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07 09
2010

書評 歴史

『明治維新と現代』 遠山 茂樹

明治維新と現代 (1969年) (岩波新書)明治維新と現代 (1968年) (岩波新書)
(1969)
遠山 茂樹

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 これはむづかしかった。いろいろな学説を紹介していたということもあるが、1968年刊の42年前の古い本だから時代感覚が合わなかったということもあるかもしれない。またこのころの新書はひじょうにレベルが高くて一般読者に紹介するという気持ちがすくなかったのだろうか。

 しかし入門書すぎるのも問題である。初心者にむけてバカにしたような本を書くし、教科書でもそうだが、あたかもたったひとつの「事実」があったかのように書く。いろいろな考え方ができるうちのひとつにすぎないという考えを提出してくれないと信用できないのである。でもそうするとレベルが高くなってむづかしくなるのだが。

 明治維新本を読みたくなったのはNHKで山内昌之が現在と幕末維新をくらべていたからだ。たしかに現在は首相がころころ変わったり、政治がいきづまった時代である。幕末維新に近いかもしれない。現代は維新に学べるだろうか。ブックオフで百円の維新本を見つけたが、これは参考にならなかったというしかない。

 わたしは明治維新をよく知らないし、漠然としたイメージしかもっていない。龍馬とかのドラマをやっていても興味がないので見ない。英雄史観や歴史人物ドラマはどうも好みではない。抽象的な法則のようなものを好んで、個別的な人物・歴史に興味をもてないのだ。わたしは歴史は経済史や産業史あるいは民衆史からでないと興味をもてないようだ。人物が歴史を動かしたなどとウソっぱちだと思っている。

 明治維新がおこったのは1868年であり、つまりおおよそ140年前である。おおむかしととらえるか、そんなむかしではないと考えるか。わたしは1967年生まれだから江戸最後の年から百年後に生まれた。漱石が生まれた百年後だ。維新史は利害関係者の気がねなしに書けないということが官学アカデミスムの研究者にあったらしいからリアルな現代感は近くまでのこっていたのだろう。

 68年のこの本ではマルクス的な階級闘争とかプロレタリアートとかの史観が色濃くこめられていて、ひとつの歴史の枠組みをつくっていたのだと思う。それから今日の歴史はとうぜん明治政府、現政権に肩入れしなければならないわけで、江戸時代は暗黒に塗りつぶされなければならない。江戸時代は悪者にならないと現政権の正当化はおこなわれないのである。また西洋化の推進のためには歴史は土着的な後進性をもたなければならない。わたしたちが知る歴史というのは現代の価値観によってゆがめられた像を見ているにすぎないと知っておくべきだろう。

 幕末、新政権樹立後も民衆はさかんに一揆や打ちこわしをおこなっていた。もうほとんど暴動だらけの国であり、今日他国の暴動や内乱をみてとんでもない国だと思うのだが、日本もわずか百年前は内乱国家だったわけだ。今日のおとなしい市民からみて、人間の質が総入れ替えされたかと思うほど現代日本人はおとなしくなったものだ。地租改正や学校制度、兵役などで民衆の怒りが暴発していた。

 廃藩置県で藩主や大名は先をあらそうように天皇に土地と人民をかえしたそうだ。この権力者たちはなんだろうと思うが、江戸時代にも将軍が代わるごとに所領を返していたそうで、まあ返す先が将軍から天皇に代わったにすぎなかったのである。大名は転封によって先祖代々の土地からゆかりのない土地にうつしかえられることがあったので、すっかり牙抜きをされていたのだろう。

 まあ、この維新史から読みとりたかったことは現代にいかに生かせるかということだったが、残念ながらそういう読み方はほぼできなかった。堺屋太一なんか歴史から現代を読み解くという手法がとてもうまくて感嘆させられた覚えがあるが、そういう読み方を自力でおこなうにはどうしたらいいのだろう。本を読むということはその手法も身につけることがためになる読書というもので、わたしはそれを怠ってきたのだろう。問いはどのような方法でそれを身につけたのかということだったのだろう。



幕末維新に学ぶ現在歴史の使い方 (日経ビジネス人文庫 グリーン さ 3-6)明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)未完の明治維新 (ちくま新書)近代日本の国家構想―1871‐1936 (岩波現代文庫)

明治維新 (講談社学術文庫)志士と官僚 (講談社学術文庫)幕臣たちの明治維新 (講談社現代新書)幕末維新 消された歴史明治維新 (岩波現代文庫)

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