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08 23
2009

書評 経済

『世界でいちばんやる気がないのは日本人』 可兒 鈴一郎


世界でいちばんやる気がないのは日本人――成果主義が破壊した「ジャパン・アズ・No.1」 (講談社プラスアルファ新書)
可兒 鈴一郎

世界でいちばんやる気がないのは日本人――成果主義が破壊した「ジャパン・アズ・No.1」 (講談社プラスアルファ新書)


 日本人は仕事にたいして「ひじょうに意欲的」と答えたのはたったの2パーセント。「意欲的ではない」は41パーセントでインドについで高い。国際競争力も1991年、1992年の1位から2002年に30位に落ち、2007年には中国に抜かれている。もっともGDPはアメリカにつぐ2位であるが。

 この本では成果主義の失敗や北欧とのビジネススタイルなどが紹介されているのだが、日本人がやる気をなくしたのは、圧倒的に会社や組織の力が強すぎ、個人がなにをやってもムダだという気分の蔓延や、組織や社会にまかせていたらいいようにしてくれるだろうという依存心やあきらめだろう。

 自由がなく、個人に自分の人生を選べる、好きなように生きられるといったことや、会社や社会を変えられるという気持ちをもてないと、やる気や自主独立の精神をもてない。日本人は組織や国につぶされたという気がする。成果主義や北欧うんぬんという前に、日本人は組織に殺されてしまったのである。

 右肩下がりの時代に突入してやる気を出させるために市場主義が導入されたが、けっきょくは格差や非正規の悲劇によって日本人の怒りと反発をまねいただけに終わり、組織の温存と強大化はのこり、個人はますます萎縮し、日本人のやる気や気概を削いでしまった。組織やシステムが強すぎて、個人の自由や自主独立の精神が尊重されないと、日本はますます組織の「死にいたる病」におちいってゆく気がする。

 日本人は自分で選んだという実感がほとんどなく、組織やシステムの中で自己決定をしないことが大原則になっている。これでは会社や国におまかせで、自分には責任がなく、悪くなったのは会社や政治家のせいにされるだけだ。組織や国は選択を奪い、個人もおまかせだけだから、けっきょく社会の主体ややる気も生まれてこない。そして日本は死んでゆくのである。

 そう考えると非正規切りの悲劇も日本人にはいい薬に写ったかもしれない。会社も国も守ってくれないのだ。自分で自分の人生を生なければならないのだという覚悟と自覚を生んだかもしれない。それでもそこに生まれたのは国への社会保障の充実の要望と、やっぱり安定した組織への依存心だけかもしれない。個人の自由と自主独立をバックアップできる社会にならないと、大きな船は沈んでゆくばかりな気がする。社会保障信仰や組織のおまかせ依存心が日本人をますますつぶしているように思える。

 この本では管理職は部下に命令や指示を高圧的に出す製造業的なスタイルではなくて、タレントの自由や自主を尊重するマネージャーのようにならなけらばならないといっている。管理職というのは偉そうにふんぞりかえるのではなく、部下のやる気をひきだすフォロワーのようにならなければならないというのである。これは社会や国ぜんたいにもいえることだと思う。

 国や会社が決めて個人は選択を奪われる社会主義的、国営的な組織からいかに個人の自由や自主性をひきだせる体制をつくれるか、そういう時代の変わり目にきているのだろう。しかし組織や保障から放り出され、さあたいへんだ、やっぱり組織や国に駆け込むしかないと脅えさせるようではまた失敗だ。おまかせ社会主義からいかに乳離れできるかが日本の課題だという気がする。



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