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12 31
2010

書評 社会学

『メディアに縛られた女』 キャスリン・ウェイベル

メディアに縛られた女メディアに縛られた女
(1985/07)
キャスリン・ウェイベル

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 だいぶ前に読んだと思うが、百円本で見つけたので読むことにした。

 百年二百年のスパンで小説、テレビ、映画、雑誌、ファッションに描かれた女性像を探っている。

 フェミニストが書いた本らしく、女性がどんなに家庭的で保守的な役割に押しつけられてきたかをことさら強調している。1977年の出版。その時代を生きた人は抑圧や差別ばかりを感じたわけではないだろうと思うのだが、フェミニストの目にかかるとぜんぶ不満と抑圧のかたまりだったらしい。

 わたしたちはテレビや映画で育つわけだが、世代ごとに見てきた作品は共有できない。80年代に育った人は50年代、60年代のテレビや映画を見ることはできない。そういう意味でテレビや映画の世代間断絶というのははなはだしいと思う。うわさで聞いたり、名前を聞いたりしたとしても、そのナマの映像を見られる機会は少ない。

 物語を好きだった十代十代のころは50年代や60年代に流行った映画やテレビ番組はどんなものだったのだろうと遡りたい気もちが強かったのだが、物語に少々興味を失っているわたしはむかしの名作がどんなものだったのだろうという興味を失っていた。

 映像文化に育ったものにとってこういう言語化された言葉で描かれることはそんな見方ができるのかと驚くものだと思う。映像というのは繰り広げられる場面や姿勢を言語化したり問うことはない。ほかの視点や目線をもてないものである。

 言語化、活字化ですくえるものははなはだ大きいと思う。映像というのは言葉をなくす文化、客観的視点を失うもの、情感だけで場面の相対するものではないかと思う。自己反省的にそう思う。だからこういう活字化された、言語化された本を読むことは大事なのだと思う。

 小説やテレビでは保守的で家庭的な女性がよく描かれたが、映画では追い上げるテレビに負けないためにお色気で迫った時期もあったようだ。1930年代のメイ・ウェストは「前のポケットに入れているのはピストルかしら。それとも、あたしに会えて嬉しいってわけなの」というセリフなんて吐いている。いわゆるセックス・シンボルというやつか。その後にギャングやセックスものに対する規制は厳しくなったということだが。

 戦争は女を変えた。仕事を持ち、自立した生活の自信をもつようになった女性は自由を捨てて専業主婦に戻りたいとは思わなくなっていた。しかし男に自信をもたせるために女たちを強制的に家庭に入らせようとする意識もあったようだ。戦争から帰ってきた若者には手厚い保護がなされ、戦後の初婚年齢は二十代はじめのころになった。映画は主要なお客だった女性をテレビにとられ、映画は十代二十代の若者だけが見るものになっていた。

 広告に見られる女性像というのはいちばん本書を読む価値のある章だろう。われわれは広告を批判的に、客観的に見る・読む機会というのをそうそうもたない。広告にどんなに踊らされた存在か教えてくれるのは本書のような社会学的な本だけだろう。

 ファッションにおいて女性は男の稼ぎを見せびらかす家具調度品のようなものだったから、いかに労働や運動から離れた格好をできるかが競われた時期があった。1800年半ばころの女性のスカートはひだひだのカサをひっくりかえしたような大きなものになっていた。コルセットも細くなり、ウェストは狭められる一方だった。しかし自転車が流行りだした1880年代、90年代になるとパンツ・ルックやこんにちのような機能的な格好になってゆく。ポール・ポワレやココ・シャネル、クリスチャン・ディオールらが女性の新しい服をつくってゆく。

 この本は保守的・家庭的な生き方に反発や不満を抱く女性には格好の書物だろう。いかに女性が家庭に閉じ込められたきたかという歴史を描く本になっている。ここに描かれたきた女性は反面教師に思えるだろう。わたしにとっては「ふーん」という感じで時代の変遷をながめたということになろうか。


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