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09 17
2009

知識論

『学者のウソ』 掛谷英紀


学者のウソ [ソフトバンク新書]
掛谷英紀

学者のウソ [ソフトバンク新書]


 なんか理系の著者が書いたものだからつまらないのかと思っていたが、時事問題のウソばかりとりあげているから、いまいち興味や関心がひかれなかったのだと後になって気づいた。

 学問というものは時事問題におぼれたり、ニュースのトピックばかり追うのは学問としては深いものではないと思ってしまう。世間や時事問題から離れて、脱俗、脱時代性に沈静するのが学問の王道だと思っているから、時事問題ばかり追うこの本は学問として深いものを追求しているように思えなかった。

 いつの時代も通用したり、底流を流れているものをつかまえるのが学問というものだと思う。時事問題から学者のウソを暴いたって、ニュースのウソを暴いているだけで学問のウソの本質を問題にしているように思えない。これは「学者のウソ」というよりか、「ニュースや時事問題にかかわる人のウソ」といったほうが近いのではないか。時事問題に踊っているようでは、あぶくや泡のように昨日今日に忘れられてしまうトピックとともに消えてゆくだけである。学問というのは時事問題の波間に踊ってはいけないのである。

 まあ、各論は鋭いし、切り込む論理はひじょうに説得性のあるものが多いのだが、私はぎゃくにそんなに厳しくいわなくてもいいじゃないかとか、人間の知能や行動、考えに完璧や完全を求めすぎているのではないかと思った。批判が鋭すぎたら、人間の知能や行動は完璧であるわけがないと思ってしまう。理系的な非情な厳しさを感じるとことも多々あり、知や行動の完璧さを想定しすぎているようにも感じられた。

 学者のウソというから、私は社会学や哲学方面からの切り込み方を期待していた。欲望であるとか、権力、権威の問題、支配や被支配、あるいは書物や学者の批判や洞察である。学問や書物の世界にひたれる批判本ではなく、時事批判である。この違和感はいかんともしがたかった。

 もうすこしこの本に書かれた内容を検討したかったのだが、労働者の時間がない身としてはこれで切り上げることにする。この本は時事問題と理系の本であって、私のような社会学、哲学方面を好む者にとってはいまいち満足を得られなかったということである。

 学者、学問批判の本といえば、つぎのような本がいいのかもしれない。

インテレクチュアルズ―知の巨人の実像に迫る (講談社学術文庫)フロイト先生のウソ (文春文庫)表象の植民地帝国―近代フランスと人文諸科学
「心の専門家」はいらない (新書y)脱学校の社会 (現代社会科学叢書)南島イデオロギーの発生―柳田国男と植民地主義 (岩波現代文庫)


議論のウソ (講談社現代新書) 論より詭弁 反論理的思考のすすめ (光文社新書) メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学 (光文社新書) ニュースの読み方使い方 (新潮文庫) 論争と「詭弁」―レトリックのための弁明 (丸善ライブラリー)
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