『成功する男はみな、非情である。』 角川 いつか


成功する男はみな、非情である。 (だいわ文庫 D 86-1)
角川 いつか

成功する男はみな、非情である。 (だいわ文庫 D 86-1)


 こりゃ、ダメ。ひどい。文章がなっていないというか、思考の道筋にぜんぜん説得性がない。成功者に人脈があったりインタビューしたことがあるということだが、てんで成功とはなにかとか、成功するとはどういうことなのかという根本的なことをつかんでいない気がする。すべてうわっツラの成功哲学のはりぼてのような奇怪な本になっている。骨格がない。残念ながら商品のレベルではない。

 成功とか非情さとか、すべてカッコよさとかあこがれのようなレベルで捉えていて、こちらが気恥ずかしくなって投げ捨てたくなったのだが、どこがどんなにダメなのか理解しようとしてさいごまで読んだ。たぶん成功とはなにかとまったくわかっていない、実感も経験もともなっていないからだろう。

 著者は角川春樹と離婚経験があるそうで、そういうコネで本が出せたと勘ぐるほかない。タイトルは日ごろもっている「成功者とは貪欲な功利主義者ではないのか」という思いを喚起させるからつい手にとってしまったのだが、中身はからっきし空虚である。ネットでのほかのレビューをみると、ふつうに感想を書いている人もいて、なぜこのような本をマトモに読めるんだろうと私には不思議である。

 本から離れて考えたいのだが、成功者は非情ゆえに成功するのかということである。人を蹴落としてでも、人を切り捨てでもして、成功者は貪欲に自分の利益や利害をつかみとりそうな気がする。そうしないと成功なんて手にできないと通常、私たちはやっかみとともに思う。非情であるよりか、なにかをつかみたいとか頂点にのぼりつめたいとか、大物になりたいとかの願望が強いのだろうと思う。私なんか小さいころから人に勝つ冷酷さのようなものに辟易してきたから、人を押しのけてでも勝とうとすることができない。非情さが必要かもとこの本のタイトルに魅かれたのかもしれない。

 性善説か性悪説のどちらで生きたほうがいいのかという問いである。私はどちらかというと性善説で生きてきた気がするし、非情な人とはできるだけ関わりたくないと思ってきた。そうすれば、非情な人に勝利や有利さから押しのけられて損や不利な目に会ってしまうのではないかと思わなくもない。成功や勝利をほしいわけではないが、損な目や不利な立場に押しつけられるのなら、非情さも学ばなければならないと思うのである。

 道徳が大事なのか、成功や勝利が大事なのか、これは難しい問題である。人を押しのけてでも、人を蹴落としてでも成功や勝利を手に入れるほうがいいのか、あるいは道徳や平和を標榜して凡人や庶民としての幸福や安寧で生きるほうがいいのか。または道徳を標榜しても勝利や成功も手に入れられるのだろうか。成功する人生がいいのか、平和で凡庸な人生がいいのか、人の人生観の根本を問われるような難しい問題である。


非情のライセンス(私の書評です。書影が×印なのが悲しい)
『権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉』 ロバート・グリーン
『権力に翻弄されないための48の法則〈下〉』 ロバート グリーン
『君主論』 マキアヴェリ
『マキアヴェッリ語録』 塩野 七生
『イヤなやつほど成功する!』 スタンリー・ビング


非情な男ほど、なぜモテる? 出逢いのバイブル運命の5人 (ぶんか社文庫 か 5-1) 恋の品格 28歳からの女、28歳までの女 口説きの鉄則―場を盛り上げ、惚れさせる話し方
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