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11 02
2008

書評 ビジネス書

『巧みな提案ができる人 できない人』 中島 孝志


巧みな提案ができる人 できない人 (知的生きかた文庫)
中島 孝志

巧みな提案ができる人 できない人 (知的生きかた文庫)


 なかなかおもしろかったし、役に立つ本ではないかと思う。人にいわれたとおりの仕事、決まった仕事、進歩のない仕事から抜け出すための改善や効率のいいやり方といったものがいろいろ教えられている。そのような方法を知らないといつまでたっても仕事の向上や進歩はみこめないし、仕事のできる人から置いていかれる。

 仕事の改善や提案を沸き立たせるには質問や疑問が大事である。この仕事でいいのか、違う仕事をすべきではないのか。だれがしているのか、なぜその人なのか、ほかの人でもいいのではないか。なぜその仕事が必要なのか。どうしてそこでするのか、ほかの場所のほうがいいのではないか、どうしてこの時間なのか、ほかの時間のほうがいいのではないか。どうしてこの方法なのか、ほかの方法はないのか。このような疑問や質問をもつことにより、仕事の改善や提案はおこなわれて、効率アップや改善がはじまるのである。この疑問がなければ、仕事はいつまでたっても同じままであり、業績も売り上げは増えない。

 すべてのビジネスは「問題解決業」だという。レストランは食べる問題を解決する仕事、ホテルは泊まる場所の問題という仕事、自動車は移動の自由を解決する仕事だといえる。ビジネスというのはかつてはなくて、問題があったものから生まれるものである。これはおかしい、どうにかならないか、といった問題解決から新たなビジネスは生まれる。だから、困ったこと、不都合なことに気づいたときこそ、チャンスなのである。

 そしてそういうイノベーションは余裕のある企業から生まれない。使い捨てカメラはカメラ・メーカーから生まれず、宅配便が郵便局から生まれず、引っ越しビジネスが大手運送会社から生まれず、回転寿司が寿司屋から生まれず、アマゾンが大手書店から生まれなかったというわけだ。たとえば使い捨てカメラは高級品や耐久消費財と考えているカメラ・メーカーからは生まれず、使い捨てに慣れているフィルム・メーカーから生まれるのである。

 「発見とはみんなと同じものを見ながら、違うことを考えることだ」。問題の発見、着眼が重要なのである。「あっ、本当の問題はここにあった」と気づくことが大事なのである。

 人間の脳は一日六万個の想念を思い浮かべ、そのうち95%がきのうと同じことを考えているそうだ。固定観念や既成概念を壊すのがいかに難しいかわかるというものだ。根本的な疑問や質問がいかに大事かということである。儲かっている業態、新しい企業というのは、あるひとりのそういう発想や着眼から生まれたものなのである。

 ダメな営業マンは商品をただ万遍なくセールスしようとする。「会社にいわれたからセールスしているだけです」というレベルである。売れる商品からどんどん売らなければならない。そしてもっとも必要としている顧客をだれか知らなければならない。たとえば調理器具のセールスマンはむやみやたら商圏内を歩き回るが、もっとも調理器具を必要とする新規開店の店を知ればもっとも売れる。売れる相手をしっかりとつかむことがムダな行為を防ぐのである。メーカーの最大の顧客は消費者と思っているが、問屋や小売店こそが顧客と気づいてから売れるようになる。

 「あれ?」「なぜ?」「どうして?」と不思議に思ったときこそが、提案力を発揮するベスト・タイミングなのである。そこから改善や効率アップ、業績向上がみこめるのである。

 この本はなかなか参考になったな。私は仕事にかんして進歩も向上心もなく、ただ決まりきった仕事を漫然と過ごしてきたと思う。改善や向上をおこなおうとしても、ほとんどアイデアが思い浮かばなかった。そういう日々の疑問や不思議なこと、質問が大事であるとよくわかった。読書にかんしては疑問を推進力にして数多くの読書をそういう方法でおこなってきたのだが、仕事や業務に関してはそういう頭をつかうことはなかった。なるほど参考になった。ただ改善の方法を思いつくこと、解決能力、実践能力はかなり欠けていると思う。そういう解決策をみつける能力が必要だと思うのである。


大人の仕事術 「問題解決」ができる人できない人―どんな状況にも使える仕事の技術! (知的生きかた文庫) 巧みな質問ができる人できない人―問題の「急所」をズバリ突く技術! (知的生きかた文庫) 「A4一枚」仕事術 解決志向(ソリューションフォーカス)の実践マネジメント
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Comment

どうも。時々見させて頂いてるmaです。

私もそうですね。。。
仕事に対する向上心とかは皆無に等しかったです。
ずっと決まった事をしているだけで、
この仕事にどういう意味があるんだろうとか、
将来に向けて今の仕事をどう繋げて行くのか等、
そういうことにはあまり関心がありませんでした。

色んなことに対して積極的に改善や提案を出してくる人は一部にいましたが、
単純に凄いなぁ、どうしてそんなことまでするんだろう?
とかそんな風に思うだけで、自分もそうなろうとかはあんまり思わなかったんですよね。

自分で自分の人生をつまらなくしてしまったのかも・・・とか時々思います。。。

maさん、こんにちは。

私もそれはまったくわかります。
決められた仕事をこなすだけで、改善や提案のような前向きなことはしてこなかった。

たぶん会社や仕事は経営者や上層部のものだから、自分の労力や体力をすこしでも使いたくない、貢献したくないという反発心や対抗心があるからだと思います。提案を積極的にこなす人はまるで経営者や上層部に媚びているようでいやな気持ちもあるのでしょう。

私もそんな気持ちで生きてきましたが、転職とかある程度年をとってしまうと、仕事の能力が自分に身についていないとどこにも転職できないし、リストラされても行き場を失ったりしてしまいますね。自分を搾取されたくないという領域と、自分の職業能力を高めるというふたつの反する領域を、うまく使い分けないといけないみたいですね。

改善や提案をしていって、自分の職業能力を高める努力もしなければならないと思います。それは会社や経営者のためではなくて、自分のための市場価値のためにおこなうのだと考えたほうがいいのでしょう。会社や経営陣のためにおこなっていると思うとバカらしくなりますが、自分の能力を高めるためにはやっておかなければならない活動なんでしょう。その二つを切り分けるのは難しいですが。自分のためにおこなっていると思うと、ある程度の持ち出しはまあ、OKということになるのでしょう。

こういう改善や提案を考えることはけっこうおもしろくて、楽しいことかもしれないですね。なにかいい案を思いついたり、業績につなげることができると、仕事ってこんなに楽しいものだったと気づけるかもしれませんね。なによりも仕事の自信をつけることはかなり大事なことだと思います。与えられた仕事のみをこなすだけでは自分に自信をつけることはできませんからね。

会社に搾取されたくないという気持ちも大事ですが、自分のために能力や自信をつけることもともにおこなわなければならないのでしょう。自分のために職業能力をつけるということは、のちのちの自分を助けることになるでしょうし、会社の搾取や反発といったものも気にならなくなるようになるかもしれませんね。仕事を楽しめるようになったら、人生も楽しくなるかもしれませんね。

以前働いていた会社は、どんな小さな「改善・提案」でも一件当たり
20点ついて、ある程度本格的な改善だと月間賞で選出され
最高で200点(2,000円)ついて、それがギフト券になりました。
ほんとに何でもいいんです。「無駄な文書ファイリングを止めて、
ダンボールに上積みして保管する」みたいなのでも選ばれました。
派遣社員も参加できたし、ご褒美もある、何より『そんなことはダメだ』とか、
否定もされないし、だんだん楽しくなってやってました。
その感覚で次の派遣先でも当たり前のように意見や効率化を行ったら、
かえって仕事は増える、意見を言わない従順な女性社員からは浮く、
上司からは歯向かう奴みたいにとられ、かなり裏目に出てしまいました。
(でも課会で意見を求められるから、つい言ってしまう。)
疑問を持ったまま仕事をするのもつらいですが、改善提案をしやすい会社と、
そうでない会社もあるような気がします。
今は、ただの歯車を自覚しなるべく控えめにしていようと思ってるのですが...

石蕗さん、こんにちは。

かなりおもしろい体験をしましたね(笑)。
会社の風土によって評価されたり、ぎゃくにまったく反感をもたれたり。
集団の道徳や正義というものはある集団によってまったく違うものですね。

それを知ったら、ある集団で否定的に捉えられてもほかの集団では違うこともあると思い出すことができるので、ひとつの集団の基準に依存したり、絶対と思わない客観性を身につけることができますね。

ふつうの人はあるひとつの集団の基準や評価を絶対と思ったり、その考えにとり憑かれたり、外部に出れなくなってしまったりしますね。
集団からの相対化の視点というものはものすごく大事なものだと思います。
お山の大将のような人も醒めて見れますしね。

提案や改善というのは批判であったり、攻撃であると見なされるのはたしかにそうだと思います。
改善というのは問題の発見であり、違和感や不思議さの指摘ですからね。
自分や集団のやっていることが批判されたり、攻撃されたりしたと感じると思います。
なにが問題なのか、なにしゃかり気になっているのかと、ルーティンな企業には思われるのでしょう。

提案や改善をどう感じる会社風土なのかしっかりと見極めて行動や言動を処さなければならないようですね。

でも改善の心は忘れないようにしたほうがいいのでしょうね。変化を好まない企業には根回しとか自然発生的に改善に向かうような雰囲気にすすめてゆくのが妥当な線なのかもしれませんね。

変化を好まない会社はよっぽど安定している会社なのか、それともいつか落ち目に陥ってゆくのか知りたい気もします(笑)。

うえしんさん
いつも目から鱗のコメントありがとうございます。

>改善というのは問題の発見であり、違和感や不思議さの指摘
>自分や集団のやっていることが批判されたり、攻撃されたりしたと感じると思います。


そうなんですよ。何の為にこれやるの?という疑問、違和感。
単純に知りたいだけ、それが発端。
でも私の場合物言いが「批判的」になっているせいかもしれないので、
そこんとこ注意しなければ..と思いました。


「他所から来た人にはわかるんだね..」そう言われたこともあります。
確かにそうだけど、長くそこに居る人だって危機感や改革精神があれば気付くはず。(あ、また批判的 )
企業や人は、成長・変化を謳いながら「現状維持」を好む側面も強いですよね。

あ、でもそこの会社はやたらと組織の移動(配置替え)が多かった。
何で?ってくらい。そこに変化の意図があったのか。部署名が変わっても、
働く人の意識が変らなければ企業の体質も変らない気が..(やっぱ批判的だ )

変化を好まない会社はどうなっていくか、私も知りたいです。
先代の大きな遺産や、一級の知的特許があれば、そういう体質でも長く大丈夫なんでしょうかね。
私自身、吹けば飛ぶような派遣社員なので、生活のためにも露骨な批判精神は控えます..

石蕗さん、こんにちは。

変えようとしたり、人と違うことをするだけで批判と捉えられますね。
だから仲の良い友だちはいつも同じ行動をしていつも同じところにいき、同じ服を着て同じ音楽を聞きますね。
人と違うことをすれば、たちまち批判と捉えられ、仲間外れになってしまう。
だからみんなと同じ行動をし、同じ服を着て、批判したり嫌いではないのですよ、あなたたちが好きなんですよとたえずメッセージしなければならない。
ちょっと違った行動をしただけで、もう敵に思われたり仲間ではなくなるのですね。
だから人はみんなと同じ行動、群れたがるというものですね。

こういう同調行動に染まった企業風土で改善や提案を出すのは、まるで敵国にひとりで戦いに出るようなもの。たちまち脅威に感じられたり、反感をもたれたり、仲間でないと見なされたり。集団というものはそういうものだと思います。

そういう風土では危機感や改革意識は危険なのでしょうね。
かれらにとって危機とは変化したり、違う行動をとる異分子のことなのでしょうね。
こういう意識をもっている集団の中で、改善や提案をおこなうのは、われわれ自身への攻撃だと見なされるのでしょうね。

変化を好まない企業は安定企業や成熟産業、老舗企業などのある程度の安定・完成をみこめる企業・産業なのでしょう。
そういう風土ではそういう風土に染まって、安定とくりかえしの安穏さを楽しむしかないのでしょう。

危機感や改善精神は必要かもしれませんし、安穏な環境の中で危機は進行していっているのかもしれませんが、こういう風土は失敗するまで気づかないか、または安定したまま継続できていってしまうのか、判断は難しいのでしょう。

風土に染まること、上の者、先行者を立てることは戦略だと捉えて、まずはかれらの安心や信頼をうることが大切なのでしょう。
改善や提案能力はそのあとにいつか必要とされるときがくるのかもしれませんね。
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