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10 01
2011

書評 社会学

『3種類の日本教』 島田 裕巳

40627249793種類の日本教 日本人が気づいていない自分の属性 (講談社プラスアルファ新書)
島田 裕巳
講談社 2008-04-18

by G-Tools


 就職活動にとまどったり、ニートになったり、職業選択がしっくりこないという若者のためのひとつの解答を与える本なのだろう。親の職業環境によって自分の属性、選択すべき道が見えてくるということである。

 3種類の属性というのはサラリーマン系、自営業系、公務員系というもので、それぞれは価値観や行動様式、常識といったものが違う。もし自分がどこに属するか知らないと選択のまちがいをおこしてしまうかもしれない。それぞれの目標や価値基準というものはだいぶ異なるのである。

 もっとも現在ではサラリーマン系が七割、自営業系が二割、公務員系が一割といわれているから、ほとんどサラリーマン系で占められているのであまりこのカテゴリ分けは有効ではないとも思われるが。

「自分をさらけ出せる人間は、組織と一体化することが容易な人間である。逆に、自己分析やエントリーシートを書くことに抵抗を感じる人間は、組織との一体化が難しく、それを望まない人間である」

 自分がどの属性に属するかのリトマス紙になるだろうが、ただこれは属性というより、考え方や価値観の問題のほうが多い気がするが。

 サラリーマン系は集団の順応や融合をいちばんにめざし、安定的な将来設計のもとで生きるが、自営業系は将来はどうなるかわからないうえ、投資や借金は事業をする上で欠かせないのでギャンブル的な傾向や価値観をかたちづくりやすいといわれる。また恋人選びでもサラリーマン系は希薄な人間関係を好むが、自営業系はともに働くことが多く、濃密な関係をもとめるといわれる。

 電車通勤や自動車についても、「公共交通機関は集団での移動であり、どこでそれに乗り、降りるかは予め定められている。それに対して、自動車は、基本的に移動する場所を制限されず、どこへでも行ける。発車時間などを気にする必要もない」

 どの交通手段を多く使うかでサラリーマン系や自営業系の属性が透けて見える。電車にのることになんの疑問ももたない人はサラリーマン系の家庭で育ち、そうなることになんの疑問も抱かずに生きてゆくのだろう。車に早くに乗り出した人は自営業系のスピリットをもっているのかもしれない。もっともこれは家庭の職業環境の要素ではなくて、車が好きだとか、土地の状況とか、ものの考え方の要素のほうも強いともいえるのだが。

 親の職業環境によって価値観や人生行路もだいぶ違うという話である。戦後の教育は学校でそういう家庭環境の影響がチャラになり、白紙の状態で平等にスタートだという捉え方が強かったわけだが、いいや、そんなことはない、親の職業環境が大きな意味を占めるとこの本では指摘されたわけだ。このことはたしかにだいぶ意識されなくなったのだろう。みんな学校教育でゼロからスタートというわけではないのだ。知らず知らずのうちに親の背中を見て育ち、職業環境の空気や価値観を吸って成長する。この影響を無視してはならないということである。

 ピエール・ブルデューなんかでは親の「文化資本」という名前で指摘していたことだろうか。文化資本によって属性や価値観もだいぶ違うし、その生育環境は多くのハンデを負わせるかもしれない。戦後の教育界はこの不平等を解消しようとして、一種のタブーのように封じ込めてしまったようだが、親の職業環境が与える影響について小さく見積もりすぎると選択を誤ってしまうかもしれない。出自環境をチャラにするという教育神話は若者の将来選択によりよい選択を与えないかもしれないということである。

 大枠ではこのような属性はあるかもしれないとは思うが、人は考え方や性格、価値観で親の影響とだいぶ違う方向におもむくことだってありうる。それにサラリーマン系が七割を占める現在で、ほかの属性をとりだすということはあまり有効な選択基準とはなりえないだろう。

 問題なのはサラリーマン系の中での職業選択の迷いや自分探しの漂流にあって、サラリーマン系の子どもは親の職業環境にほとんど影響を与えられないこともあって、若者は進路選択にたいへんな迷いを背負わされることになる。属性というより、職業によってはこんなに価値観や目標が違うと読み替えたほうが有効に消化できるかもしれない。

 なお島田裕己はオウム事件以降、信頼を回復していないので読みたくないと思っていたのだが、題材に興味をひかれたので手にとった。なにが信頼できなかったのか理由も忘れてしまったのでそろそろ時効か。


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