HOME   >>  書評 ビジネス書  >>  『部下を動かす人事戦略』 金井 寿宏、高橋 俊介
02 12
2011

書評 ビジネス書

『部下を動かす人事戦略』 金井 寿宏、高橋 俊介

piramid.jpg



部下を動かす人事戦略 (PHP新書)部下を動かす人事戦略 (PHP新書)
(2004/10)
金井 寿宏、高橋 俊介

商品詳細を見る


 キャリアに関する話がおもしろかった。いままでピラミッドの階段をのぼる上昇志向型の人事で人を釣ることができたが、いまはもうポストの面からも上昇志向をもたない若者も多いことからムリになったということだ。ピラミッドの上にいけば幸せになれるという幻想の効用がなくなっている。

 管理職になりたいという人も減ったし、無理をして上を目指すよりそこそこでいいという人もふえた。上昇志向がなくなって無能になったりやる気を失ったというよりか、違う価値観で生きているのだ。いまの時代、優秀な人材はそちらのクラスターから生れてくる傾向があるという。

 ノルマや数字の達成が目標になると顧客の利益や満足は二の次になる。三年で異動や転勤が多ければ、強引な営業もできる。しかしずっと長いあいだその地にとどまると口八丁や売り逃げの営業では長く顧客の信頼をとどめておくことはできない。数字やノルマでケツを叩く営業でいかに顧客の信頼を失ってきたことか。

 非上昇人材は外側の地位や金の報酬より、内発的な動機をモチベーションにする。いかに自分が熱中するような環境をととのえるかが大切なのである。外側のものさしでかれらは測れない。高橋俊介はそれを『スロー・キャリア』と呼んだが、三浦展の下流の若者のように否定的には捉えていない。上昇志向で釣れる従業員、若者、国民の時代は終わったのである。

 キャリアというのは偶然のできごとに形成される。思い悩んでいつまでも自分の過去から出られない人より、どうなるかわからないが、とにかくやってみようという「年寄りの冷や水」型の人の前にチャンスは広がっている。

 これからのリーダーに求められるのは、上からいわれたことをきちんとこなす人材ではなく、組織を変革したり、新規事業を起こしたりする能力である。むかしはまだ実のならない新規事業は若者にやらせておけと経験をつむことができたが、いまはポストの多さからなかなか任せてもらえない。やってみることでしか身につかないのである。

 自律的な人材は警察のような軍隊型組織でも求められている。現場で新しい無軌道な事件や事例がおこればトップダウン型の人材だけでは務まらない。現場の自律性が必要になる新しいことがあまりにも起こりすぎているのだ。

 人事というのはほんらいラインに奉仕する僕であったのだが、ぎゃくにラインを支配する権力者とふるまう転倒がおこってしまっている。本来はラインがやることを人事部が一手にひきうけているにすぎないのだ。変化の激しい時代にラインが必要としている人材を人事部が把握できるだろうか。

 上昇志向だけで焚きつけられる時代はもう終わった。上昇志向もないのにむりやり焚きつけられる企業もまだ多いのだろうな。上昇志向の強い若者も一定数いる。しかしいまは非上昇志向の若者と二分されている。そのような若者をいかにやる気にさせるかが問われている。まちがっても上昇志向の色に染め上げようとしてもムリである。上に上ったからといってたいして大きな夢や報酬も得られる時代でもないからだ。ケツを叩いて離反をおこすか、顧客に犠牲を強いるしかないだろう。


自分らしいキャリアのつくり方 (PHP新書)キャリアショック ―どうすればアナタは自分でキャリアを切り開けるのか? SB文庫スローキャリア (PHP文庫)働くひとのためのキャリア・デザイン (PHP新書)リーダーシップの旅  見えないものを見る (光文社新書)

関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top