『日本縦断 徒歩の旅』 石川 文洋


日本縦断 徒歩の旅―65歳の挑戦 (岩波新書)
石川 文洋

日本縦断 徒歩の旅―65歳の挑戦 (岩波新書)


 旅は歩くのがいちばんだと思う。景色は歩行の速度がいちばん楽しめると思う。電車は途中の風景を通過し、車やバイクはサーキットのように山間風景を通りすぎる。むかしの人が苦労して山道や峠越えをした旅のほうがよほど旅らしい感動と喜びがあったと思う。いまは電車や車があるために目的主義になってしまって、途中の過程を楽しめないし、観光地と家という点でしか旅を楽しめないのはかなりつまらないと思う。

 歩くことが好きな人はいいと思う。私は散歩があまり好きでないというか、楽しめない。市街地で歩いていても人がいっぱいいて安心できるものではない。バイクに乗るようになってわかったのだが、バイクは速度が速いので市街地の鎧のような役割をしてくれて、他人からのままなざしを遮断してくれる安心がある。車などはもっと他人の視線を遮断して、TVを見ているような私空間の移動を可能にしているのだろう。観客や観察になり、まなざされる不安を解消するのである。車は楯であり、鎧であると思う。

 著者の石川文洋も徒歩の旅で経験しているように山間部の山道やトンネルは人が安心して歩けるようにできていない。車がものすごく飛ばす。徒歩では危険極まりない。山や田舎はまるで価値や意味のない通過点と見なしている。ハイキングや山登りをする人はわかるだろうが、そういうところの景色や空気は歩くだけでもとても気持ちいい。車に奪われてしまったのは残念というほかない。自転車ですら危なくて走れない。

 石川文洋の徒歩の旅について私はあまり感情移入もできなかったし、楽しめたとは思わない。有名な報道カメラマンで、TVや新聞に報告されてたくさんの人が応援していて、無名人・一般人の徒歩旅のように感情移入できなかった。旅というのはだれからも放っておかれて、見捨てられたような気持ちを味わうものではないかと私は思うのである。「なにもの」でもない、「みじめな」孤独な気持ちを味わうのが旅ではないかと思う(私だけか(泣))。石川文洋は応援されすぎていて、無名人の旅の想いが感じられなかったのが感情移入できなかった理由であると思う。

 期間は北海道の宗谷岬を7月15日に出発して、12月10に沖縄の喜屋武岬にゴールしている。5ヶ月かかっている。日本海岸側ぞいをずっと一直線に歩いているが、日本海を見ながら歩きたいという単純な気持ちからだという。一日30劼曚品發い燭修Δ澄N拘曚筌曠謄襪貿颪泙蝓好きな酒をたくさんのんでいる。せっかくのカメラマンなのにカラーの風景写真や人の姿がおおく写されていなくて、残念。自然の描写もすくなく、新書の体裁におさめるのにムリしたのか、そうおもしろくなかった。

 旅の写真篇はこちらの本のようだった。旅の紀行は写真のほうがダイレクトでわかりやすく、こちらのほうが旅に魅了されやすいものなのだろう。

 てくてくカメラ紀行―北海道~沖縄3300キロ (〓文庫)

 石川文洋は1938年(昭和13年)生まれで、バス停で石蹴りをする女の子たちを見て思う。自分の子どものころは貧乏で、そのために希望と夢があった。高校生になって働いたお金でスパゲッティを食べた感動はいまでも忘れられないという。TVでも中国の成功した実業家が稼いだお金ではじめて食べたケンタッキー・フライドチキンの感動が忘れられないといっていた。貧乏や苦しみはけっして悲劇のみの一面ではなくて、喜びや感動のひきはなせない土壌となるものなのだろう。哀れさ一色で飾るマスコミや、その反面である喜びに目を向けられないまなざしには注意したい。苦しいときにはこの対比を思い出したいものである。

 ラジオ放送で「人生で印象に残った言葉をひとつ」と問われて、著者はこう語っている。

「お金にならないことを一生懸命にするのは、最大の贅沢である。私の旅もお金にならないのに、毎日汗を流して歩いているが、とても贅沢な旅をしていると思います」と答えたが、どうもピンとこなかったようだ。




日本一周の徒歩の旅のサイト ネットの一般の人のほうが身近で楽しめるかも。
日本一周徒歩の旅
日の本の大和の国の細道を
徒歩で日本一周
目指せ!日本一周!! JINの徒歩旅行記


てくてくカメラ紀行―北海道~沖縄3300キロ (〓文庫) ベトナム戦争と平和―カラー版 (岩波新書 新赤版 (962)) 石川文洋のカメラマン人生 貧乏と夢編   エイ文庫 石川文洋のカメラマン人生 旅と酒編   エイ文庫 日本縦断徒歩の旅―夫婦で歩いた118日
by G-Tools

コメント

こんにちは。

私はよく家の近くを散歩がてらに歩くのですが、車と違って景色や空気が堪能できますがせいぜい30分位が限度ですね。徒歩で旅して末期ガンが治ったなんて人もいるそうですが、歩いて快適な道がほとんどないのでは?(幹線道路において)
多くの人は歩いて旅してもたしかにTVカメラや記者はついてこないですよね。乗り物で現地までいってそこで少々歩くのがむりなく歩きを
楽しめそうな気がします。

たいようさん、こんにちは。

私は近所を散歩したりしませんが、自転車ではよく近所を走ったりしていました。でもどうしても大きな川のある空が多い空間とか、公園のような一服できる場所ばかりにいってました。市街地って景色を楽しめる空間があまりないように感じます。

田舎や山間部を歩いて旅することはかなり景色を楽しめると思うのですが、車がものすごく飛ばしているうえ、歩道がなかったりしますので、まともに歩けるような道ではなくなっていますね。

旅行というのは観光主義とか目的主義になってしまっていますが、途中までの景色や寄り道にけっこういいところがあったりすると思うのですが、
いまはそういう喜びはまったくうち捨てられていますね。私はどうして途中の景色はこんなによかったり、またはもっと探してみないのかと思ったりしますが、旅行も業者に効率的にピックアップしてもらいたいのでしょうね。

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://ueshin.blog60.fc2.com/tb.php/1087-f26a3a86
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

 | HOME | 

これから読む本

カテゴリ展開メニュー

  • 自己啓発・成功哲学(66)
  • 芸術と創作と生計(24)
  • 集団の序列争いと権力闘争(53)
  • 国家と文明の優劣論(61)
  • おすすめ本特選集(23)
  • 古代レイライン探索(39)
  • YouTubeマイ音楽館(51)
  • 労働論・フリーター・ニート論(60)
  • 書評 労働・フリーター・ニート(56)
  • 社会批評(59)
  • 書評 社会学(72)
  • 書評 性・恋愛・結婚(69)
  • 風景写真(54)
  • 歴史・地理(70)
  • 書評 経済(88)
  • 新刊情報・注目本(49)
  • 書評 心理学(18)
  • 書評 歴史(33)
  • 知識論(20)
  • 読書(20)
  • 市場経済(10)
  • ネット関連(43)
  • CD評(11)
  • TV評(26)
  • 社会哲学(6)
  • 日常(26)
  • 恋愛至上主義社会論(2)
  • 恋愛・性・結婚(4)
  • 書評 小説(29)
  • 映画評(4)
  • 80年代ロック&ポップス・メモリー(20)
  • 手塚治虫ノスタルジア(23)
  • 書評 マンガ論、サブカル論(10)
  • 書評 哲学・現代思想(10)
  • つぶやき(1)
  • 人生論(10)
  • 未分類(3)
  • バイク・ツーリング(44)

リンク

このブログをリンクに追加する

ブログ内検索

Powered By FC2ブログ

Powered By FC2ブログ
ブログやるならFC2ブログ

RSSフィード

私のおすすめ本


『楽天主義セラピー』 リチャード・カールソン 春秋社
4393710312.09.MZZZZZZZ[1].jpg

思考なくして苦悩はなし。

『どう生きるか、自分の人生!』 ウェイン・ダイアー 知的生きかた文庫
gibun11.jpg

考えと現実は同一ではない。

『愛と怖れ』 ジャンポルスキー VOICE
aito.jpg

攻撃心は恐怖から生まれる。

『グルジェフとクリシュナムルティ』 ハリー・ベンジャミン コスモス・ライブラリー
79522366[1]12.jpg
 
頭の中の「私」とは絵空事である。

『捨てて強くなる―ひらき直りの人生論』 桜木健古 ワニ文庫
CIMG0001_111112.jpg

落ちこぼれる恐怖を捨てよ。

『キリストにならいて』 トマス・ア・ケンピス 岩波文庫
 CIMG0016_111.jpg

苦悩のない方法論。

『無境界』 ケン・ウィルバー 春秋社
050[1]1.jpg

思考や感情、自我は「私」ではない。

『孤独であるためのレッスン』 諸富祥彦 NHKブックス
4140019271.09.MZZZZZZZ[1].jpg
 
仲間外れを怖れずに孤独を喜ぶために。

『「心の専門家」はいらない』 小沢牧子 洋泉社新書y
4896916158.09.MZZZZZZZ[1].jpg

心理主義化社会を警戒せよ。

『この人と結婚していいの?』 石井希尚 新潮文庫 
4101294313.09.MZZZZZZZ[1].jpg

男と女のすれ違いの名著。

『菜根譚』 洪自誠 岩波文庫
sai1.jpg

人生の達観した名著。

『正統の哲学 異端の思想』 中川八洋 徳間書店
seito.jpg

民主主義と平等が自由を抹殺する。

『自己コントロールの檻』 森真一 講談社選書メチエ
giko.jpg

衝撃の心理学批判の本。


Thanks Goodpic.com