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02 06
2009

書評 経済

『日本経済「やる気」の研究』 日下 公人


日本経済「やる気」の研究―先端産業国への条件 (PHP文庫)日本経済「やる気」の研究―先端産業国への条件 (PHP文庫)
(1985/01)
日下 公人

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 昭和56年、1982年に出た古い本である。金融危機や雇用危機によって深刻な情勢になっているから、こういうときに視野狭窄におちいらないで日下公人のようなやわらかい、豊かな発想をとりいれたいと思って読む。

 19世紀イギリスの主力産業は海運だったのだが、若者は過酷な船乗りを嫌うようになり、喫茶店でたむろして働かないようになった。当時の国民にとって亡国の若者として騒がれたわけだが、船員の虐待がひどく、年間死亡率は二割をこえていた。奴隷は生きて持ち帰らないと商売にならないが、船員は生きて帰ると賃金を支払わなければならないから、途中で死んでくれれば丸儲けになったという。

 海運は衰退したが、喫茶店から新たな仕事が生まれた。商社や銀行、保険、報道や通信などである。働かないことに目くじらをたてた大人たちには新しい産業がそんなところから生まれるとは思ってもみなかったのである。時代の変化や産業の変化、若者の意識の変化には新しい芽がそこにひそんでいるということである。

 むかし日本人はドイツ人をみればだれでもカントやベートーベンの子孫に見え、アメリカ人をみればエジソンやカーネギーのように見えたものである。日本人もそのように見られはじめている。そのような勘違いの差異が国際的に発展しているということである。

 かつての日本人の勤勉というのは、工業社会に適した勤勉さであった。裏を返せば、工業以外には不適当な勤勉であるということである。サービス産業、文化産業の時代にはこれまでの勤勉や認識は役に立たなくなるということである。

 日本ではアマチュアとは、プロへと経る前のいちだんと低い前段階と捉えられるのだが、ヨーロッパでは新しい産業や文化を創造したのはみんなアマチュアだった。自動車や飛行機、鉄砲などの名称は個人名が冠せられていることからその様子がうかがわれる。アマチュアが文化や文明を創造してきたのである。アマチュアが高く評価される社会には、新産業や新文化の創造にかかわる挑戦や失敗の気風がやしなわれるということである。アマチュアを評価しない社会というのは新しいもの、産業が生まれない、こり固まった社会だということができる。

 20数年前に出た本であるが、おそらく日本人のやる気や勤勉が崩壊して日本経済はどうなるのだという憂いが出ていたころに、過去のこり固まった発想に囚われない違った視点からの楽観法を日下公人は描いて見せたのだろう。いま、日本の輸出依存の工業社会の崩壊とともに雇用が大量に失われるという深刻な事態を迎えているわけだが、このような時代にも必ず新しい芽や転換がひそんでいるはずである。新しい目で見てみること、新しい発想でこの時代をズラしてみる視点を日下公人のような発想で捉えてみたいものである。


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