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11 24
2008

社会批評

最低生活費より給与水準が先に落ちているということ



 Chikirinの日記というサイトで時給で生きていかざるを得ない人が一千万人いて、一生食べてゆくのはムリである、ではどうしたらいいのかと考えられている。

もうひとつの解
“格安生活圏”ビジネス

「貧困でも暮らしていける場所と仕組みを作る」ってことです。

日本の特徴は「生活インフラも“一億総中流時代のまま”とどまっている」ことだと思うんです。
日本というのは「最低生活費が非常に高い国だ」と思うのです。



 これから書く文はChikirinさんの日記にくらべて明確な図式を描けず、恥をさらしてしまうことになるが、自分でかみくだいて理解を助ける一助にしたいと思う。

 たしかに日本の最低生活費は高い。アパートを借りるにも敷金や保証金が必要だからまとまった金がない人はネットカフェや個室ビデオ店などに泊まったり路上に出ざるをえないし、教育費が莫大なので子どもをつくることはおろか家庭さえもてないし、年をとって働けなくなっても年金の保障や生活費がじゅうぶんにまかなえる額に達するとはけっして限らない。

 「格安生活圏」がつくらなければならないというのはなるほどだと思う。生活レベルがかつての中流階級レベルのままでありながら、給料が落ちる人が増えてゆくと、その水準で生活を維持しえない。だから結婚できない人が増えるのであり、子どもは減ってゆくのであり、ついにはネットカフェ難民のような住居さえろくにもてない人が増えたのである。

 つまり給料が先に落ちてゆく状況がはじまって、結婚できない、子どもをつくれないという状況がおこり、ついにはアパートにさえ住めないという転落がおこっているのである。生活レベルが給与レベルにまったく追いついていないということができると思う。中流階級の生活レベルを設定することで、これまでの時代の変化が鮮やかに見えてきた気がする。おこっていることは生活レベルに給与レベルのダウンが追いついていないということなのである。

 継続勤務が可能な正社員であれば、ふつうに買えていたものが、流動的な非正規になるとたちまち買えなくなり、マイホームはもちろん家庭をもつこともできなくなるし、子どもに教育費もかけられない、しまいにはアパート代さえ高すぎて払えないとなる。非正規でも継続的にフルタイムで働くのならそこそこ生活はできるばあいもあるが、時給が低ければぎりぎりの生活を余儀なくさせられるし、派遣労働のように有期期限があったり景気の動向によってクビを切られるのなら定収入はがくっと落ちるし、登録型の日雇い派遣ならそもそも月の定収入がみこめず、アパート代すら継続的に払えないという状況になってしまう。

 こういう長期的な不安感や給与のダウンというものは、家庭をもったり子供をもつということの減少によってじわじわと現われていたのだと思う。それがなぜおこるのか明確ではなかったが、ここにきてあきらかに給与水準のレベルによってひきおこされているらしいことが明るみに出てきた。長期的な展望で組み立てられていた生活レベルや人生設計が、給与ダウンによって不可能になりつつあるのである。若者の時給が正社員の二分の一に引き下げられるということは、そのような結果を招来するものなのである。

 そもそもなぜ日本の最低生活費は高いままなのか。教育費や住居費がインフレの右肩成長時代の体質をのこしたままだからだろうか。単純にいえば、需要に供給が追いつかないものは値段が高くなる。教育や住居は人口増加時代に不足のまま追いつかなかったゆえに価格は上りつづけた。価格が高止まりしたまま、人々の給与水準が急激に落ちてしまった。インフレ時代の給与水準に達しない人たちは教育費や住居費を払えずにしずかに退出してゆくほかなかったのだろう。

 なぜ教育費や住居費は落ちなかったのだろう。モノの値段が百円ショップやディスカウントショップの出現によって二束三文同然に落ちてきたのは明白である。しかし教育費や住居費が二束三文に落ちてきたような兆しは感じない。給与ダウンがなかなか価格に反映されない業種であるからかもしれないが、時給生活者には確実に払えない額のままなのである。そこを補うようにネットカフェや個室ビデオ店が低価格住居として進出してきたのだろう。

 時給で生きてゆかざるをえない人たちの荒野が確実に広がっている。日本は自国通貨の強い先進国になったので後進国からの安い輸入品で生活費を安く抑えられるようになったが、教育費や住居費においてはまだまだ価格が高いままである。柔軟に時給生活者の水準に対応できていないのである。この差額の衝撃を業界関係者が知りえたときに急激な価格崩落はおこるのだろうか。中流階級の生活水準がこれらの価格に残っているのはたしかである。

 時給生活者でも生活していける格安生活圏が必要なのは肯けるところである。貧しい人たちが増えれば、高い価格の需要者は減り、価格は落ちる。その生活水準で生きていけるような格安生活圏が必要になるのである。しかし日本においては教育や住居においてその実現を見ていない。ネットカフェや個室ビデオ店はその先駆けなのか。教育や育児においてはまったくその価格下落が見えず、おおくの若者が出産や育児をあきらめざるをえない状況がはじまっている。給与のダウンに最低生活価格が追いついていないのである。

 貧しい社会や貧しい階層がはじまってゆく不気味な未来が押し寄せてくるようで、なかなか末恐ろしい感がする。格安生活圏というのはかつて昭和のはじめまであったスラム街と変わらないものかもしれない。はっきりいえば、確実に起こりつつあり、いまその変化のまっただ中にすでに突入してしまったのだろう。歯止めをかける明るい兆しはなにひとつ見えていない。このような未来を想定していて、ついH.G.ウェルズが描いた『タイムマシン』という作品の階層によって人類が分化してしまった未来社会を思い描いてしまった。どこまで転がりつづけるのだろう。


賃金カーブと教育と結婚の関係
子育て正社員の余裕のなさは、 結婚できない貧困と裏腹の関係!」 湯浅 誠・NPO法人自立生活サポートセンター・もやい事務局長インタビュー

恐ろしき未来社会 (階層社会論というより管理社会論だけど)
タイム・マシン (創元SF文庫―ウェルズSF傑作集)すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1)1984年 (ハヤカワ文庫 NV 8)動物農場 (角川文庫)

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Comment

お給料ですか…。

私の書店勤務時代のお給料は額面約16万5千円ほど。これから引かれて、手取りで13万円ほどでした。手取り年収はボーナス込みで182万円でした。実家からの通勤だったのでやってこれたようなものです。一人暮らしなら、貯金はできなかったでしょう。給料日には、親に3万円の部屋代・食費を払っていました。これで2年間、すごして貯金が50万円ほど出来たと思います。一人暮らしだったら気楽に生きてゆけたかもしれません。でも急な出費で困ってしまう事もあったでしょうね。職場の友人はお姉さんと2人でマンションを借りていましたが、お姉さんが恋人と暮らすことになると、マンションから身を引くかたちになりました。で、困っていました。
安い家賃の部屋が無い、と。

不動産屋さんと知り合いになった時に聞いたのですが、賃貸ニュース等の雑誌の部屋・不動産屋さんとの掲示板に書いている家賃は、「値引き可能の場合もけっこうある」との事。不動産屋さんと値段交渉の余地がある物件も多い、との事。「値引け、値引け」と騒ぐのもちょっとどうかと思われますが、必要最低限、値引きの交渉はやってみる価値はあるそうですよ。不動産屋さんが言っていたので信憑性は高いと思います。

書店を辞めて良かったとは思っていませんが、今はもう本の注文はアマゾンで済ませる事が多いですね。時代の趨勢かもしれません。1500円以上の買い物で送料無料は魅力です。

うえしんさんは自分の具体的な「数字」をあらわす事を避けますが、私のように年収をハッキリさせて、具体的な数字を出すと、読者はわかりやすいですし、議論も薦めやすいですよ。抽象的な言葉で表現すれば、読み手のほうで、自分に当てはめて考えますから、大多数の人に伝わりやすいですが、「数字」をあらわせば、少数の人の心に残る記述になるかもしれません。まぁ、うえしんさんの「美学」に反するのなら、無理に失業保険でやりくりしている、という話はなしでいいです(私は知りたかった)。

黒田       謹言

黒田様、こんにちは。

赤裸々な給料明細ありがとうございます。
手取り13万の一人暮らしなら、かつかつには生活できも貯金や余裕のある暮らしは難しいでしょうね。

私のこんかいの論旨は、最低生活費より先に給与レベルが落ちているということでした。時給生活者の給料で生活できる生活圏が育っていないことによる時代のズレをとりあげています。

したがって個別論でありませんし、一般的なマクロなレベルで話しています。個別的な給料の額を焦点にしているわけではありません。ましてや私個人の収入を問題にしているわけでもありません。

なぜ給与のデフレに対して教育や住居のデフレが追いついていないのかを考えています。個別論をしたいと思っているわけではありませんし、それを焦点にしたいとも思いません。

それから私は議論好きではありませんので、反論や異論を期待しているわけではありませんのでご配慮いただきたいと思います。

 確かに食料品は価格破壊が起こっているのに、教育費や住居費は高止まりしていて、下がっていませんね。家電製品のようなぜいたく品でも価格破壊が起こっています。なぜ、教育費や住居費は下がらないのでしょうか?

 次のようなことが思い浮かびます。
①業者間の価格競争の厳しさの違い。
 食料品、家電製品などは、同一レベルの商品であれば価格差が決定的に売り上げの差につながるので、業者間での価格競争が厳しい。
 一方、教育費や住居費は、通学や居住の可能性といった地理的要因にしばられるため、価格による競争原理が比較的働きにくい。
②価格決定に係る主体の違い
 食料品、家電製品などは、高ければ別の食品に換えることや買わずに済ますことができるため、相対的に売り手よりも買い手の意向で価格が決定される。
 一方、教育費や住居費は、買い手側に子供に良い教育を受けさせたい、最低限住む場所は確保しなければならないといった強迫観念があるため、相対的に買い手よりも売り手の意向で価格が決定される。
 買い手側は給料が減っても、教育費や住居費が高いのは仕方がないことだとあきらめ、食料品、家電製品などに係る費用を減らそうとする。
③価格の改定頻度の違い
 食料品、家電製品などは、日々価格の改定が行われているが、教育費や住居費は年に1回など、ある程度の期間が経過しないと見直しが行われない。
   
 教育費の高止まりは、金持ちの子でないと良い学校に行けないという、教育機会の不平等問題を新たに引き起こしつつありますね。
 住居費の高止まりは、ネットカフェ難民などの形で問題が顕在化していますね。

 現時点では、教育費や住居費が高いままでも支払う人がいるので、高止まりしていますが、低給与社会が続くと払えない人が増え、教育費や住居費もやがて価格破壊が起こるのではないでしょうか。

永遠の少年さん、こんにちは。

教育費と住居費の高止まりの要因を精緻な理論で考えていただきありがとうございます。

これはどちらとも流動的でないといえますね。土地や家はかんたんに住み替えたり、移ったりすることはできませんし、へたしたら何十年も前の価格設定でマイホームローンを組んだりしていますね。

ネットカフェや個室ビデオ店が仮の住居として利用されてきている現状を考えると、価格引下げの圧力はかなりあるのでしょうね。これまでの住宅バブルのおかげで住居が多く建てられ、ことしは建設・不動産の大型倒産がめだっており、空室率がかなり高まっており、価格引下げの圧力は高まってゆくのでしょう。

教育はTVや出版のように大量生産・大量流通ができませんね。教師がひとつの地理的・空間的な制限の中で少人数しか教えられることができません。メディアとしてはかなり非効率で原始的なのだと思います。そこで教育費の高騰がおこるのかもしれませんね。

なにより土地や教育は権力や政治の関係で決まっているようなところもあるのではないかと私は思います。カルテルだとか談合だとか、力関係だとか。大学入試でも合格して入学しない場合でも莫大な入学費を保険とし払わなければならないことがいまだにつづいていますね。土地や教育の高さは権力や力関係の違いが生み出している、制限しているんじゃないかと思います。弱い消費者や個人は権力に不利な契約を結ばされている、力で抑えつけられているんじゃないかと思います。

価格競争があまり働かない、反映されない業種なんでしょうね。われわれの給料だってどうやって決められているのか、会社や社長の権力や一存で、市場の動向とあまり関係なく決められているんじゃないかと思います。非正規の給料のように下げの圧力があるときは敏感に反応するのでしょうけど。

教育と住居の高止まりは、権力や政治の既得権益や保護政策などのアヤシい、キナくさいものが、守っているような気がします。ここらへんをもうすこし追及して、たたきたいところですね。家から追い出されたり、子どもをつくれない不利益を、われわれは多くこうむっているわけですからね。

日本の教育費はたしかに欧州などに比べたら
かなり高いように思います。
しかしそれも考えようで、
ボクは現在地元国立大学の2年生ですが
入学金以外はすべて無料で行っています。
兄もそうです。
家が貧乏だからそうでなければ進学できなかったのです。
たしかに運がよかったのかもしれません。

因みにいとこは自治医科大に行っていますが
今は少しだけど生活費まで大学から
支給されているようです。

日本の国立大学、とくに大学院は
東京周辺あたりからですが、
世界の人材獲得競争に巻き込まれて、
優秀な学生を得るためか、ほとんど学費が
無料になりつつあります。
中には奨学金として、生活費まで支給したり、
給料の出る院生助手もけっこういるようです。
(東京大学や東京農工大などは特に・・・)

ある意味日本は世界でいちばん学費が安い国だな、
なんて思っています。
友人などは私立の医学部に年間1千万円くらい払って
行っていますが、
あるところはそれでもいいように思います。

愛媛県は私立高校でも月額3万円くらいです。
日本一学費が安いようです。
(大半が宗教系のようだから)

しかし高校から就職したものが
どんどん会社を辞めて地元に帰ってきています。
ほとんどが自宅から通ってのアルバイトです。
東京だったらカフェ難民ですね。

田舎だから生きていけるのかもしれませんね。



雨宮さん、教育費の現状をつたえてくれてありがとうございます。

国公立はたしかに安いですね。
いろいろな補助制度があるようですが、ちまたに聞く大学の親の生活はきちきちのようですね。私大なんてとてつもなく高いですし、一千万の医大なんて目ん玉が飛び出ますね。貧しい子は進学をあきらめたり、格差が固定される恐れは現実のものですね。

かつての親たちは年功賃金カーブがちょうど子どもの教育費がいちばんかかる時期にピークを迎えていましたが、いまはそれより先に早期退職やリストラされたり、ときにはパートの仕事しか見つけられないといったことになって教育費を払えなくなることが予想されます。

これから賃金が上らず、あるいは下がりつづけたりしたら、親は子どもの教育にお金をかけられないようにどんどんなってゆくでしょう。教育費をもっと下げたり、社会保障でカバーされてゆくことが必要なのだと思います。

地元に帰ってくる知人の話はリアルですね。
仕事や会社がキツかったのでしょうね。
働き出しても親元から離れられないというのもツライところでしょうね。
まったくどうにかならないものでしょうかね。
お先真っ暗だ。暗い社会情勢がやってくるしかなくなるのかもしれませんね。

▼参考に。
子育て正社員の余裕のなさは、結婚できない貧困と裏腹の関係!
http://diamond.jp/series/dw_special/10038/
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うえしん

Author:うえしん
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