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02 16
2011

書評 ビジネス書

『なにわ商人1500年の知恵』 藤本 義一

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なにわ商人1500年の知恵 (講談社プラスアルファ文庫)なにわ商人1500年の知恵 (講談社プラスアルファ文庫)
(1994/08)
藤本 義一

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 もの足りなかったな。もっとなにわ商人のあこぎさやがめつさ、商売の目ざとさなどを学びたかった。

 学校にいったり、サラリーマンの子どもとして育つとどうも商売心というのが薄れると思う。金を稼ごうとか大儲けしてやろうとか考えるのではなく、世の中のみんがやっている「正しい」生き方をしようとなってしまう。学校や国が教えて与える生き方を正しいと思ってしまって、計算的には損な生き方を選択してしまう。

 どこにでもある日用品は安売りするしか売る方法がなくなってしまうのに、学校ではみんなと同じ生き方が正しいと教える。人生の戦略や商売として考えるのならこの選択は正しいといえるのだろうか。商売や金を儲けることに正しい王道をいっていたら同じ商品ばかりの叩き売りになってしまう。だからアコギななにわ商人にその商売の精神を学びたいと思ったのである。

 武士階級は金をあつかう商人を賎しい人たちだと思っていた。江戸時代の階級は士農工商で商人はいちばん低い階級におかれ、税金さえとられなかったという。お金のとり方もわからなかったし、役人の数も足りなかったからだとかいわれている。江戸時代は豪商の時代だったように聞いているが。

 賎金思想は商売人たるサラリーマンにもつづいているが、お金なしで食っていけるわけなどないのだが、商人はいくら軽蔑されようと卑屈にふるまおうが金さえ儲かれば勝ちだという考えを根底にもっており、人の軽蔑などどこ吹く風である。

 大阪では学校頭といって学校秀才を軽蔑するとこの本に書かれているが、わたしは大阪で暮らしているが聞いたことはないが、まあガリ勉をバカにする風潮は全国的なものだと思うが。学校頭は知識オンリーで、応用する力をもっていないというのはまったくそのとおりだと思う。知識ではなくて、使える、稼げる知恵がほしいのである。

 商人は利己主義や守銭奴という考え方があるが、商売の基本は「損して得をとれ」ということがいつもいわれることだろう。自分の利益だけをとろうとする人にそもそもお金を払おうなどとだれも思わない。自分が得や利便を感じるからお金を払うのであって、商売は利己主義で儲かることはないのである。

 大阪商人はがめつくいわれているが、各地に手をのばした首位は近江商人、伊勢商人である。「近江泥棒、伊勢乞食」とまで揶揄されたほど貪欲であったようだ。近江商人は行商から店をふやしてゆき、伊勢商人はぽっと江戸に出店したりした。巧みな商売に軽蔑の目を向ける人も多かったが、かれらはそんなやっかみに超然としていた。

 金を儲けるには集中力、記憶力、企画力、管理力、運用力の五つの条件が必要といわれる。時流の読みと運も加わる。小売りというのはいつの時代も斬新な商法で売って出なければならない。三井は現金売りで財をなした。御用商人になって大名に金を貸すと大半は返ってこなかった。三井は暖簾わけで奉公人のやる気をひきだしたが、暖簾分けされるのは0,25%の確率だったらしい。

 学歴社会になってサラリーマン社会になって、商魂とか金儲け主義とかの精神がどんどんなくなっていって、継承されなくなっていったと思う。稼ごう、儲けようという考えより、いかに世間的な正しい品行な人生を送るかが目標になったと思う。こんな精神では商売も育たないし、自分も食っていけないで損な取引、安く買い叩かれる人生を送るしかないだろう。福祉国家の品行方正な人生は金儲けを軽蔑して、商売を立ち枯らせて、自分が食っていけなくなるのである。必要なのは商人の鋭利で計算高い目ではないだろうか。

 江戸時代やむかしの商人を学ぶのはけっこう鉱脈だと思う。いくら平成の20年不況が長かろうが、商人は江戸時代からえんえんと商売をつづけてきたのだ。どんな戦乱や混乱があろうと生きのびてきたのだ。むかしの商人にいろいろ学ぶことがあるだろう。


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