HOME   >>  書評 社会学  >>  『日本文化論のインチキ』 小谷野 敦
09 03
2011

書評 社会学

『日本文化論のインチキ』 小谷野 敦

4344981669日本文化論のインチキ (幻冬舎新書)
小谷野 敦
幻冬舎 2010-05

by G-Tools


 小谷野敦の読書論は身もふたもないホンネのトークがおもしろい。『バカのための読書術』もいぜん読んだが、あれこれの学者や学説はいまでも有効なのか、どう評価されているのかという話がおもしろい。

 ユングはオカルトだとか、岸田秀やトフラーはあまり立派な学者と思われていないだとか、「サピア=ウオーフの仮説」はチョムスキーに否定されただとか、参考になることが多い。

 タイトルは『日本文化論のインチキ』ということだが、有名な文化論をちょこちょこ論じた感じで、全体としての日本文化論を批判した本にはなっていない感じがした。骨子としては日本文化論はほんとうに日本独自のことで、他国にはないのかということが検証されていないと批判している。まったくだ。

 たとえば日本は集団主義でアメリカは個人主義の国だとたんじゅんにいわれたりするが、アメリカの社会学書を読むとアメリカ人もおなじように集団主義的傾向をもった記述がたくさん出てきて、変わりはないじゃないかと思ったことがある。リースマンの『孤独な群集』だとか、ホワイトの『組織の中の人間』だとか。極端な対立項なんてものごとを単純化しすぎて、オール・オア・ナッシングの思考になってしまうので信用しないほうがいい。

 この本は読書論、学者論としてはおもしろいが、文化論としてはまとまったメッセージなりテーマはもっていないのだろうな、全体としての印象は薄い。

 小谷野敦お得意の恋愛輸入品説との闘いとか、裸体に鈍感論だとか、ほとんど自説検証であって、日本文化論という感じがしない。

 論じられた本は『甘えの構造』『ものぐさ精神分析』『歴史哲学』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『陰翳礼賛』『タテ社会の人間関係』『菊と刀』『色と愛の比較文化史』『逝きし世の面影』などさまざまに論じられているが、まあ日本文化論というより、読書論、学者論だろうな。

 ホンネの読書論、学者論を読める機会はそうないのだから、おもしろいし、読む価値はあると思う。ふだんなら学者同士の雑談程度にしかひろまらないホンネの話を聞ける感じである。現代思想とか知識人の崇拝や期待から目を覚ました評論が読める本である。古典とか名著ばかり読んでいるとこんな話が聞けないから価値ある話だと思う。


バカのための読書術 (ちくま新書)ユング自伝―思い出・夢・思想 (1)ものぐさ精神分析 (中公文庫)パワーシフト―21世紀へと変容する知識と富と暴力〈上〉 (中公文庫)言語・思考・現実 (講談社学術文庫)


孤独な群衆日本文化論の系譜―『武士道』から『「甘え」の構造』まで (中公新書)「日本文化論」の変容―戦後日本の文化とアイデンティティー (中公文庫)「日本人論」再考 (講談社学術文庫)日本文化論の名著入門 (角川選書)

関連記事
Comment

日本人はよく自身の気質について問うてきましたが、いずれにせよ古典を頭から信じるより、一歩下がって冷静に見ろということでしょうかね。そうはいってもその古典、名著を全否定するのも、それもまた極端ですし…
うえしんさんが書いている通り、オール・オア・ナッシングはよくない、ということなんでしょうね
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top