HOME   >>  読書  >>  電子ブックによって自費出版がかんたんになる
06 16
2010

読書

電子ブックによって自費出版がかんたんになる



 iPadが発売されていろいろ騒がしいが、わたしはまだまだ買う気はない。まず48800円もの大金がないというのがいちばん。それにまだまだ新刊のすべてが出揃っているわけではないだろう。書店めぐりの楽しさも捨てられない。駅前の本屋は絶滅したが。紙本のように場所がかさばらない良さははやくほしい。

 電子ブック端末なんてただの読書ツールにすぎないから一万円とか五千円ほどに下がったら買うかもしれない。iPadってノートブックとなにが違うのかという問いに戻されそうだ。通信費って無料なのか。やっぱりプロバイダ料がかかって、パソコンネットと別途必要なのだろうか。

 電子ブックのインパクトで忘れてならないのは個人がかんたんに出版できるようになるということだ。いままで個人出版といえば高い金だけ貢がせて本屋にも並ばないというイメージもあったが、電子出版ならほぼブログなみの準備だけで出版できるようになる。元手がほとんどかからずに電子ストアに本を並べることができるのだ。

 ブログをそのまま電子ブックに移行することもかんたんだ。fc2ブログでは出版サービスというのがあって、ブログを紙出版するために出来ばえを見せるサービスがあるが、製本にする前の段階でもう出版できるわけだ。

 なんなら電子ストアでブログを売るという方法もあるだろう。著名人なら電子ストアでブログを開設すれば即収入が得られる。芸能人ブログなんて電子ストアにみな移行したほうがいいかもしれない。

 マンガなら同人誌とかも電子ストアにすぐ並べることができるだろう。アマチュアマンガ家や小説家をめざしている人もすぐに本を売ることができるだろう。出版社にもちこむとか新人賞に投稿するだとか、大掛かりな印刷・製本・流通のしくみがいっさい不要になるのだから、出版の敷居はいっきょに下がる。ブログの開設なみに電子出版はかんたんになるだろう。しろうとやアマチュアはすぐに出版界に本をのせることができるのだ。電子ブック革命とはそういう意味なのだ。

 ただしだれもがかんたんに出版できるからといって、ブログと同様にだれの本でも読まれるというわけではない。多くのブログはたくさんの読者もつかずに注目される人気ブログと歴然とした差がつけられる。ほとんど読者がつかないブログのようにだれも読まない本もたくさん出版されるかもしれない。

 重要になってくるのが商品としろうとレベルかを判別するしくみである。ジャンク本ばかりストアに並ぶのならストアも信用をなくすだろうし、読者も混乱の極みに立たされる。商品レベルかそうでないかの判別機能が切に求められるようになるのだろう。

 あるいは紙出版の敷居のままに電子出版も移行するのだろうか。紙出版の商業レベルのままに電子ストアは門戸は閉ざされるのだろうか。出版界が売れる本と売れない本を判別して本を出版したように、その厳しい選別機能は電子ストアでも残されるのだろうか。本の在庫などしょうしょうのデータ量を占めるにすぎないのだから決壊はおこりそうな気がするが。まあアマチュアが参入できやすいとしても、プロとアマの差は歴然とついてくるものなのだろうが。

 電子ブックは書店や取次ぎ卸などに恐れられているが、出版社もそうだろう。著名人なら出版社をとおさずにじかにストアに売ったほうが儲けのとりぶんが多くなる。なにも出版社にお金を払う必要はない。ミュージシャンなんかもレーベルをとおさずにじかにストアで配信しはじめている人もいるが、出版界でもとうぜんおこるだろう。

 出版社の役割とはなにかと問われることになる。出版社は売れる本や著者を判別したり、編集や印刷製本の指示をしたり、著者や本を読者にプロモートしたり、書店に営業していたりした。印刷、製本、流通の機能がごっそり必要なくなる。あとはプロモートであったり、判別の機能が重要になるのだろう。広告代理店や出版の代理店、あるいは芸能プロダクションに近いものになるのだろう。たぬきちさんの出版社の早期退職ブログが話題になったが、出版社は大きなスリムアップが必要になった未来にそなえているのだろう。

 ラジオやテレビがあらわれたとき、新聞や本はなくなるといわれたそうだが、新聞も本もなくなることはなかった。電波としてのメディアと紙流通のメディアはすみ分けがおこなわれた。電波は一方的だったし、新聞や本は自分のオンデマンドで読書が可能だったし、もちはこびもかんたんだった。電波メディアは本のような深い思索やひとつの長いテーマに没頭することを可能にもしなかった。電波の都合ばかり優先されて、こちらの都合が優先されることはなかった。本は長文の思索に適した最強のメディアだった。長所や欠点をおぎなうかたちでそれぞれのメディアは共存がおこなわれてきたのだ。

 電子ブックと紙本の共存、すみ分けはおこなわれるのだろうか。電子ブックによって本のモバイル性が奪われたのは痛いだろう。物量がかさばらなく、書棚も書庫もいらなくなった利点は紙本にとって大きな打撃だろう。自分が読んできた本をすべて持ち運びできるというのは革命的である。紙本で読んできた人はどれだけ本を捨てなければならなかったか、積み重ねた本のために見つけられない本や文章がどんなにあったことか。紙本の利点、メリットはなにが残るのだろう。

 電子ブックというのはデータや実体のない情報にしかすぎなくなる。電子ブックにとってこれは意外な欠点かもしれない。われわれは物体やモノとしての手ざわり、携帯性に愛着を抱くものだ。愛蔵版だ。電子ブックでは実体や手ざわりのあるものとして姿をずっとあらわさない。この欠点が効いてきそうに思う。

 わたしたちは実体のないデータに利便性を感じるだろうが、さいごには手ざわりのある、がっしりとした重みのある本に愛着や利便性もどこかに感じることだろう。手元に物体として残しておきたい本は愛蔵版として、紙の本としてのこってゆくかもしれない。データと物体のふたつの方向性ですみ分けはおこなわれてゆくのかもしれないな。


電子出版の流れ
 出版社を通さずiPadに電子書籍 作家の瀬名さんら  asahi.com(朝日新聞社)
 「本を書いてみませんか?」――ブログ感覚で電子書籍を作成・販売 ペパボ「パブー」 - ITmedia News

関連記事
Comment
Trackback
title>
Trackback URL
Comment form









管理者にだけ表示を許可する






google adsense
全ての記事を表示する
ブックガイド特集
月別アーカイヴ
プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

twitterはこちら→ueshinzz

FC2カウンター

Page Top