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09 17
2011

自分で稼ぐ方法

『田舎で起業!』 田中 淳夫

4582852157田舎で起業! (平凡社新書)
田中 淳夫
平凡社 2004-02-19

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 田舎での起業の具体例がのせられていて、なかなかよかったのではないかと思う。田舎での典型的な業種――農業、ダイビング、観光農園、牧畜、炭焼きなどが紹介されていて、起業といえば新しい業種を思い浮かぶのだが、まあいいかという感じ。起業での実際、仕事や収入での苦労や成功例がのせられていて参考になる。

 起業は八割は失敗するといわれている。関西の田舎のほうをバイクでツーリングするとロードサイドの廃屋ショップが目立つ。この本では飲食店がとりあげられていないが、とりあえず起業するとなったら飲食店を思い浮かべると思うのだが、田舎では外食は厳しいのだろうか。地域の特色ある飲食店に職人的なこだわりを賭けそうな気がするのだが、そういった成功例はのせられていない。

 米や野菜をつくるのはかんたんだという声がある。経験のないしろうとでも初年度からそこそこの収穫がみこめる。米作は最短で一週間の労働でつくれるそうである。米つくりってそんなにかんたんだったのか。農協に出荷すれば販売は肩代わりしてくれるが、何ヵ月後かに愕然とする売り上げをつたえられる。

 有機無農薬農家は産直契約をむすぶことが多いが、配達にほとんどの曜日をとられたり、宅配は一家総出の作業となり、「宅配奴隷」という言葉さえ登場した。物産直販店は地域の同じ作物がならべられるわけだから、過当競争になる。

 林業は森林組合などに雇われることになるが、危険率ナンバーワンで習得は最低五年かかる。しかし仕事がない。山仕事のほとんどは国や自治体の補助金でまかなっている。一年のうち数ヶ月を失業保険で食いつなぐことが常態化している組合もある。

 徳島県の上勝町はご存知な人もおおいと思うが、つまもの産業で大成功をおさめた町である。ふつうの葉っぱが商売になったのである。小料理店や料亭でつかわれる葉っぱである。さいしょ農家はつまものという商品を理解せず、出荷に応じなかったエピソードもあったそうだ。いまは鶴や亀といった折りものをつくったり、全国に上勝町から出荷できる商品をFAXで流し、注文を契約農家に流す。農家は市況や売れ筋商品を見つけられるというしくみだ。テレビで見たことがあるが、高齢者が元気に活躍していた。

 観光農園をいとなむ「葡萄園スギヤマ」は週休四日の農業を実現していて、すごい人だと感心してしまった。農業の成功を時間においた。一週間三十時間三日間の労働におさまるように計画し、実現した。収入も一千万ある。最小の努力でふつうの収入を得ることが目標だとか。生産量が増えても労働時間の増加に見合わなかったり、疲れるだけで収入はたいして増えない。

 杉山氏は技術畑の営業マンだったが、50歳を前にブドウ栽培の本を読み漁り、営業でつちかった作業工程や経費、売り上げをシミュレーションした。やってみると労働量は計画の二倍、収入は六分の一だった。そこで観光農園をやってみる。ブドウの試食をすすめるとひと箱買ってくれた。一日十万の売り上げ。シャーベットにすると十万になった。観光ブドウ園は夏の一ヶ月で一年の収入が見込めることから、これ一本でやってゆくことに決めた。農業はものづくり20%、マネジメント40%、マーケティング40%と氏はいう。目先の利益より労働生産性を高めて、自由になる時間を増やす。ほんらい仕事はこうでなければとわたしも思う。

 水耕栽培という方法があるそうで、プラットフォームの台のうえでサラダ菜を育てる農家もある。周年で十回転ほどでき、毎日出荷でき、売り上げは一千四百万になるそうだ。土耕の三倍ほどの生産効率だ。また農協任せに出荷をたよると地元の市場では同じ作物が出回っているので買い叩かれる。品薄の市場に出すと価格も高くいえる。

 農家には職人的な人が多い。いい品をつくれば黙っていても世間は高く評価してくれて高く買ってくれるだろうと。しかし商品にする過程をおざなりにするといい価格で売れない。相場を気にせずに地元の市場に出荷するだけでは同じ産物、収穫時期がいっせいに重なるわけだから価格は安くなるに決まっている。

 放牧のウシでトレッキングコースの人気となり、和牛繁殖や農業、林業と多角的に手がけている例もある。戦後の畜産は畜舎で管理される方式に変わったが、高コストであるし、飼料の運搬、配給、牛舎の掃除などで労働量が増えた。放牧は下草を食べてくれるし、管理にもほとんど手間がかからない。たぶん都会の人はウシの放牧に大喜びするだろう。

 ところで都市部の人は山はだれのものかと思っているかというと公共のものだと思っている。すべての土地には所有者がいる。わたしも山がだれかの所有物とは知らなかった。たしかに山登りで「この山林に入るな」とかの立て札を見たことはあるが、あんな山奥がだれかの所有物であるメリットや価値がよくわからなかった。山菜取りで山を荒らす人はこの基本的なことを知らないのだろうという指摘である。


田舎で暮らす! (平凡社新書) 森林からのニッポン再生 (平凡社新書) 森を歩く―森林セラピーへのいざない (角川SSC新書カラー版) 田舎力―ヒト・夢・カネが集まる5つの法則 (生活人新書) 月10万円で豊かに生きる田舎暮らし (幻冬舎文庫)
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