『「職場の格付」教えます』 一柳 勝人


「職場の格付」教えます―あなたの社外価値は「所属部署」で決まる「職場の格付」教えます―あなたの社外価値は「所属部署」で決まる
(1998/12)
一柳 勝人

商品詳細を見る


 「終身雇用は崩壊した」という掛け声はよく聞くのだが、では実態はどうなのか、ほんとうに変化したのか、会社やサラリーマンの意識がどのように変化したのかといった検証がおこなわれてない気がする。終身雇用が崩壊して会社の内部はどのように変化したのか、サラリーマンは会社を捨てたほうが「勝ちパターン」なのかといったコンセンサスができあがっていないように思う。正確なところを教えてもらいたい気がするのだが。

 この本では人員削減の波が20-30代にも襲いかかり、会社に捨てられる前に転職を前提にキャリアやスキルを磨かなければならないと告げられている。ビジネス人生の勝ちパターンは会社をつぎの転職に向けてのスキルをつちかう場でしかないと考えることなのだという。市場価値はげんざいの所属部署によって決まるために不本意なローテーションで価値を落とさないためにも辞め時を見極めることが肝要なのだという。

 これまでのサラリーマンというは会社からゼネラリストとして育つことを期待され、ジョブローテーションをくりかえされ、社内外の人脈を充実させ、会社内部にくわしくなることが勝ちパターンだと教えられてきた。しかしそのような会社内部でしか使い物にならないスキルを身につけた社員がとつぜん40、50代でリストラを迫られても、ほかの会社では通用しない。だからそういった泡を食う前に市場価値の強い部署で徹底的にスキルを磨き、実績を積み、市場価値がいちばんいいときに転職しなければならないという。

 どうなのだろうか、こういった転職の勝ちパターンというのはほんとうにできあがっているのだろうか。社内ではあいかわらず終身雇用や年功序列、ジョブローテーションといった旧来の出世コースで組織が固められているのではないかと思う。この組織はほんとうに崩れたのか、転職者はこの日本では成功パターンになってゆくのか、そこのところがいまいち明確になっていない気がする。会社とサラリーマンはどのような評価体系になり、成功コースや勝ちパターンはどのようになってゆくのか、生き残る方法はどんなものか、といったことが描かれていないように思う。会社の変化を教えていただきたいものだ。

 この本では業界別に売れる部署、売れない部署が紹介されている。私のようなまったくスキルもキャリアももたないさすらい人からすると、ここに出てくる部署のすべての人はスペシャリストでキャリアがあって優秀極まりなく見えて、市場価値のない部署があるなんて信じられない。そういう社外での価値を教えてくれるのがこの本である。まあ、私はスキルもキャリアもいらない仕事にもぐりこむしかないのだが、そういう労働市場がたくさんあることを願うばかりである。

 概要をかんたんに紹介すると、転職に有利な業界は情報通信やパソコン、コンビニ、損保業界などがあげられている。まあ、この本は98年出版の本だからげんざいではだいぶ変わってきているだろう。転職に困難なのが建設や住宅、アパレル、スーパー、消費者金融業界などがあげられている。部署によって評価が違い、会社での花形部署であろうと社外価値がなかったりするから、転職を前提に働いている者は自分の属する部署の市場価値というものをしっかりと知っておかなければならないということである。

 日本の企業や社会というのは終身雇用を前提に生き方を設計してきて、社外や転職市場で評価されるスキルやキャリアをてんで磨いてこなかった。選ばれたエリートならなおさらである。そしてとつぜん社外に放り出されるような時代がやってきたのである。転職を前提に自分のスキルを磨くほうが賢明というものだろう。日本の社会はそういうふうに変化して、会社のほうも評価を変えてゆくのだろうか。終身雇用は崩壊したといつも聞かされるのだが、成功コースや勝ちパターンのコンセンサスをとんと耳にしない。日本は変わったのか、変わっていないのか、そこらへんがはっきりしない。明確な指針を教えていただきたいものである。まあ、それを知ったとしても私はなんとか食いっぱぐれない生き残るためだけの狭き道を探すのみだが。


日本的雇用システムグローバル時代の人的資源論―モティベーション・エンパワーメント・仕事の未来 福祉政治―日本の生活保障とデモクラシー (有斐閣Insight) 3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 (ちくま新書) 日本的人事管理論―組織と個人の新しい関係 日本的雇用慣行―全体像構築の試み (MINERVA人文・社会科学叢書)
by G-Tools

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ueshin.blog60.fc2.com/tb.php/1164-2dbb5056
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 

これから読む本

カテゴリ展開メニュー

  • 自己啓発・成功哲学(66)
  • 芸術と創作と生計(24)
  • 集団の序列争いと権力闘争(53)
  • 国家と文明の優劣論(61)
  • おすすめ本特選集(23)
  • 古代レイライン探索(39)
  • YouTubeマイ音楽館(51)
  • 労働論・フリーター・ニート論(60)
  • 書評 労働・フリーター・ニート(56)
  • 社会批評(59)
  • 書評 社会学(72)
  • 書評 性・恋愛・結婚(69)
  • 風景写真(54)
  • 歴史・地理(70)
  • 書評 経済(88)
  • 新刊情報・注目本(49)
  • 書評 心理学(18)
  • 書評 歴史(33)
  • 知識論(20)
  • 読書(20)
  • 市場経済(10)
  • ネット関連(43)
  • CD評(11)
  • TV評(26)
  • 社会哲学(6)
  • 日常(26)
  • 恋愛至上主義社会論(2)
  • 恋愛・性・結婚(4)
  • 書評 小説(29)
  • 映画評(4)
  • 80年代ロック&ポップス・メモリー(20)
  • 手塚治虫ノスタルジア(23)
  • 書評 マンガ論、サブカル論(10)
  • 書評 哲学・現代思想(10)
  • つぶやき(1)
  • 人生論(10)
  • 未分類(3)
  • バイク・ツーリング(44)

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ

RSSフィード

私のおすすめ本


『楽天主義セラピー』 リチャード・カールソン 春秋社
4393710312.09.MZZZZZZZ[1].jpg

思考なくして苦悩はなし。

『どう生きるか、自分の人生!』 ウェイン・ダイアー 知的生きかた文庫
gibun11.jpg

考えと現実は同一ではない。

『愛と怖れ』 ジャンポルスキー VOICE
aito.jpg

攻撃心は恐怖から生まれる。

『グルジェフとクリシュナムルティ』 ハリー・ベンジャミン コスモス・ライブラリー
79522366[1]12.jpg
 
頭の中の「私」とは絵空事である。

『捨てて強くなる―ひらき直りの人生論』 桜木健古 ワニ文庫
CIMG0001_111112.jpg

落ちこぼれる恐怖を捨てよ。

『キリストにならいて』 トマス・ア・ケンピス 岩波文庫
 CIMG0016_111.jpg

苦悩のない方法論。

『無境界』 ケン・ウィルバー 春秋社
050[1]1.jpg

思考や感情、自我は「私」ではない。

『孤独であるためのレッスン』 諸富祥彦 NHKブックス
4140019271.09.MZZZZZZZ[1].jpg
 
仲間外れを怖れずに孤独を喜ぶために。

『「心の専門家」はいらない』 小沢牧子 洋泉社新書y
4896916158.09.MZZZZZZZ[1].jpg

心理主義化社会を警戒せよ。

『この人と結婚していいの?』 石井希尚 新潮文庫 
4101294313.09.MZZZZZZZ[1].jpg

男と女のすれ違いの名著。

『菜根譚』 洪自誠 岩波文庫
sai1.jpg

人生の達観した名著。

『正統の哲学 異端の思想』 中川八洋 徳間書店
seito.jpg

民主主義と平等が自由を抹殺する。

『自己コントロールの檻』 森真一 講談社選書メチエ
giko.jpg

衝撃の心理学批判の本。


Thanks Goodpic.com