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01 15
2010

書評 経済

『この国を作り変えよう』 冨山和彦 松本大 


この国を作り変えよう 日本を再生させる10の提言 (講談社BIZ)
冨山和彦 松本大

この国を作り変えよう 日本を再生させる10の提言 (講談社BIZ)


 どんな人たちなのかよくわからないが、前向きな提言がありそうなので読む。ふたりとも東大法学部を出て本人の言いわくエリートコースを脱落して外資系の投資銀行、外資系コンサルティング会社をへてげんざいは経営者となっているらしい。政府のブレーンなどをやっている若手なのか。

 格差は反市場経済的な制度や規制によって発生するという説は目をひいた。ふつうは市場経済が格差を発生させるとなっているが、そのため規制や補助金を導入してぎゃくに格差がひろがるといっている。ふたつの違いを見極めて対処することが必要だということだ。

 日本を若返らせる10の提言がのべられているのだが、二十代の未来内閣や世代別選挙制度の提言などなるほどと思う。たしかにこの国は高齢者や中高年が権力や既得権益をにぎってしまって若者は搾取されたり損な役回りばかり押しつけられ、あたらしく変わることも夢を描くこともできない。若者にとってはつまらない世の中になってしまったものだ。ただ世代間格差もあるのはたしかだろうが、時代の変わり目や変化によって後続世代が損をしていることもあって、世代だけでは割り切れないと思うのだが。

 中流階級は政府の所得分配制度によって生まれたのではなくて、高度成長の結果にすぎないのであって、この発想で日本をよみがえらせようとしても、分配するパイ自体がないのだからできないといっている。

 「自分たちは貧しくなっている」「日本は衰退国家だ」という生活実感を半数の人がもてば、時代の空気は変わるだろうという。まだこの国の人たちはバブル経済や高度成長、あるいは経済大国の夢うつつの中で暮らしているのかもしれない。いろんなものが崩れている、不調がつづいていると気づいていてもすべり坂や崩落の最中にいるということに感づかない人も多いのかもしれない。もう過去の栄光は二度と戻ってこないのだという深刻な診断をつきつけられる必要があるのだろう。

 年金の解散がつげられているのはなかなか小気味いいと思った。こんな破綻の心配に脅えたり泥沼状態の制度はいっそなくしてしまったほうがすっきりする。支払った保険料は全額返還だ。ツケを下の世代に押しつけるのではなく、積み立て型に変換せよということだ。私なんか年金という制度自体やめてしまえ、そうすれば人の生き方や人生のとらえ方も変わると思うのだが、まあ高齢になったら仕事がほんとうになくなるからムリなのだろう。いまなんか年金をもらうより生活保護のほうが高いというようになっているから、あきらかに失敗だ。

 正社員と非正社員の区別撤廃が提言されているが、どうしてこんな当たり前のことがこの国はできないのだろう。これはおかしすぎる。あるいは時代の変換期の滞留面でしかないのだろうか。年功正社員が可能であった時代とグローバル平準化賃金の時代環境の違いにすぎないのか。後者の時代環境に標準化した制度づくりがもとめられるのだろう。社会主義の時代と市場主義の時代が世代によって分かれてしまって、一国二制度みたいになっているのだ。企業が社会主義をやめてしまって、政府はその対応にすくなくとも二十年は遅れている。企業任せの社会保障をやめることが区別撤廃の礎になると思うのだが。

 私としてはなによりも食える社会にしてほしいということだ。職業に必要な教育をなんどもうけられて再転職がいくらでも可能な社会になってほしいと思う。カネをかせぐ技術、能力を徹底的に補強してもらわないとこの先食っていけない。しょぼい自分の足元しか見えない発想だが、自分にとってこの問題はなによりも緊急課題なのである。学校教育でメシが食えるようにならなかったから職業教育の充実を願う人はおおいのではないだろうか。


私の仕事術 (講談社+α文庫) 指一本の執念が勝負を決める 会社は頭から腐る―あなたの会社のよりよい未来のために「再生の修羅場からの提言」 グローバル・マインド 超一流の思考原理―日本人はなぜ正解のない問題に弱いのか 企業価値向上論講義 社長の器
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Comment

このふたりは売国奴。
規制を撤廃することが格差解消につながるなんて大嘘。
規制を撤廃し、その新たな利権をお仲間一派でおいしくいただこうっていう輩です。

正社員と非正社員の話は、一見、非正社員が差別されてる!といってますが、彼らがやろうとしてることは、非正社員の待遇の改善ではなく、
正社員の待遇を下げること。
流動性を確保w解雇しやすいようにしたりすることです。

テレビで、とくにWBSあたりでコメントしてる人たちは、アメリカよりで、
日本の国益、日本人の利益より、アメリカと、日本人の新富裕層(竹中たち)の利益を考えての発言です。気をつけてください。

こんにちは。

私は社会の閉塞感やつまらなさを感じてきたので、規制や既得権益を撤廃する方向はどちらかといえば賛成のほうになります。既得権益をつぶせば、天井につまっていた重石がぱっととれて青空がひろがるような気がします。

でもそういう規制撤廃の方向は格差社会やワーキングプアといった生活の奈落の底に落ちる人たちを増やしてきたのはたしかだと思います。企業や富裕層、あるいはアメリカだけが得な思いをして、人々はますます困窮の度合いをつよめただけなのかもしれません。

あるいはそれらはデフレや右肩下がり経済によってだけ生み出されたのであって、規制緩和や新自由主義で生み出されたのではないといえるかもしれません。私はたかだか官僚や政治家の鶴の一言で経済や世界の潮流が変わるとは思ってみません。人為や政治家の力がそんなに強いわけがありません。過信する人がおおいようですが、たぶん政治家あるいはマスコミのプロモーションがそう思わせてしまうのでしょう。

私は社会が変わってくれる方向に賛成なので、できれば既得権益を壊してほしいと思っています。でもそれは既得権益のあらたな増強にすぎないかもしれませんが、ともかく社会は変わってほしいと思います。
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