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01 23
2010

書評 経済

『日本力』 伊藤洋一


日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化! (講談社プラスアルファ文庫)
伊藤洋一

日本力 アジアを引っぱる経済・欧米が憧れる文化! (講談社プラスアルファ文庫)


 日本力というよりか、日本を追い越しそうな国の実情を追ったレポートである。中国の驚異的な成長力、追い上げる韓国、インドの勃興などを見ているとたしかに落ち目一方の日本は近々追い越されても仕方がないと思える。GDPは四十年近く日本が世界第二位の地位を保ってきたが、13億人の中国に15年ほどで追い抜かれるだろう。

 この本ではこれらの国々がまだまだ日本を追い越せない事情を探っていくが、こういう脅威の感じ方は疑問に思える。過去の栄光のモノサシ、とらえ方の枠組みで比較する必要などないのだ。私たちはGDP主義のひずみや達成の幻滅感などを知っているはずなので、だからこそ閉塞感を感じているので、ほかの目標やモノサシをもつべきなのだ。勃興する製造業、工業国と同じ土俵に立つ必要などないし、あいかわらず過去の日本にしがみつくことは時代のよどみにとどまるだけだ。この問題意識に立脚するリポートはまるで高度成長期時代に思考停止しているようで、私には?に思えた。

 「ジャパン・ペシミズム」に異議をとらえる点はたしかにと思える。失われた十年などと悲観論にそまっていれば、ほんとうに社会や経済はそのまま落ち目に墜落する。競争力が段階的に落ちた日本はその一方でマンガやアニメ、ポップカルチャーなどで世界へのプレゼンス力を強めたのだ。「ジャパン・イズ・クール」だ。日本にいれば他国の憧れは見えないが、そういう文化の地位にいる自信を忘れてはならないだろう。新たな文化の段階にたっし、その強みを強める方向に進むべきだ。

 中国は驚異的な成長力をのばしつづけているが、著者は先進国にはまだまだ遠いと見る。中国の土地は公有か、集団所有のままだ。資産であるはずの土地がこのようであれば資本主義の根本である私有権すらないことになる。五十年、七十年の定期借地権で売っている。また社会主義体制の正当性の欠如も問題になるだろう。暴動も各地で多発し、社会保障はほぼないに等しいし、農村部から沿海部に出てきた人たちに戸籍はなく、子どもはそのために小学校すら入れないし、一人っ子政策のために急速に高齢化する。走り出したばかりの国で、過去のしがらみを足にいっぱいからみつけたままどこでつまづくか危うい未成熟の国なのだ。

 韓国はサムスン一社だけがガリバーのように稼ぐ出すだけで、早くも製造業の労働者数は減りつづけている。日本は産業の裾野が広い。インドは勃興しはじめたが、文盲率も高く、壮絶な貧困も共存しているし、カーストも根強く残っている。ただし民主主義国家である。

 1990年代から世界は変わり、競争力をつけたのは小回りの効くフィンランド、ノルウェー、スウェーデンなどである。日本は一億をこす大国で、一億をこす人口は世界に十ヶ国ほどしかない。アメリカや中国、カナダ、インドなどだ。機敏に世界の変化のスピードについていけなかったのだろう。

 これから日本は「活力の維持と拡大」を求めなければならない。経済活動の意欲、創作活動の意欲を刺激しなければならない。強いセクターが国を豊かにする。公共部門は富を生み出さなく、生み出すのは民間だけだ。知恵を出して需要をつくりだせないと生き残れない。安定や安泰をもとめるだけの社会から創造や創意工夫は生まれないのである。日本の閉塞感は国民のそういう安定志向にあるのだろう。

 日本は世界に憧れられる文化発信国になっていかなければらないのだろう。京都とか飛騨高山とかの名所では観光を売ってぴりっとしたたたずまいをしているが、そういう精神が必要なのだろう。自国ではたいした人間ではないと思っていても世界からは金持ちや貴族のように思われているのかもしれない。日本人がむかしアメリカ人をすべて俳優のようにカッコいいとカンチガイしたように。世界からもとめられている日本人像は豊かで平和な文化人かもしれない。


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