えなくなってきている。あらためて性交が宇宙を生み出したという世界観が理解されなければ古代や信仰の意味は見えてこないと思うのである。

 わたしは山登りをしているうちに山間部や農村に岩や木、洞窟、洞穴、山などを祭られているのをみて、どのような信仰があったのかと興味をもった。理解をすすめたのは神社や山が太陽の夏至や冬至上に結ばれているというレイラインを知ってからであり、これを探っているうちに古代の性的世界観の存在を知るようになった。

 エリアーデの比較宗教学もじつに日本の信仰を説くのに最適な考え方を提示してくれて驚いている。古代の世界観はかつて地球の多くの人類に信じられていた普遍的な世界観ではないのかと思うようになった。


▼エリアーデの著作
エリアーデ著作集 第2巻エリアーデ著作集 第1巻世界宗教史〈1〉石器時代からエレウシスの密儀まで(上) (ちくま学芸文庫)シャーマニズム 上 (ちくま学芸文庫)永遠回帰の神話 - 祖型と反復

聖と俗―宗教的なるものの本質について (叢書・ウニベルシタス)世界宗教史 全8巻セット (ちくま学芸文庫 エ)エリアーデ 自身を語る 迷宮の試煉エリアーデ・オカルト事典エリアーデ世界宗教事典

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