『びっくり先進国ドイツ』 熊谷 徹
びっくり先進国ドイツ (新潮文庫)
熊谷 徹

先ほど読んだ高尾慶子の感情的な『イギリス人はおかしい』とどうしても比べてしまうが、こちらの本はジャーナリストっぽいいかにも感情抜きのドイツ概括書になっている。間が抜けていて、原稿用紙のマスがすかすかで、マスを埋めるためだけの文章といった感がしてならなかった。教科書的におもしろくないのである。
イラストがおおくはさまれていて、ドイツ語が書かれているのでおやと思ったら著者のイラストであり、ほかの人に注文すると図中にドイツ語なんか書けないだろう。著者は文章よりイラストを書きたかった人なのかなと思う。
ドイツはどんな国だろうかというと、イメージでは日本人に近い勤勉な国というものがあると思う。第二次世界大戦では日本と同じような隣国への犯罪的な侵略をおこない、歴史的にも似ている。
私とすれば、好きなニーチェの国であり、ゲーテやカント、ヘーゲル、ハイデガーを生んだ流れがあるのですこしは憧憬がある。カントやヘーゲルあたりにはヨーロッパの精神的中心になったと思われるのだが、戦後はサルトルやカミュのフランスに思想の中心はうつった。伝統的な教養をもったドイツのような国がヒトラーのような犯罪的存在を生み出した、または支持した、ということでドイツの哲学的教養はヨーロッパから見放されていったのだろう。アドルノやホルクハイマーのフランクフルト学派は興味深いのだが。
ドイツでは一日十時間以上働かせたり、週末労働をさせると、多額の罰金を課せられたり、人事部長が「逮捕!」されたりするそうである。弱い立場の労働者はそこまでして徹底して守られないとならない存在だと思うのだが、日本の労働状況は犯罪がまかり通る権力者天国の「無法地帯」である。有給休暇にしても三十日は休むようになっており、「休暇のために働く」人生が公認されており、それでいて一人当たりの生産性は高い。日本という国の愚かさ、犯罪性を、この国と比べると目の当たりにする感がする。
私としてはこのような本を読んだのは他国の労働観や生活はどうなっているのかという興味が中心にあり、そういうところを学びたいと思っている。働き蜂一本やりでやってきて、それ以降の価値観が見つけられない踊り場にきている日本人にとって、労働と人生について教えてくれるような国との出会いは大切であると思うのである。
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