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06 26
2010

レイライン・死と再生

『ファラオと死者の書』 吉村 作治

ファラオと死者の書―古代エジプト人の死生観 (小学館ライブラリー)ファラオと死者の書―古代エジプト人の死生観 (小学館ライブラリー)
(1994/05)
吉村 作治

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 ふだんは気づかないが日本は太陽信仰がひじょうに色濃く残った国である。国旗は太陽そのまんまであるし、最高神も伊勢神宮の天照大神という太陽神だし、どこかのおばあちゃんが太陽に拝んでいる姿を見たこともある。

 神社や寺がなぜその場所に決まったのかという理由を探るとレイラインという太陽信仰の痕跡をたどることができる。わたしはなぜかこのナゾを追求することにハマっているのだが、おそらくは神や王の発生という原初にふれることができるからだろう。暦をつくったり、時間を支配することは王の権力の源泉であり、神へと近づく道でもあったのだろう。

 太陽信仰は日本だけではなく、古代文明のエジプトやマヤでも世界中で信仰されていたものだ。日本の太陽信仰は日本独自に発展したものだろうか、それともエジプトや西アジアに影響をうけたのだろうか。違いや同じものはどんなものだろうとエジプトの太陽信仰を知りたくてこの書を手にとった。

 タイトルは「死者の書」であるが、死者は太陽とひじょうに密接にからみあっている。なぜなら太陽も日に日に死に、あるいは一年に一回死ぬと思われていたから太陽が沈むところは死者の国であったのだ。人間が死ぬということは太陽の死ぬところに帰るのだ。

 古代エジプトの初期には死者は北極星のまわりに帰ると考えられていたそうだ。夜のあいだに星々や星座は沈んでしまうのだが、北極星だけはけっして見えなくなることはない。そこから「永遠に生きるもの」、「滅亡を知らないもの」とされ、死者の永世の世界だと思われるようになった。北極星信仰は妙見信仰などに今日ものこっており、由来をこのようなものだと知った。オシリス信仰はナイル川が氾濫する時期に重なるからだという。

 時代がうつるにつれ、死者の国は西方の地下にあると考えられるようになった。太陽は西に沈み、死者の国をとおって東方に再生すると思われたからである。大ピラミッドの脇には巨大な太陽の船が埋められていたが、このような船によって太陽は東方の再生の地にはこばれると考えていた。

 これは日本の古代でもおなじように考えられていて、飛鳥や大和では西方の二上山や高安山に太陽は沈み、そして朝に東方の三輪山や春日山で再生されると考えられていた。四天王寺では西方浄土といって夕日観想がさかんだったそうだ。エジプトの太陽信仰とまったく同じ世界観が信仰されていたのである。古代の日本人はエジプト人とまったく同じ太陽信仰をもっていたのである。

 これは伝播されたものだろうか。エジプトから直接つたえられたものだろうか。それとも日本独自に生み出されたものだろうか。あるいは中国や朝鮮を経由してつたわってきたものだろうか。いずれにせよこのような太陽信仰が世界中で信仰されていたということは世界的な文化伝播や文化交流があったと考えられ、今日のような狭い古代中国文化圏の日本という考えはそぐわなくなる。古代の世界ははるか大昔からつながっていたと考えることが妥当だろう。

 つぎの図は上が福岡の珍敷塚(めずらしづか)古墳の壁画で、下がエジプトのセン・ネジェム古墳の壁画である。太陽が夜のあいだ船ではこばれる図をあらわしたものだと思われるが、構図がそっくりなのである。6世紀ごろの古墳の絵がエジプトの絵とそっくりなのである。

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 蛇であるとかカラスであるとか日本の太陽信仰にひじょうに密接にあらわれるものたちが描かれている。日本の『古事記』では太陽の船はひじょうに早い船をつくれる木があったという記述にするかわっているが。

 太陽信仰は古代世界の共通性や文化一体化を物語っていると思うのだが、あまり太陽信仰の世界が注目されているようには思われない。近代科学は古代の後進性を標榜したいために古代のグローバル性とかいったものに目をふさぎたいのだろうか。古代人は原始人でないと困る人たちがどこかにいるのだろうか。

 ところでエジプト人って黒人ですよね。エジプト人が黒人であるというイメージがほぼないのだが、古代の先進文明をもっていた人たちが黒人であっては困る人たちがいるのだろうか。


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