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10 25
2009

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柴田淳はなぜ暗い歌ばかり歌うのか



 柴田淳はバラードしか歌わないので、うるさいやかましい曲を聴きたくない私はBGMとして聞くことがおおい。美人でその美貌の魅力にひかれる要素も強いのだが、しっとりとしてなにひとつ跳ねない安定性がここちよいのだろう。

 あまりものすごくいい曲だ、感動した曲というのはすくないように感じられるのだが、こんかいのシングル『Love Letter』はサビにものすごくひかれるものがあったので紹介がてらに柴田淳について考えてみたい。

 柴田淳 『Love Letter』 YouKu

 サビの部分で「いつかあなたが死んでいっても 私なら大丈夫 ずっと前からひとりだった あなたを愛した時から」という歌詞がある。自分やあなたが死んでもあなたも自分も変わらないという愛の絶望的なペシミズムが胸をうつ。柴田淳にしてはかなり盛りあがるサビだし、愛し合ってどちらかが片方死んでもなにひとつ変わらないという悲観視はせつなさの極みとして人の心を打つことだろう。

Love Letter ゴーストライター


 柴田淳はバラードや悲しい、暗いトーンの歌しか歌わない。おおくの歌手は明るい曲や盛り上がる曲をたとえバラードが得意な歌手であっても何曲かもつものだが、柴田淳は徹底してスローテンポの歌しか歌わないのがいい。しずかにおちついて安定的に聴けるのがいいし、やかましい、狂騒的な曲に悩まされないのがいい。

 人は音楽に明るくなる曲を求めるか、悲しみを浄化してくれるような曲を求めるかは人それぞれだと思うが、根底的には悲しい曲に感動したいという面が強いように思う。多くの歌手は人の日常のように浮き沈みのある感情リズムどおり曲をつくるのだが、柴田淳は暗い、沈んだ感情にしか目を向けない。

 柴田淳は暗いのかというと、そういう暗い面にどこまでもつきすすむ自由や強さをもっていると思う。世間では暗さより明るさを強制されて、矯正されるものだが、暗さや悩みに価値や意味があるという主張や価値づけをおこなっているのが柴田淳だと思う。そういう意味で頑固で、強い面がある。もっとも美人だから暗くうじうじしていても相手にしてくれるという特権的見地があるのもたしかだが。

 柴田淳は暗いムードが快適であるという環境をもっているのだろう。世界にどこか絶望や悲観をもっているような中島みゆきのような暗さや怨恨のような感情はもってないように思う。鬼束ちひろのような狂気の淵をのぞきこんでいるわけでもない。あくまでも絶望でも悲観でもない、暗いムードが快適な、楽観や幸福が若干ふくまれるような世界観のように思われる。

 柴田淳は平凡で日常を彩る静けさやおちついたムード、悲しさをクローズ・アップしているのだろう。日常の中の暗さや悲しみであって、あくまでもその小市民的範疇から離れていないと思う。プローモーション・ビデオなんかじつに日常の室内や住宅街を背景にしたシーンが似合う。PVをプライベート・ビデオと読み違えそうだ。いがいに思えるのだが、柴田淳はほとんど英語の歌詞をつかわず、槙原敬之のような日本語歌詞だけの不自然さはほぼ目立たず、アメリカのカッコよさをもとめずに等身大で日本人の自分を語れる時代がきたのだと思う。

 それにしても柴田淳はどうして暗い面や暗い曲にしか目を向けなくなったのだろう。なにか過去や経験が人をそうするのだという原因を求めがちだが、この美人で風貌がよい女性をそういう環境に追い込んだ理由は考えにくいし、そういう環境がここちよい、暗いムードのほうが快適であるという性質が先行してあったのだと思う。明るく、狂騒的なムードより、おちついた、しっとりしたムードのほうが好みであるということだ。また音楽もコンサート会場でノリノリで聴くより、室内でしっとりと聴きたいという要望も強くなったのだろう。

 日本社会も明るくて、うるさくて、社交的な女性を好むというより、静かでおちついた女性のほうを好むというものだろう。やかましい女性を好む男性がおおいとは思われないし、暗さとはおちつきやおとなしさの一面であるわけだ。古くはコギャルとか女子高生ブームとかで女性のやかましさやうるささが扇情されてきた向きがあるが、そういうマスコミがつくりだす虚構の女性ブームにアンチをとなえる気持ちがあるのかもしれない。

 曲はほぼ恋愛ソングが大半で、本人は愛されていないと生きられないという恋愛依存体質のようである。私個人としては恋愛の感情にかなり冷めてしまい、他人がいないほうが自由で快適だという人間になってしまったので、柴田淳の恋愛依存とはかなり性質を異にする。私にとって柴田淳は恋愛の歌詞世界を聞くというより、暗い、おちついたムード・ミュージックとして聴いている要素が強いのかもしれない。社会派の要素はほぼなく、内省的な要素がすこしはそういう面に活かされてほしいと思うのだが(失敬。『未成年』は社会派だね)。

 恋愛至上主義と暗い曲はなにかのつながりがあるのだろうか。恋愛をもとめていながら、なにかペシミズム・悲観主義をもたらすような洞察があるのだろうか。完璧な恋愛や相愛が存在しないニヒリズム・懐疑主義やいくら愛してもすれ違いや孤独、むなしさを感じるがゆえに暗い、悲観的な曲が生み出されるのだろうか。恋愛をよいものと思っているのなら、もっと賞賛や喜び、うれしさを歌っていてもいいのだが、徹底的に暗い曲を歌うということはなにか恋愛の不足分を感じざるをえない認識があるのだろう。ドリカムのようにポジティヴにはならない。そのような感情をもたらすものはなんなのだろうか。

 自己啓発や禅仏教などの立場からすると、悩みや問題というのは無から自分が創り出している、創造していることになる。柴田淳は悩まなくてもいいこと、気にしなくてもいいことをわざわざ自分から手をつっこんで苦しみや悩みに落ち込んでいるという立場にも考えられる。悩みや幸薄のヒロイズムというものが彼女をそうさせるのだろうか。もしそのような感情や悩みがなかったら、曲が創作されなかったかもしれないといえるので、不幸にわざわざ入り込み、その解消として曲はつくられるのかもしれない。悩みや不幸のベクトルが彼女の創作を支えているのだろう。悩みと解消の文学のようなものだろう。

 柴田淳の音楽は万人にうけいれられたり、おおぜいの人に支持されるような一般性・普遍性とはすこし離れたとことにあると思う。チャートで大ヒットしたり、おおくの人にメジャーに聴かれるようなヒット・ソングを歌う歌手というより、私生活や私的感情を語った個人的なものだ。その個人的なものがいかに普遍や一般性を獲得するかが音楽のセールスやメジャー性にかかわってくると思うのだが、なにか彼女の音楽は普遍を獲得しなくてもいいという思いがあるように思われる。万人受けしなくていいという気持ちがありそうだ。音楽でも文学でも個人的なものからいかに普遍性を獲得するかが商品と個人的アマチュアリズムを分ける差であり、商業音楽は宿命的に普遍性を志向しなければならないわけだが、彼女の音楽はすれすれのところにありそうだ。

 柴田淳の音楽の特徴やゆえんを考えてみようと思ったが、音楽を考える、言葉にすることはむづかしく、概念にしぼりこむことは難渋をきわめる。考えがまとまっていないだけだが、自分で書いたことがはたして自分で思っていることと同じなのか、ちょっとおぼつかない文章になってしまった。ご了承のほどを。


YouTubeでシングルを視聴する (2015/8/31 リンク貼り直しました。『片想い』のPVからのファンなんですが、PVはだいぶ見れなくなっていますね。残念。リンク切れは必至なのでご了承を) 






















▼いまは見れなくなっています。

 柴田淳 それでも来た道

 柴田 淳  あなたとの日々

 柴田淳 - 未成年

 柴田淳 ちいさなぼくへ

 柴田淳 「白い世界

 柴田淳-紅蓮の月

 柴田淳 「HIROMI

 柴田淳 カラフル

 柴田淳-ふたり


  親愛なる君へ Single Collectionため息 オールトの雲ひとり わたし

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Comment

初めまして。
エリンと申します。

初めてコメントさせていただきます。

「ヒエラルキー」で検索してueshinさんのサイトに辿りつき拝見
させていただくようになってから数年が経ちました。

日々、興味の対象に知見を増やそうとするueshinさん
姿に尊敬の念のようなものを感じていました。

私も以前から「柴田淳」が気になっておりここ数週間ぐらいその気持ちが
盛り上がっている最中でした。

私が言葉(文章)に出来ないものをしていただいた気分です。

コメントすることは無いと思っていましたがご迷惑でなければ
これからも遊びこさせてください。

こんにちわ。

長くおつき合いしてくださっているようで、ありがとうございます。

本を読んで考えて、生き方や生活に有益で役に立つ知見や学びが身につけばいいのですが、なかなか賢明な知識をつみあげられていない気がします。もうすこし実用的な知識をえられるようにがんばりたいと思います。

柴田淳は暗い音楽が快適ですが、なんかなにを歌っているのか、どのようなことや気持ちを主題にしているのか、いまいち見極めにくい気がしていたもので、考えてみました。柴田淳はなぜ柴田淳なのかという理解の一助になればいいと思っています。

コメントはしにくいのでしたら、拍手ボタンでも大歓迎で、励みになりますので、ぽちっと押していただけると助かります。

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