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02 02
2009

書評 経済

『不機嫌な職場』 高橋克徳・河合 太介ほか


不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)
高橋克徳・河合 太介ほか

不機嫌な職場 なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)


 まえの職場で集団的な対立がおこってどうにかならないかと思っていたころにこの本が出て、ベストセラーになっていたから、このような問題に悩む人が増えたのだろうと思われた。

 職場というのは難しい。なかなかみんなが仲良く楽しくというのはむずかしくて、争いや憎しみが蔓延したり、雰囲気が悪かったり、人間関係が悪かったりといろいろ問題が多い。治そうにも集団の雰囲気や状態というのは個人の力では動かしがたいものがあるし、職種上の問題や機能からそれがおこっているばあいもあって、なおさら解決はむずかしい。動物的な問題といえるほどの根深いものがあったりして、問題の解消は容易ではない。

 この本ではおもに仕事のタコツボ化や孤立化、非協力性といったものが問題にされていた。私の職場ではそのような問題はあまり感じられなかったので身近に感じられなかったが、日本の企業にこのような傾向があらわれているという。技術関係とかIT関係にその傾向がいちじるしいのではないかと思ったが。

 リストラや派遣、アルバイトの増加といった背景が職場の関係をいっそうむずかしくしているのだろう。仲間や一体感をもってのかつての職場の雰囲気といったものもなくなっていった。

 この本で説明しているところによるとかつての職場は仕事の範囲の曖昧さがあったが、成果主義の導入によって個人の成果が求められることになり、成果の出ない仕事を避けるようになり、個人の業務に集中する結果、職場のタコツボ化、孤立化がすすんだと説明されている。職場から協力する体制がなくなり、孤立化や責任の重みにつぶされて、攻撃的になったり雰囲気が悪くなったという。

 会社は都心のマンションのようになり、協力や仲のよさがなくなったという。個人主義になったり、会社べったりの関係がなくなっていったわけである。90年代あたりから滅私奉公や会社の仲間主義が嫌われてきたのだが、そこに成果主義が重なり、タコツボ化や孤立化がすすんだのである。

 個人のつながりが薄まれば、「知らない人」への協力体制は弱まるし、全人的評価をおこなってきた仲間の会話やつながりもなくなると、個人のスタンドプレーばかりが残ることになる。職場の気安い関係がなくなってしまったために、協力体制がなくなったり、孤立化がすすんだということである。

 この本での解決策はグーグルがむかしの日本企業のようであるといったような、かつての日本企業の仲のよさや気安さをとりもどすことであるといっているようだが、みんなそういう職場の濃密な関係を逃れるために孤立化にすすんだのではないのかと思わなくもないのだが。リストラや派遣によって仲間の関係は分断されて酷薄な雰囲気が漂っている中で、はたして過去の職場のような「仲よしゴッコ」は可能なのかと危ぶんでしまうし。

 たしかに気安い、仲のいい人たちをつくるのが安心で協力的な職場をつくるには大事なことだと思うのだが、それが縛りや拘束になる不快感をもつ若者も多いことだろうし。まあ、たしかに基本的な人間の感情としては仲のいい、気安い職場に安心感や居場所感をもつのはたしかなんだろうけど。

 職場の人間関係というのはいつの時代もむずかしいものだろうし、不満や憎しみがうずまいていたりするものだ。だれかが楽しくても、だれかがつまらないといった関係になり勝ちである。最高な関係を求めてもそれは最高の「強制」になってしまう。職場の雰囲気や体制といったものも個人が作り出しているというよりか、その機能や体制によって生み出されていたりして、個人は手の出しようがないといったこともありがちである。

 職場というのはとどのつまり動物レベルの闘いといった気もしないではない。動物の論理で動いているのではないかと思う。集団というものにはせいぜい期待せず、問題や対立がおこるのはあたりまえとあきらめて、その前提で解決策や向上策を考え出したりするしかないのではないかと思う。できることはネガティヴ・フィードバックを返すのではなくて、がんばってポジティヴ・フィードバックを心がけるしかないという低い基準で満足するしかないのではないかと私は思ったりするのだが。リストラや派遣など会社では仲よしゴッコでは埋められない酷薄さが基本にあるのだから。


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Comment

隣町のみゅるあです。
また、仕事場からの投稿です。
今の職場は不機嫌な職場というよりも、ぬるま湯に浸かっているかのような仕事場で、忙しいのは週三日程、
上司のMさんが育てているらしき観葉植物は水のやり過ぎで根腐れをおこし枯れかけています。ホントにゆるい。この観葉植物が枯れてしまうとこの会社もおしまいかもねという気持ちですホントに。

みゅるあさん、こんにちは。

この雇用危機の時代にゆるい職場にいられることはひとつの幸運だと思いますよ。職を失ったり、みつからなかったりとせっぱ詰まった人たちにくらべるとどんなに恵まれた環境にいることか。

ただ暇なときはろくなことを考えませんので、技能を磨いたり、資格をとったりと、有意義な時間を過ごすことをおすすめします。
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