一家に一冊のおすすめの心理学書、厳選5冊
むかし一家に一冊といわれた『家庭の医学』という本があった。医学の本が常備しておく必要があったように心の悩みや問題を解決する心理学書も一家に一冊あったほうがいいだろう。もしこんな本が家庭に一冊さえあれば、無益で苦しい心の悩みを抱えこまずにすむだろう。
心理学書は山のようにあまた出ているが、この五冊さえあればほかはいらないといえるほどの本5冊を厳選した。
おちこんだり、かなしみにくれたり、悩みにおしつぶされそうになったとき、うつな気分から抜け出せないとき、きっとこの5冊は役に立ってくれるだろう。心の処方箋というのはだれもが必要と思われるのにあまり人からつたえられたり、教えられたりすることは少ない。からだのケガや病気のように目に見えないものだからかもしれないが、心の処方箋は家庭の医学以上に求められる本だと思うのだが。
積極的考え方の力―ポジティブ思考が人生を変える ノーマン・ヴィンセント・ピール ダイヤモンド社 2003-08 by G-Tools |
この本は1952年にアメリカで発売され、世界41ヶ国に翻訳され、2000万部のベストセラーとなった。楽観的や前向き、幸福になれる言葉や方法が山のようにつまった本で、わたしも落ち込みから抜け出せないと思ったとき、ぱらぱらと読み返すことの多い本である。考え方や言葉が気持ちや感情をつくるとさいきん心理学でもいわれるようになったが、この本はそのような効用を最大限ひきだしてくれる本である。ほんとうに慰められるし、明るさや前向きさをひっぱりだしてくれる本である、とくに落ち込んだときなんか効果抜群である。なんども読み返す魅力をもった本である。
道は開ける 新装版 創元社 1999-10 カール・カーネギー by G-Tools |
カーネギーのこの本は定番中の定番といわれる本だが、ほんとにいわれるだけの価値がある本である。悩みの解決法がこれほど明確に明晰に語られた本はない。悩みの百科全書であり、悩みの辞書である。豊富な実際例や事実がたくさんのべられているので説得力がかなり強い。しかし個別例が多いためにあとで読み返すときに要点や重要な箇所だけをひきだすにはちょっと適してないと思えるところが残念であるが。はじめて読んだとき、悩みや問題はこんな方法ややり方でかんたんに解決したり追い出したりできるのかと驚いた。悩みや問題におぼれるままにまかせて、手を打てない状態がふつうで、いかんともしえないものだと思っていたからだ。そもそもそんな解決策や方法のような知識がつたえられているなんてことも知らなかった。悩みを解決する戦略をもつか否かで人生は大きく変わるものだと思う。
リチャード・カールソンの楽天主義セラピー Richard Carlson 春秋社 1998-12 リチャード・カールソン by G-Tools |
「思考を捨てる」という方法を知っているだろうか。悩みや落ち込みがあったとき、ただ思考や考えることをやめればいいという方法をおこなったことがあるだろうか。人は悩みや問題を解決しようとしてもっと考えることになるのではないだろうか。この本ではその方法が最悪で、もっと泥沼の状態におちいることを教えてくれる発見の書である。悩んだときの思考はもっと問題を大きくし、感情を最悪なものにし、悲惨さを創作するのである。わたしはたいそうこの本に頭をがつんとやられて、いまでもおすすめ本のNO.1に押している。思考というのは火に薪をくべるようなもので、悩みや問題はもっと燃えるのである。同時にこの本は思考や心が虚構や存在しないものであるということも教えてくれた。これは古来から禅や仏教がいってきたことで、この本のおかげではじめて禅や仏教のいってきたことが理解できるようになった。ただこの本のように論理的に明晰に説明してくれる本はほかにないだろう。大絶賛の本であるが、この本は絶版になっているし、コラム的な『小さいことにくよくよするな!』という本がベストセラーになった。世の中わからない。
人生がうまくいく、とっておきの考え方―自分を信じるだけで、いいことがどんどん起こる! (PHP文庫) ジェリー・ミンチントン PHP研究所 2006-03 by G-Tools |
恐るべし書である。わたしたちはなぜ自尊心をもてないのか、劣等感とはなにか、なぜ自分の悩みや問題を過大視してしまうのか、自分の恥部がさらけ出されたような気がする本である。わたしたちは自分の問題や悩みを特別視してしまうものだが、かくも同じようなパターンに人がはまってしまうのかと驚いた。人の秘密や隠し事なんてほとんど同じようなもので、自分が思うほどたいそうなものではないのだ。だいたい人は自分の特別視というワナにひっかかっているのだ。そして自分の悩みや特徴は特別で深刻なもので、隠したいものだと思い込む。みんな同じパターンの失敗に落ち込むのだ。劣等感や悩みが強い人にはこの書に自分の恥ずかしい姿がされけ出されていることを発見し、人と違わないことを知るだろう。よくもここまで解剖学的に見せてくれる本だと思う。そういう点で恐るべき本だと思うのである。
キリストにならいて (岩波文庫) トマス・ア・ケンピス 岩波書店 1960-01 by G-Tools |
世界のベストセラーが『聖書』だとするとその次に読まれた本が本書だといわれている。キリスト教の本であるが内容はこんにちの自己啓発書と同じような内容が書かれており、あまりにも宗教的な箇所は読み捨てれば、じゅうぶんに一般的で世俗的な処世術、心の持ち方が説かれている。いつの時代も同じ心の持ち方、人とのかかわりが必要なのだと教えてくれる。けっきょく、人は人とのかかわりでいちばんダメージや苦痛をひきおこしてしまうので人に頼るな、人に心の平安や喜びをゆだねるなといっているのだろう。神に頼る、ゆだねるということはこの世の苦痛や苦悩をほうり投げるひとつの方便、優れた方法だと思う。そういう仮想をつくれば、悩みの解決がよういに達しやすくなる。論理的な悩みの解決法に神は編み出されたと考えることもできる。悩みや問題の解決にひじょうに役立つ究極の方法を考え出したといえるだろう。キリスト教の書物だといって遠ざけると大損である。