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07 09
2011

書評 ビジネス書

『デフレの正体』 藻谷 浩介

4047102334デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
藻谷 浩介
角川書店(角川グループパブリッシング) 2010-06-10

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 遅まきながら、売れているようだったし、テレビで見た著者の論旨も明確で勢いがあったので読んでみた。

 まあ、読んでおいたほうがいい本。不景気の原因を生産年齢人口の減少に結びつけた本。人口が減少する話はさんざん聞かされてきたが、人口減少を不景気の原因に結びつけた主張はそう聞かなかった話だろう。人口減少の前に現役世代をしりぞく生産年齢人口の減少が不景気や内需縮小の引き金だったと著者は主張する。

 この本を読めば人口減少からものごとや市場、景気を読むフレームが養われる。こういう目はもっておいたほうがいいだろう。高度成長は人口増加で説明できたり、失われた10年は人口減少で説明するべきなのかもしれない。こういう目で見るといかに景気の考え方や対策が違ってくるか。

 ただでさえ生産年齢が減っているのに消費が旺盛な生産年齢や若者を非正規や低賃金に追いこみ、老後の貯蓄にはしる中高年世代の雇用や高賃金を守ってきたのは経済や顧客の首をしめてきたことにほかならない。

 売れない売れないと嘆いてきて、そのために自社従業員の給料や安定を奪っておきながら、お客はどこに増えるというのだろう。おまけに消費の旺盛な生産年齢と若者はどんどん減ってゆき、人口の多い退職世代は将来の医療や生活のためにお金を貯蓄にまわす。

 経営としては人件費カット、非正規化で賢明なリストラをしてきたつもりが、人口が減る時代のおもな顧客の収入を減らしてきたのだ。自分だけを守ろうとして、けっきょくは自分も守れなかった企業経営者の愚かさというしかない。自社の従業員の賃金を減らしてきて、どこに消費をたくさんしてくれるお客がふえるというのだろう。ほかの企業さんがサイフのゆたかなお客さんをふやしてくれるとムシのいい考えをしていたのだろうか。

 この本には売れたからだろうが批判も多く、高齢化のすすむ先進国は軒並み日本のように長期不況におちいっているわけではないことをどう説明するのかといったことがいわれていたり、現役世代が減っているというのならなぜ深刻な人手不足がおきないのかということはすぐに目につく疑問である。生産人口が減るのならすぐに人手不足―賃金の上昇がおこってもいいはずなのだが。人口減少をいわれてきて人手不足を待っていたのだが。

 人口ピラミッドが逆さまになって社会主義的発想や年功賃金、年金などの右肩上がりの仕組みがすべて悪いほうに足をひっぱっているのだ。ドラスティックにそれを逆さまにするのが正しい対策なのだろうが、高齢世代にお得や利権が大きくなった現在のしくみを急激に変えられるはずがない。痛みや血をともなうシステムの変更はできずにどこまでも対策が打てないまま、このまま時代遅れの制度で痛みを若者世代にかぶらせるしかないのか。

 この本はデータや統計で実情を読もうとした本である。なぜ失業者数だけ見て景気を判断し、就業者数の増減を見ないのかといったことや、小売販売額の総額を見ないのかといった疑問を呈している。失業者数が増えている時期でも、減るはずの就業者数が増えているときもある。90年代半ばは就職氷河期といわれているが、失業者数はたしかにふえているが、就業者数もふえているのだ。報道のデータはひとつだけとりだして、ほかの数値―ときにこちらのほうが事象をあらわしていることがあるかもしれない。

 人口減少が社会をじわじわと直撃しているということがこの本からよくわかる。そのような社会では市場や景気、対策はどうなるのかを考えるべきなのかもしれない。人口で考えろということである。総体で考えずに若者とかある対象だけを選び出して、原因や責任を押しつける不景気論は現実と対策をまちがうものなのである。

 ところで人口構成比のグラフを見ていて、1940年までは子どもが多く老人が少ない右肩下がりのグラフになっているが、意外に1960年から子どもの数が減り始め、横並びのグラフがはじまりだしている。たぶんに農村から都市への移住がはじまったころで工業、都市社会はどうも子どもの数を減らしてゆくもののようだ。子どもが生産の頭数にならずに完全に学童、消費世代になってしまったからだろうか。


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