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04 02
2010

知識論

『使う力』 御立尚資


使う力 知識とスキルを結果につなげる (PHPビジネス新書)
御立尚資

使う力 知識とスキルを結果につなげる (PHPビジネス新書)


 知識を使う力はほんとうにたいせつだと思う。本を読んで知識を得たり、学校で勉強したり、資格で知識をえてもじっさいに使う段となったらまったく呆然となるしかない体験をしたことはないだろうか。知識と使うこと、実践のあいだには深くて大きいミゾがある。知識はたいがいのばあい、実践やじっさいに使うことをまったく想定されないことばかり教えているのではないかと思う。

 知識は知識としてのひとつの完成形をめざしていて、使うことを目的外においていることが多いように感じられる。知識オタクの方向性だ。知識は知識のみの完成や精巧さをめざしていて、実践や使用法が考慮の外になる。そもそも実践などハナから想定していない知識もあり、それはそれで価値のあるものであるが――人びとの認識を変えるということは世界や行動のあり方を変えることにつながるものだからだが、ビジネスや行動の社会においてはそんなものはなんの価値もない。行動の結果や成果がなによりも大切だからだ。知識のみの自己完結をめざせば、知識オタクと批判される世界だ。

 わたしは知識のみを追い求めることに価値をおいてきたので、行動や実践の価値をほとんどおいてこなかった。知識の愛好家にはこういうタイプが多いのだろうが、たとえば資格の取得はそれをじっさいに使いこなせなければなんの価値もない。資格オタクや取得のみが目的になる人はこの知識オタクの陥穽にはまってしまうわけだ。ビジネスの勉強ブームもへたしたら、このような知識オタクの方向性で終わっている可能性もある。ビジネスの勉強は実践や行動の結果に結びつけなければなんの価値もない。しかし知識と行動のあいだには深くて越えられないミゾがあるのだ。人はブームの経営知識を学んでなにひとつ実践に生かせないとしても満足してしまうようなところがあるのだろう。知識には知識の達成感や充足があるからだ。

 この実践を志向した知識とはどのようなものだろうか。たとえばケース・スタディを何十問もやりとおすことで身につくものだろうか。使う段を想定しての勉強法というのは自分でできるものだろうか。実践にほどとおい知識としてもそれをじっさいの場に使うような技術はどうしたら身につくだろうか。完成した知識や知を目的とした知をじっさいや実践の場に使うことはできるだろうか。

 知識を使う力にはさまざまな疑問やナゾがうずまいており、この本になんらかの積年の疑問の解をもとめたのだが、わたしの問いや追究があまりにもばくぜんとしているようで、どうこの本から解をえられたような気はしない。なんだかすれちがった解をあたえられたようで、どちらかといえば「使う力」についてのべられた本というよりか、一種の勉強本にしか思えなかった。私の学習法はこういうものだと説明されたような本だったと思う。もちろんわたしの読解力が追いついていない部分もおおくあったが、知識と使う力の深くて越えられないミゾを説明された本のようには思えなかった。そもそもわたしの問い自身が明確ではないという部分もあったと思うが。

 使う力として、ロジカル・シンキングや図解の技術、モデル構築、定量化、グラフ発想、クリエイティヴ・シンキングなどが説明されてゆく。またファシリテーションやプレゼンテーション、コーチングなどが説明されてゆく。わたしは使う力とはなんだろうかというさいしょの疑問が頭から離れないので、こういうことを知りたいのかという逡巡をくりかえすばかりだ。「なぜ知識は使いものにならないか」というさいしょの疑問から離れられないのだろう。もやもや感があり、距離をおいた見方がどうしてもできない。わたしはビジネス書ではなくて、これについての哲学書を読みたかったのだろう。あいかわらず非-実践のわたしである。なんだかこの本の内容にふみこんだ書評が書けなくなってしまったが、わたしはさいしょの問いにまだふみとどまっているのである。


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