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02 13
2010

書評 ビジネス書

『どこの会社でも通用する、ポータブル・スキルを身につけろ !』 吉井亮介


どこの会社でも通用する、ポータブル・スキルを身につけろ !
吉井亮介

どこの会社でも通用する、ポータブル・スキルを身につけろ!


 ポータブル・スキルというからには明日からハローワークで役立つようなスキルのことを期待したのだが、この本ではもっと抽象的であいまいな能力がとりあげられていて、ほとんど役に立たない気がした。

 勉強力、行動力、気配り力、発想力、問題解決力、自分ブランド力といった抽象的なものがとりあげられていて、いますぐ実践できて明日からスキルとして活用できる能力を語っているわけではぜんぜんなくて、私的にはほとんど役に立たなかった。ポータブル・スキルってこんなに抽象的なものなのか。

 著者には悪いが、みずから「成長の専門家」とよぶような身につくなにかを教えているように思えないし、セミナーでは即効性があると書かれているが、私にはなんの益も即日性もない思いをぬぐいえない。なにかのスキルや基礎、または職歴の積み重ねがある人にはなにがしかの貢献をあたえるかもしれないが、スキルの積み重ねがないと思う人には雲をつかむような話にしか思えないのではないかと思う。×である。

 転職でいつも壁に思うのは、ほかの業種や職種にうつろうと思ってもかならず経験者や即戦力がもとめられることだ。転職するからには新天地やまるでちがう業種につきたい。それなのに経験ありや即戦力しかもとめられない。しかたなく自分がいままで経験してきた職種の延長線でしか仕事をみつけられない。自分の業界、職種に見切りをつけたいのにそれを許してくれない世間や企業はなんて料簡がせまいのかと思う。新しい業種、職種で働きたいと思っているのに。だから私にとってのポータブル・スキルというのは新しい業種や職種に飛び込むために役立つ技能や能力でなければならない。

 派遣切りで路頭に迷った人に世間は介護職や林業、農業などをすすめた。おもに製造業をやってきた人はほかの職種の知識や経験をもっていないし、ふつう世間は経験やキャリアある人をもとめるものである。未経験者お断りだ。人が他業種にうつるのはかんたんではない。世間ではかんたんにほかの仕事をすすめるが、企業というのはそれを許してくれないのである。だいいち、本人も経験のない職種に自信もないし、適性もわからない。

 衰退業界や衰退業種というのはかならずあらわれ、ほかの業種に移らなければならない人はたくさんいる。むかしには炭鉱業界や繊維業の衰退があったし、建築土木なんてものも公共事業のストップなどで職にあぶれる人が大量にふえているだろうし、製造業も衰微のきざしをみせている。それなのに企業は経験者のみをもとめる。市場主義者は解雇しやすいしくみをつくったら新しい産業に労働者がうつりやすくなるとなるほどらしい説明をするのだが、ある職業にそまった労働者がほかの業界にうつるのはよういではない。とくにブルーカラーからホワイトカラーの移動はよういではない。サービス業すらコミニュケーション能力でむづかしいだろう。どうしたら他業界にうつりやすいしくみができるのだろう。

 このギャップを埋めるものがポータブル・スキルというものではないのか。ある職種の門戸をたたくさい外部の人間が身につけられる技能もポータブル・スキルといえないだろうか。私がポータブル・スキルに期待するものはそのようなものであって、抽象的な成長論ではない。ゼロから出発できるものをポータブル・スキルに期待しているのである。

 そのあいだを埋めるものに資格があったり、職業訓練校や技能スクールといったものがあるのだろう。しかし資格というものも資格があっても経験がなければ使い物にならないと袖にされるのがオチだし、職業訓練校は期間と生活資金は必要だし、技術は陳腐化している可能性もあるし、しょせん学校で習った知識は経験者レベル、熟練者レベルにはたっしない。職業から職業の橋渡しはとても充実しているとはいえないのである。だからポータブル・スキルというものに期待するのだが、これを本に期待してもムリというものか。

 ある職種のマニュアルや技能書というものがあって、それが本で学べたらいいと思う。会社に入って実地に仕事をしなければ学べないといった閉ざされた知と技能だけではなく、外部の人間が文書とマニュアルのようなもので学べたらいいと思う。この仕事はどのようなもので、どうやっておこなわれ、作業が遂行されるのか、そのような仕様書だ。クルマやバイクの技能書のようなものを仕事にもつくれないものか。こういうものがポータブル・スキルというべきで――仕事の知識が個人個人の人にあるだけではなくて、仕事の知識のプールや共有化がふくまれるものがあってもいいと思う。

 仕事の知や技能が閉鎖的で門外不出であったのなら、私たちはよういに転職できないし、経験者のカベはぶあつく立ちはだかる。私たちがポータブル・スキルを身につけてそなえるより、ポータブル・スキルが知識として共有されるものであったほうがいいのではないかと思う。資格はそれにちかいが、資格は行動や実践の知識というよりか、知識のための知識であって仕事や業務をこなすための実地的な知識にはほどとおい。仕事をするための知識ではないのである。学校の知識もそういうものになりやすく、仕事とのつながりや接点がみつけられないものである。

 ポータブル・スキルというのは個人の体験のあつみから生まれるものより、仕事の共有化・プール化によって外部の人間もよういにアクセスでき、習得できる仕事のマニュアル書のようなものであってほしいと私は夢想したりするのだ。


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仕事の標準化

実はわたしも12、3歳になったころから「厳しい世の中のどこにいっても通用する知識・スキルを身につけられたら」と友人と話しあってきました。
しかし、じゃあ具体的にはどうすればよいのか分からず、途方にくれるばかりでした。
そうしてアノミーというか、そうしたことは考えてもしようがないと思い、いつしか忘れていきました。
二十歳になるころにそれを思い起こしても、無力にして何もできなかったですね。

実際には各企業・部署で仕事のやり方の標準化がもう少し徹底しなければ、
どこでも役に立つ資格もテクニックも何もなく、ただ学歴(と家柄)くらいしか就職に役に立たないとしか言いようがありません。
そのためにも本田由紀さんもおっしゃるように、仕事と学校教育を専門化したり、仕事に関する情報を透明化する必要があるのでしょう。
ただしそれは職場の多様性を損なうことになるし、国内向けであって国際向けではありません。
その短所も理解しつつ、仕事と訓練の標準化を今はすすめなければならないのでしょう。
会社ごと、同じ会社でも部署ごとに仕事のやり方が違うことによる困惑やコストが、日本の場合かなりありますから。

ワタリさん、こんにちは。

わたしもいまだに知識やスキルをどうやって身につけたらいいか呆然とするばかりです。

専門技術を学んでも袋小路になる恐れもありますし、一般的なスキルといってもなにが役立つのかわかりません。

専門的なカベがいつも立ちはだかっている気がします。

いっぽう、企業のほうも年齢や経験の積み重ねでカベがどんどんあつくなっていますから、新参者には入っていけない壁がどんどん高くなってしまいます。

日本で転職が有利に働かない原因は年功序列にあると思われますが、年下の上司につかえるのがいやだという気持ちはだいぶ強いのでしょうね。一からはじめれば、権力や利権もぜんぶ前任者の手中にありますから、冷や飯をずっと食わなければなりませんしね。

年功賃金カーブがフラットなかたちに近づいたとき、仕事の標準化や透明化はもっと必要となってくるのでしょう。

私は人に教えてもらうより、本を読んだり自分で学んだりするほうが合っていますから、そういう知識の充実を願いたいところです。


ところでワタリさんはいまミクシィで書くことが多いのですか。
ブログのほうはログインできなくてずっと見れません。
オープンな環境でワタリさんの文章を読みたいところですが。
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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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