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05 12
2010

バイク・ツーリング

『山村を歩く』  岡田 喜秋

山村を歩く (河出文庫 708A)山村を歩く (河出文庫 708A)
(1981/10)
岡田 喜秋

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 単行本が1974年(昭和49)に出された古い本だが、なかなか興味ひかれる本だった。みんなが向かう旅の方向とちがった目を見つけようと「開発したり」、「フロンティア」たらんとした姿勢がおもしろかった。

 中仙道といえばみんな馬籠や妻籠ばかりいくが、ほかにもっといいところはあるはずだ、美ヶ原ばかりに目を向けるのではなく高ボッチ高原のほうがよいのではないか、阿武隈山地に目を向けられないのはなぜかといったみんなが向かうところと違うところを開発しようとする姿勢がよかった。旅する人は「他人が評価したものを後追いしすぎる、自分で発見する目がない」と嘆くのである。

 岡田喜秋という人は戦後JTBに入社、「旅」という雑誌の編集長をつとめ、戦後の旅ブームの先鞭をつけたそうだ。どうりで旅の開発者、フロンティアとしての探索記がおもしろいわけだ。旅のおもしろさ、よさを掘り下げたり、探り出したり、ぐいぐいと探索してゆくさまは、旅行会社の宣伝におさまらないおもしろさをもっている。商売ではないのである。

 わたしは旅の雑誌や旅の動向がまるでわからない。みんなが同じところに殺到する風景に嫌悪感を感じて旅は嫌いだった。老荘や隠遁思想にひかれてハイキングコースを歩くうちに山や山村の風景が好きになり、いまはバイクで山の中のよい景色や癒される山村などを探し回っている。観光客なんかほとんどこないし、人もほとんどいない広大で贅沢な空間が山間部にはひろがっているのである。

 風景や旅はこういう人がぜんぜんこないところを歩くからここちよいのではないのか。人から離れるのが旅ではないのか。観光という群集の方向はまちがっていると思う。まあ、人が名所と名づけた観光地をめぐるのはラクでみんなと同じであるという安心を与えてくれるかもしれないが、よさやすばらしさは自分で発見したり、創造することに楽しみを見いださないと観光地で通勤ラッシュと渋滞の不快さを味わうだけだ。みんなと同じでありたい人はそれが目的かもしれないが。人が目を向けないまばらな空間に快適さや快楽はあると考えたほうが広大な空間を独り占めできるのである。

 といっても国内の観光なんてそんな趣向はほとんど食い尽くされたのかもしれないが。人と違う方向をめざした人はもう海外に目を向ける時代になったのだろう。秘境探しや別天地探しといったものはもう終わってしまったのだろう。優越感や人と違う意識は国内観光では得られない時代になって、「ワタシは違う人」意識はもうバカにされるだけなんだろう。おかげで国内の山村は人がまったくこなくなって、ぎゃくにだれも人の来ない贅沢な空間になってわたし的にはラッキーであるが。

 岡本喜秋という人は国内観光がもりあがった戦後の競争の時代に人と違うまだ見ぬ桃源郷を探し回った人なのだろう。どうにか人と違う魅力あるところ、目のつけどころが違う名所はないかと探し回る競争の時代生きた人なんだと思う。ブームやトレンドの最前線を走った人だ。そういう世間のブームや流行というのはイナゴの大群のようにいっせいに人が集まり、いっせいに人が去り、あとは閑古鳥が鳴くだけという経緯をへるものである。世間やマスコミのブームというものにからみとられるのは悲劇や惨事というしかない。ハシゴを外されたり、みこしをつき落とされたり、噴水でつきあげられたあとみたいである。

 わたしの山間部ツーリングなんてそんな世間の競争意識から放っておかれたところにあるから快適さがあるのだと思う。だれも向かわないし、目も向けない山間部だから、人のいない快適さを享受できるのである。中高年にハイキングがブームだということだが、しずかなブームのほうがここちよさは長つづきするのだと思う。

 さてわたしはバイクで山間ツーリングを楽しみにするものだが、どこにいけばいいんだろう、どんな風景を求めているのだろうか、快適な空間をめぐる効率的な方法はないのかといろいろ迷うのだが、そのためにこの山村を歩くという本を手にとった。山村になにを求めているのだろう。山に登りはじめたころは古代史や民俗学、原始宗教などに興味をひかれた。山にはそういう古い時代を感じさせるものがのこっているのである。

 岡田喜秋という人は山村の住人に土砂によって流された村や地震によって一晩で湖になった村の話など興味深いエピソードなどを聞き出している。だいたいは信州の話がおおくて大阪のわたしにはピンとこない土地の話もおおいのだが、昭和のはじめに香落渓や曽爾村がブームになった話や美ヶ原はツーリングでいったから昭和のはじめになって知られたという話など興味をひかれた。その土地を知っていたらすこし前の歴史やブームなどが聞けて興味満載の話になっていることだろう。いろいろエピソードをひきたいのだが、長くなるのでやめておこう。

 わたしはバイクで山村のツーリングに出かけるが、どういうところに目を向ければいいのだろう、なにをひきだせばいいのだろうかといったことをこのような本に学びたいと思ったのである。山村や農村の楽しみ方を教えてくれる本はあまりないのである。


日本のふるさと、原風景志向なのかな。
美しき村へ―日本の原風景に出会う旅 (淡交ムック―ゆうシリーズ)美しい日本のむら―心に響くふるさとの景観里山のおくりもの ― 日本の原風景美しい日本のふるさと 近畿・北陸編

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うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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