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05 24
2010

国家と文明の優劣論

『古代ユダヤは日本で復活する』 宇野 正美

古代ユダヤは日本で復活する―剣山の封印が解かれ日本の時代が始まる古代ユダヤは日本で復活する―剣山の封印が解かれ日本の時代が始まる
(1994/11)
宇野 正美

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 電波。トンデモ。オカルトミステリー。想像力の蛇口が開きっぱなしで、思考の回線がブチ切れている。ブックオフの百円本だからまあいいけどね。古代にキリスト教が伝播していたかだけをさぐりたかったので、トンデモであることは百も承知だったけど。

 中東情勢とか聖書解釈とかけっこうまともなことをいっているのだが、後半の陰謀論、ハルマゲドンや終末思想的な預言になるといっきょに信頼は瓦解。前半の四国・剣山の契約の箱説も信憑性のかけらもなくして、なんの根拠もない話に思えてきた。ひとつも検証のないオカルト諸説の寄せ集めにしか思えなくなった。

 宇野正美という人は86年に『ユダヤが解ると世界が見えてくる』でベストセラーになったそうだ。97年くらいを境に新刊がなくなっているから、それまでの矢継ぎ早の出版ブームも去ってもうみんなあきれて読まなくなったのだろう。まともな調査能力や言語能力はあるのだが、どこからか地上をはなれて天空に飛翔するのがイヤになったのだろう。講演はいまでもさかんにお客がいるようだが。

 剣山にモーセの契約の箱が運び込まれたという説は根拠がひとつも示されない。これはほかの人も唱えているからそのまま紹介したのだろうが、根拠の柱も礎も紹介されないでただ似ているというだけでユダヤ人がやってきたかのようにいう。

 こういう人たちの心理というのは西洋への憧れやキリスト教への崇拝がもたらしたものだろう。憧れ、憧憬するものを身近に引き寄せたいために似たものを見つけると憧れの者が日本にきていたのだ、文化ではなくて人物そのものがきていたのだとなる。キリストが日本に来て死んだとか、失われた10支族が日本にきた、義経がチンギス・ハーンになったとかの話だ。西洋コンプレックス、キリスト教コンプレックスというものが見境なく称揚されるのだ。文化伝播にとめればいいものを熱狂と崇拝、そしてコンプレックスは人物まで来日させないと気がすまないようだ。それで「イタイ」系になるのだが。

 たしかにふしぎな説ものこるが。大嘗祭につかわれる「あら服(たえ)」という神具が徳島の木屋平村でつくられるというのはふしぎだし、『万葉集』で天香具山から見わたした景色に海原とかもめが詠われており、奈良からはぜったいに海は見えないのにおかしい。

やまとには群山あれど とりよろふ天乃香具山 登り立ち 国見をすれば 国原は 煙り立ち立つ 海原は かもめ立ち立つ うまし国ぞ やまとの国は



 四国と和歌山には吉野川や香具山など共通する地名がある。大和=四国説というのもうなってしまう。しかし四国の山奥にうしなわれたアークが運ばれるなんてぶっ飛びすぎだ。皇族が隠すために都を奈良にうつすなんて。話は飛ぶが、奈良に「平群(へぐり)というヘンな地名があるが、もしかして「ヘブル人」かなと思ってしまう。まあ古代ロマンはそういうミステリーが想像できるからおもしろいのだが。

 ユダヤ陰謀説は『タルムード』なんかにはひどい教えが書かれているから陰謀や世界征服のたぐいはささやかれやすいのかもしれないと思った。ユダヤ人以外は獣であり(まあたいがいの民族はそう考えた)、だましてもよい、ごまかしても正しいことだ、裏切り者は殺さなければならないと非情なことをいっている。

 ユダヤ総主教も財産を奪われるのなら子どもを商人にしてキリスト教の財産を奪えばいい、キリスト教に改宗させるのなら子どもを神父にそだて教会を破壊すればいい、などといったそうだから、ユダヤ人はけっこう怖いものを秘めているのはたしかかもしれない。キリストやマルティン・ルターなどはこのような腐敗したユダヤ教に反逆したのだろう。

 宗教的神秘性というものはいろいろなところに聖痕というものをさがしだす心性をつくりだすものだ。崇高なものを各地や各場所にさがす。邪馬台国はどこかという論争なんてそれに近いものがあるし、ノアの箱舟はアララト山のどこにあるかだとか、死海文書のナゾとかそれらの探求には深い神秘性を付与する。わたしもそういう探究にひっかかるし、そういう神秘性、荘厳性をひめた謎には深入りしやすい。

 そして崇高性、至高性の探求にはトンデモ世界へのドアが開けてくるのである。思考の脈絡は飛翔し、現実との接点は断ち切られてしまう。文化と人物の境界はなくなってしまい、溶解する。聖なるものへと近づきたい気もち、コンプレックスの解消がやがてキメラのような真実をつくりだしてしまう。聖なるもの、崇高なものは現実をゆがめてしまう。多くの人にとって迷惑や危険、嫌悪に思われるものであっても救われる人もいるのだろう。現実の平板さやツラさを忘れさせるものであったりするのだ。聖なるものの感情と人間はまだうまく距離をおけないのだろう。


聖なるものとはなにか
聖なるもの (岩波文庫)崇高とは何か (叢書・ウニベルシタス)聖と俗―宗教的なるものの本質について (叢書・ウニベルシタス)宗教生活の原初形態〈上〉 (岩波文庫)奇妙な論理〈1〉―だまされやすさの研究 (ハヤカワ文庫NF)

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捏造タルムード

>ユダヤ陰謀説は『タルムード』なんかにはひどい教え>が書かれているから陰謀や世界征服のたぐいはささや>かれやすいのかもしれないと思った。ユダヤ人以外は>獣であり(まあたいがいの民族はそう考えた)、だまし>てもよい、ごまかしても正しいことだ、裏切り者は殺>さなければならないと非情なことをいっている。

それは捏造タルムードです。本当のタルムードにはそんなことは書かれていません。西洋の反ユダヤ主義者たちがユダヤ人差別とユダヤ人陰謀説を正当化するために作り出したもので、歴史的にも捏造されていることは明らかになっています。ちょっと英語でネット検索してみれば、引用及び文献自体の捏造タルムード一覧表もあり、捏造した人間も、ある程度突き止められています。

日本では1980年代のプラザ合意による円高を背景として経済的なユダヤ人陰謀説がビジネス書などで大々的に取り上げられるようになりました。その時に海外の反ユダヤ文書を参考にした日本語著作が広まってしまったため、著名な財界人や経済専門家でも未だにそれが捏造であることを知らない人が多いのです。そのため、今でもビジネス誌などで捏造タルムードを下にした議論が行われたりするのです。日ユ同祖論がトンデモであることを看破できても捏造タルムードに騙されてしまうのは知的訓練の不足でしょう。

誤解され易いユダヤ人

ユダヤ人と言っても白人系と有色人種系・更に古代系と近代系・貧乏系と金持ち系・ユダヤ教信仰系とキリスト教改宗系・白人国家13支配家系などが有ります 宇野氏は飽く迄聖書を元に推論しているのであって参考にした聖書が本物かどうかでも違って来ます・日ユ同祖論は似た様な理論が世界中に有りまして英ユ同祖論やトルコにも有るらしい白人系ユダヤ人がどうして陰謀論で語られるのかと言うと金持ちが多いからです何故金持ちが多いかと言うと支配家系は皆王族貴族政治家実業家などで占められており起源は一般ではハザール国迄しか辿れません・更に遡るとバビロニア・シュメール迄辿り着きます金持ちに対する嫉妬心が数千年かかって陰謀論として確立したのではないでしょうか こうとも考えられます差別される側の正当性を世論を味方として取り込む為に聖書や史実を自分達に都合の良い様に書き換える WW2での虐殺数とかでも其の様な話が有ります 

平家とユダヤ



平家の真の姿は大国主によって歪められているのではないでしょうか。

http://outfromu.blog9.fc2.com

http://cloudbe13.blogspot.com/

大国主=地獄の存在が
瀬織津姫の振りをして
自分を増々確立し悪しき陰陽を根づかせようと企んでいる。

それは平家にとっては最も腹立たしいことであると思っています。
平家はユダヤであるからこそ
イシスの真の裏のない正義と真理の象徴として宮島を建設したのではないだろうか。
そこに裏も表だという陰陽をベースとした大国主が入り込み
法華経すら無惨に真理をはぎ取られ大国主の日蓮聖人によって
全く異質な真逆のものと化している。
加害者が被害者の振りをしてヒーローと化している日本。
歴史の上で加害者とよばれたのはじつは卑怯な大国主によって
嵌められた一族で被害者かもしれない。と思っています。
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