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06 16
2010

書評 歴史

『なぜ夢殿は八角形か』 宮崎 興二

なぜ夢殿は八角形か―数にこだわる日本史の謎 (ノン・ポシェット)なぜ夢殿は八角形か―数にこだわる日本史の謎 (ノン・ポシェット)
(1995/12)
宮崎 興二

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 不可思議でナゾの多い数やかたちの世界観や哲学を読み解いてゆく、あまりない本なので参考になることが多い。数には深い哲学や、想いをこめられた世界観や宗教に近い信仰があったんだなとわかる。

 わたしは「八咫(やた)からす」ってなにかとか、丸や四角の石を重ねた五輪塔とかなんだろうと思っていたので、そういう謎がこの本である程度解けた。

 数には宗教的信仰に近いものがこめられており、ツキや迷信のような想いがたくされていたんだなと知る。数に対する深い想いをもたないわたしには思いもしなかった世界観が数にこめられており、それが宗教や建築などにたくされていて、わたしたちの神秘感や不可思議感を増すのである。

 「八」という数字はわが国で最高位を占める数字のようで、八百万の神や江戸の八百八町、大阪の八百八橋、八重桜、八十神、八十国、八千代、八百屋とやたらと八が使われる。スサノオも頭と尾が八つある八伎のおろちを退治するし、神武天皇も八のつく曲玉、鏡、剣を手に東方へ遠征するのである。聖徳太子の堂も八角形が多い。すもうも「八卦よい」である。八紘一宇は宇宙のかたちであるし、宇宙には八極や八柱があるといわれる。もっと大きい数なら九や十があるのだが、わが国では八なのである。

 四角や三角の五輪塔はなにかというと、宇宙を構成する要素をあらわしているという。下から立方体の地輪、球の水輪、三角形の火輪、半球の風輪、宝珠形の空輪をつみかさねているらしい。エジプトで地水火風とそれらを統一する原理の五要素で宇宙はできていると考えられていたそうだが、プラトンの哲学を経由したかわからないがインドの倶舎論などの影響をうけて空海が考案したらしい。五輪塔って意味がわからないと思っていたが、宇宙の構成要素をあらわしたというが、だからといってなんになるのだろうとまたわからなくなった。

 五角形のしるしはダビデの星とかけっこう不気味でナゾの多いマークであるが、安部清明なんかはよく使っている。悪魔を退散させるしるしだったようで、ザルや竹かごは星型の五角形で編まれたから強力な魔よけの武器となると江戸の町などでも掲げられていたそうである。

 日本人は三の数字が大好きで、三種の神器とか三人寄れば文殊の知恵とか多用する。といっても幽霊の頭の四半とよばれる三角形の布もあるが。道教では赤い三角の山や岩が都の南に天国と交信するために必要と考えられていたようで、三角錐の山がもとめられたそうだ。三は三途の川がある。

 大きい数でいえば九という数字は最後で永遠で無限と考えられることが多く、ノストラダムスの予言など1999年だった。香港がイギリスに貸し出されたのはいつまでもという意味で99年間だった。キリストの弟子は12人だった。キリスト教で13は不吉な数字である。釈迦の弟子は10人だった。干支は12支であり、法事は干支がひとまわりした13回忌におこなわれる。

 まあ、数というのはありとあらゆる意味や印象がこめられ、それは運やツキのような言霊、呪術に近い意味合いももってくることになる。7はラッキーだといってパチンコなどでは777で大当たりだし、666はダミアンの悪魔のしるしだったし、自分だけのラッキーナンバーとか、数にこめる気もちはそれこそ数かぎなくあり、それは宗教や祈念だとか、呪術や呪いに近い怨念もこもることもあるのだろう。

 数には少ない文字であるからこそ無限の世界観や宇宙観がこめられ、そしてそれをはたから見ていると意味がわからなく不可思議でナゾめいているから、もっと神秘性やオカルティズムを秘めているように感じられてくる。つまりはジャーゴン(隠語)だ。隠語、ナゾであるからひきつけられ、神秘性が付される。数字にこめた暗号にひきつけられるから神秘性は秘められ、そして宗教的信仰心や魅惑というものは増してゆくものなのかもしれない。

 ナゾや不可思議さに人はひきつけられるものである。もっとナゾで、不可思議で、秘教めいたものであるほうがいい。人はその箱を開けたくて近寄ってくる。しまいにはその箱にはナゾがいくつもしまわれているから離れられなくなる。宗教や建築のこめられた数字というものにはそういうカラクリがあるのかもしれないと思った。

 数のナゾを探ることで宗教や歴史のナゾのいくつかがときほぐれるかもしれないと思わせる本であった。数字というのは宇宙であり、世界観であり、哲学であり、そしてわれわれの信念や願いなのかもしれない。世にあふれた数字には迷信や宗教心をいちばん多くのこしているのかもしれない。


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