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07 16
2011

書評 社会学

『無頼化する女たち』 水無田 気流

4862484387無頼化する女たち (新書y)
水無田 気流
洋泉社 2009-12-05

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 1970年生まれの新しい社会学者だが、エッセイとか読んでいるとじつに薄い社会学者という感じがする。独創とかユニークな視点がなく、ただ平均的な分析を広く浅くならべているだけ。じつにふつうのことを書いていて、もの足りない気がしないわけでもない。

 水無田気流は詩人のペンネームで、さいきんは田中理恵子という本名をつかっている。

 本のタイトル「無頼化」というのは「他に頼むものがなく一人で生きていくことを前提に、あらゆる価値基準を決定するようになること」と定義されている。

 わたしの印象としてはひとりで生きていこうと覚悟している女性はそんなに多くない印象があるのだが、ほんとうにそういう女性はふえたのだろうか。そうなら男の経済力に頼る恋愛観や結婚観はおおはばに変化するはずなのだが。

 げんざいの女性のおかれているいちばんの問題点は日本の経済社会は女性をあまり積極的に守ってくれず、女性を守るのは社会(公的領域)ではなく家族(私的領域)であると暗黙の前提があること。

 これまでは男の正社員に養ってもらえばよかったが、男の非正規化、低賃金化で男に頼ることもできなくなってきた。その影響をもろに受けるのはこれまで社会に守られてこなかった女性ではないのか。低賃金、非正規の低い待遇にいちばんとめおかれているのは女性である。男に頼れなくなれば、その被害をちょくせつに受けるのは女性である。この問題が社会で鋭く議論されたり、問題化されることが少ないのも不可思議である。

 だから若い女性はいま猛烈に安心したがっていると指摘する。その両面の現われが「婚活現象」であり、「勝間現象」なのである。男の高経済力をゲットしようとするあさましい功利的な生き方と、勝間和代みたいにキャリアで生きていこうという現象は方向は違うが、安心したがっているという根っこは同じなのである。男の経済力をあてにできなくなった若い女性はいまいちばん危機的状況におかれているのではないか。

 この問題は社会学者の領域ではなくて、労働経済学あたりなのだろうが、そのジャンルで女性の生きる道をさししめしてくれるよい教科書や戦略本が出ているわけでもない。勝間本でキャリアをゲットするか、婚活で3.5%しかいない年収600万円以上の高収入男をゲットするしかない。いずれも超高確率の狭き門というか、ほとんどのぞめない高望みである。だからこそ女性は猛烈に安心したがっているのである。

 男の稼ぎに頼ればよかった幸福な高度成長期の慣習のまま低成長期を生きなければならなくなったから、女性はいちだんと厳しい状況におかれてしまったのである。親世代はまだ男の稼ぎに頼ればいいと思っているだろうし、社会の慣習やシステムのその時代のままである。人知れずいちばん被害をうけているのは声なき若い女性たちではないのか。男の扶養に頼ればいいじゃないかと社会が思っているなら、その恩恵に与れない女性はいちばん被害をこうむる。このことが社会的に問題化されていない状況はかなり危ういものを感じさせるのだが。

 女性の経済戦略は社会でひろく問題化されるべきだろう。非正規問題や格差問題のように社会で問題が共有されないのはなぜだろうか。まだ危機的状況におちいる女性が少ないからだろうか。社会構造の問題としてはやくに共有されるべき問題として浮上するべきだろう。

 男の扶養に頼れなくなった女性は旧来の非正規や低賃金の待遇のままでいいのだろうか。男の扶養に頼れる女性もいることから、問題化されることがむづかしいのだろうか。男に頼れなくなった女性は労働問題に鋭く切り込んでいかなければならないでのはないか。

 なおこの本で引用されていた「自己充実」だけをめざした社会は子どもを忌避する心性をつくりだすと指摘した本田和子の『子どもが忌避される時代』を読みたくなった。少子化ではなくて、忌避化だ。


4788510766子どもが忌避される時代―なぜ子どもは生まれにくくなったのか
本田 和子
新曜社 2007-10-25

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