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11 21
2005

書評 性・恋愛・結婚

『萌える男』 本田 透


tsikuma00111.jpg萌える男
本田 透
筑摩書房 2005-11-07

by G-Tools
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 かなり興奮する書物である。革命的であると思ったくらいだ。ぜひみなさんにお薦めしたい本である。

 この本でいっていることは恋愛結婚は終わってしまったということだ。70年代に政治に絶望した若者が見い出した閉塞的な恋愛の世界が、宗教や政治に変わる自我の安定や救済をもたらすものとしておおいに求めたられたのだが、80年代をへて商業化にとりこまれ、恋愛資本主義と化す。神や政治に変わる恋愛という救済のシステムが強迫的な商業システムとなったのである。

 しかし家族や恋愛は崩壊し、晩婚化や非婚化で逃げ出す男女は急増し、狩猟的な恋愛市場に救済をもとめられない男の一部はオタクとして脳内の満足で自己の救済をもとめる思考実験をおこなってきたというのである。つまり他者に救いを求められないのなら、自分で自分を救おうというわけである。萌える男とは自分自身の内側に「神」を見い出そうとする試みなのである。

 私としては恋愛結婚が終焉してまったということにいちばんインパクトがあった。オタクはその商業化に対する反逆であることはわかっていた。恋愛結婚というのは男に対する女の生産的・経済的な搾取であるという一面があるからだ。崇高な恋愛を経済活動にしてほしくないのだ。しかし女にとって恋愛結婚は経済取引であり、いかに高額な利益を得られるかの経済活動であり、オタクはその経済打算に自己の救済をあきらめてしまったのである。

 こういうことは一般的にも大衆的にもよくわかると思うのでこの面をもっと掘り下げてほしかったと思うのだが、この本は「萌え」についての本である。萌え系恋愛ゲームとかアダルト・ゲームの話になると、私は一度もやったことがないし、萌え系キャラというものにもなにも感じないので、いっていることはわかるのだが、いまいち感情移入しにくいところがあった。「恋愛結婚は終わった」という宣言をのべる段階で止めたほうがもっと一般性が獲得できたのになと思う。

 それにしてもものすごく好奇心を刺激される本だった。いろいろな疑問が噴出したし、もっとほかの考え方もできるのではないかと、おおくの思考が頭の中を駈け巡った。いろいろ考えてみたいと思わせる本であった。

 なんといっても恋愛結婚は終わってしまったということがいちばんの衝撃である。商業化にまみれたそれは総スカンや反逆、廃棄を迫られる時代になったのである。オタクはさっさと自我の安定や自己の救済をほかに求めるようになった。女やマスコミはその商業利益を、あるいは共同幻想をいまだに強迫的に追いかけ回している。

 現代は恋愛資本主義にアンチを唱える宣言が必要なのだろう。この本はそのくさびを打ち込む宣言書になった。あるいは萌える男についてより、恋愛資本主義の終焉をもっと声高に主張するべきであったか。

 恋愛という神は、あるいは恋愛という商業主義はもう捨て去らなければならない――経済化されすぎたそれは若者の総スカンを喰らいはじめているのである。このことをわれわれはしっかりと認識するべきだ。その反逆を早くから行っていたのがオタクであり、かれらは新しい思想運動を生み出そうとしていたのである。

 いろいろ啓発されることの多かったこの本を私の「GREAT BOOKS」に推したい。

 ▼リンクと恋愛資本主義についての本。
 終身愛と「有料セックス資本主義 00/8/30. 私の考え。
 00年秋 性愛市場―総力戦 00/10/30. 参考文献。

 あすとろはた 本田透のHP

性的唯幻論序説「非婚」のすすめ196714411.jpgコミュニケーション不全症候群

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