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01 16
2011

書評 心理学

『風邪の効用』 野口 晴哉

風邪の効用 (ちくま文庫)風邪の効用 (ちくま文庫)
(2003/02)
野口 晴哉

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 マンガなんかでは熱が出たら頭に氷をのせて冷やす図がよくあったが、「こっけいである」といっている。風邪自体すでに治ってゆくはたらきだから、いろいろなにもしないほうがいいといっている。

 人間のからだはじぜんに治る、よくなってゆくというはたらきがそなわっているはずである。薬であるとか医者であるとかすぐ治す、止めるというはたらきばかり追加してゆく。熱が出るのは風邪を汗とともに出すはたらきなのだが、その熱をとめてしまおうというのはどういうことだろう。

 風邪はうつってもからだが丈夫になるからうつってもちっともかまわないといっている。入浴も皮膚を刺激して皮膚呼吸をさかんにするからいいというのだが、世間の人は入浴を洗濯と思っているから冷やしてはいけないと思う。石鹸にも野口晴哉は反対派で皮膚のしぜんの排泄作用を殺してしまうといっている。なんだか医者や薬、ひいては貨幣社会や代替サービスというのはほんらい人にそなわっているはずの治癒能力を殺虫剤のように殺してゆく方向に進み勝ちだ。ひとりで歩ける人に杖を使わせる方向ばかりに進む。

 風邪の心理的作用にも敏感に言及している。風邪とはプラシーボ(自己暗示)でひくものだ。いったん空想で方向づけられると意志や抵抗では勝てない。冷やしたら風邪をひくと思っている人はそれで風邪をひくし、栄養がないとひくと思っている人はそれでひく。くしゃみは風邪の治るときにするものだが、風邪のサインと思った人はそれでひく。

 風邪あるい病気というのはすでに心理的な要因でかかる、ゴーサインを出されるもののようである。病気には効用がある。休める、親に心配してもらえる、不満や怒りのサインであったり。そういう心理的なもうひとりの自分が風邪をひかせてしまうのである。

 風邪はからだの悪いところを治してくれる、重い病気にかからないための微調整で、鈍い体にならない作用をもつと風邪を歓迎するようになるとぎゃくにひかなくなる。風邪を悪いもの、すぐに治すべきやっかいなものと思っていると心の隙間にふっと忍び込んで風邪を引き寄せる。ある処方で治るというともっと重くなる人もいる。心理的には風邪や病気は自分の味方や療養をもたらしてくれるので、そういう心理的な意味づけの側面としての風邪も考慮しなければならない。

 野口晴哉によると風邪はひいたほうがいい、からだの悪いところを治してくれる、しぜんの治癒作用だということである。からだの偏って疲労した部分を治してくれるはたらきである。だからすぐに治さずにしぜんに経過させるのがいいというのである。さもないと大きな病気にとつぜん見舞われるということである。

 風邪にはいろいろな考えが行き交っているが、自分でしぜんに治るはたらきを活用するのがいちばんなのだろう。


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風邪は暗示

ひどく嫌な現場があった。クソ若い作業員が、社長の息子というだけで威張りくさっていた。技能なし。
いやだなあ、と思っていたら体が熱っぽくなった。明日はダメかもしれないと助手席の相方にいった。案の定、バッファリンを飲んだのに、翌朝38.6の発熱だった。休んだ。この歳にこの熱は、実はきついんです。医者にも行かず、トイレと冷蔵庫の間をはって往復し、水だけで4日間ベットにいた。この間、現場が終わったらしかった。今は違う現場通い。
意外のひとつ。これが気分がいいなと思えたこと。もう一つは、あの相方も次の2日仕事を休んだという。狭い車の中で私からうつされたともいえようが、ともに行きたくない現場の「暗示」が聞いたともいえようか。今の現場も、そろそろ風邪をひきたくなってきた。もっとも作業員は、いくら生活のためとはいえ、こうした肉体労働をいつまでつづけるのだろうか。

風邪も、幼子がいたらうつしたくないと思う。抜き差しならない正社員の仕事があるなら休めないと思う。ベッドでの風邪の気分に解放感を感じるのは、それらの束縛がなく、もう死んでもいいや、と思える人の特権ではないでしょうか。
野口さんは、「効用」といっているかぎり、まだ生きたがらせる人なのかもしれませんね。

bananaさん、こんにちは。

風邪はいやな現場をよけさせてくれましたが、風邪をひくこともまたしんどいんですよね。

野口晴哉は偏って疲労の貯まった部位を調整するためにひくといっていましたから、きっと体の悪い部分をなおしてくれたのでしょうね。

風邪はからだにいい、悪いところを改善してくれる、風邪をうつされてもいいと思うようになると、ぎゃくにひかなくなるそうですから、身体というのは病気になるのはいやだと恐れている人が病気をひきよせたりするのでしょうね。

お迎えがきてもいいと思う人もあんがい長生きするものかもしれません。
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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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