『リストラとワークシェアリング』 熊沢 誠
リストラとワークシェアリング (岩波新書)
熊沢 誠

日本での労働政策とか労働基準法なんてなんの役にも立っていないと思うのだが、これから失業が増えたり、雇用が増えないようでは、労働時短や労働時間規制、ワークシェアリングがものすごく重要な政策になってくると思う。成熟社会で需要が伸びないよう社会はみんなで少ないパイを分け与えるしかないのだ。その意味でサービス残業規制や時短の流れは強い意志で断行されなければならないのだろう。
この本は2003年時点のリストラの状況が克明につづられているのだが、なにより驚いたのだが、口先だけだと思っていた日本的終身雇用が名実に終わってしまったということだ。東芝や日立、松下電器、JR東西日本、NTT東西日本などの主要な企業が大かがりな人員削減計画を発表している。40歳以上、勤続10年以上の中高年社員が希望退職の対象になっているのである。
いままでの日本は大学を卒業して大企業や有名企業に定年まで勤めるのが「正しい人生」「正しい生き方」だと思われてきたし、それが「人生の成功」を意味するのではなかったのか。そのような成功の人生レールが日本の主要な大企業からとつぜんはしごを落とされてしまったのである。いままでの「正しい生き方」「成功した人生コース」とはいったいなんだったんだろうと思う。だれがそのような喧伝した成功コースの責任をとるというのだろう。この大きな衝撃の意味が日本でまだ問い直されていないように思える。
若者が非正規におきかえられ、勤続年数の長い中高年のクビが切られ、残った三十代の長時間労働がまかりとおる世の中になってしまった。19世紀的な長時間労働が生きのこり、過労死があとをたたない。日本の賃金水準を100とすれば、アジアNIESでは約40、中国では2,3という。いくら日本で正社員を低賃金の非正社員におきかえても「追いつかない」のである。
日本の雇用が崩れ去っているというか、なんの権利もないままに嵐の中に放り込まれているといった感じがする。基幹的な作業も低賃金の非正規におきかえられるし、解雇が社会的非難をうけた時代からかんたんに中高年がリストラされる世の中になってしまったし、労働時間制限あるいは最低賃金をとくために正社員の名ばかり管理職や長時間労働がまかりとおる。これまでのいっさいの労働保護の原則がなぎ倒されて、労働者にはひとつの人権も守られないようになってきたように思える。
そのような状況の中でワーキングプアやネットカフェ難民、非正規、正社員の長時間労働などの増加とすべて連動しているのだろう。このひどい労働状況の転換期の中で労働者はなにひとつ権利や守られるべきものをもたないのだろうか。ワークシェアのような時短によって仕事のパイを分け与えるといった政策が強い意志で断行される必要があるのだろう。ヨーロッパで進んだ時短には失業率増加や成熟市場のパイの減少という背景があったからこそおこなわれたのだろう。日本も早くにそのような断行をおこなわないと、過労死的な競争はますますとどまるところを知らないままだろう。日本の国民が生き残る道はそうたくさん残されていないように思える。日本人が生き残るための政治的断行が必要なのである。
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コメント
平成不況の頃にワークシェアリングの導入が話題になったことがありました(ちょうどこの本が発行された頃ですかね)。
しかし、日本ではワークシェアリングは普及しませんでした。
なぜでしょうか。
それは、ワークシェアリングを普及させようという強い声が誰からも上がってこなかったからです。
企業にとっては、多くの従業員を抱えることは、福利厚生費が余計にかかる、従業員の教育訓練に余計なコスト・時間がかかる、業務の効率が悪くなる(少数の優秀な従業員に長時間働いてもらうほうがずっと効率的です)などのデメリットがあり、ワークシェアリングの導入には消極的です。
また、現在、正規雇用されている従業員にとっては、ワークシェアリングを導入するということは給料が下がることを意味しますから、やはり消極的です。
ワークシェアリングの導入が必要な人と言うのは、フリーターなど不利な条件で働いている人や失業中の人達ですが、そういった人達は大きな声で主張したりしない、あるいは主張できないのです。
オランダでは、ワークシェアリングの導入に成功しているそうです。
オランダでは、すでに職を得ている人(ワークシェアリングなどを必要としない人達)が中心となって、職に就けない人達のために、ある面では自分たちを犠牲にしてワークシェアリングという制度を社会に広めたのだそうです。
( 「バイブルは ArthurC.Clarke odyssey series(2003年1月28日): http://hal2001.seesaa.net/article/3773262.html」を参考にさせていただきました。)
このホームページの著者は、日本にはオランダ的な前向きなワークシェアリングは定着しないと判断しており、現時点ではそのとおりになっています。
自己犠牲的なワークシェアリングというのは、他人を思いやる気持ちが少なくなった今の日本人のことを考えると、今後も定着するのは難しいように思います。
今の日本では長時間労働で酷使される人生か、会社のカヤの外で雇用の調整弁になったりワーキングプアになったりする人生しか選べないのかもしれませんね。
残業の拒否で逮捕されるというのはブラックユーモアですが、日本の会社というのはむかしから拒否なんかできる雰囲気ではありませんでしたから、事実上、逮捕に近い無言の強要があったということができますね。
日本の労働者の権利のなさ、力の弱さといったものが、保証されて隷属していた時代から、放り出される無権利の時代になってしまいましたね。この圧倒的な力の弱さというものはどうにかならないものなのでしょうか。
日本でワークシェアリングがおおいに求められる、定着したという話はまるで聞きませんね。というか、日本には労働規制とか労働政策とかまったく力をなさない、無力だといつも感じさせられることですね。日本ほど労働の自由競争、無規制といったものが盛んな国はないといったところですね。
この本に指摘がありましたが、日本の労働者にはろくに働かない人の面倒をみるのはいやだ、できない人が悪いといった身もふたもない非難がうずまいているようですね。日本人ってけっこうひどい人たちの集まりだったんだという気がします。
ヨーロッパでは時短が早くから進んでいますが、いっこうに進まない日本はなぜだめなんだろうと思っていましたが、どうやらヨーロッパは先に成熟市場の到来や失業率の高止まりといったにっちもさっちもいかない状況が先にあって、だから時短であるとかワークシェアリング、オランダモデルのような政策が社会的な後押しで導入されたのだと思います。日本はたしかに社会的にそういう危機を共有しないと、時短やワークシェアリングのような痛みをともなうものは導入されないのでしょうね。
それにしても日本の労働状況というのはひどいものになっていますね。とくに大企業の中高年リストラというのは日本的な成功コース、正しい生き方といったものの全面的な否定になりますね。いぜんから終身雇用の崩壊はささやかれていたのですが、リアルなかたちでおこなわれたのは2001年ころになるようですね。これって昭和的な日本の崩壊というか、昭和の敗戦になるわけですが、あまり大きな衝撃、話題になっていないと思うのは私だけなのでしょうか。
会社というのはできない人を内部留保できない組織であることはとうぜんでありますが、それにしても日本人には弱者を助ける、困った人をみんなで助けるといった精神がほんとに弱くなっていますね。そんな人たちをかまっていられないといったところなんでしょうが、この残酷さが日本人の習性なのだとしたら、日本人はとてもひどい人たちの集まりということになりますね。こんな日本人の国民性でよいものなんでしょうか。弱者を助けるといった美徳は日本人にはないようですね。
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毎日暗いニュースがつずきますね。
うえしんさんの言われている通り、リストラ後に残された30代社員の酷使は今以上にひどくなりますね?
ドイツなどでは残業の強要は経営者の逮捕につながるそうです。
日本の場合は残業の拒否は逮捕につながりかねませんね。このままいくと・・・。