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08 20
2008

旅へ

『人生を変える旅』 蔵前 仁一


人生を変える旅 (幻冬舎文庫)
蔵前 仁一

人生を変える旅 (幻冬舎文庫)


 私はべつに海外の旅が好きではない。まとまったお金をいっきょに使う気になんかならないし、旅に出られるほどの稼ぎがいいというわけではない。外国の憧れの地があるというわけでもない。

 このような海外の旅の本を読んでいるのは、下川裕治の『日本を降りる若者』を読んだからである。日本の働き蜂社会からドロップアウトする方法に海外放浪するという手段もあることを知って、にわかに可能性を探ってみたくなったからである。海外放浪する人生について知ってみたいということで海外旅行本を読んでいるが、べつに私は旅に憧れるというわけではないのである。

 この本は雑誌の読者の投稿のようなかたちをとっている。旅とはなにか、カルチャーショックをうけたことや、生活を知る、人と会う、人生は旅、などの項目でそれぞれの旅行が語られている。まあ、旅好きな人が読む本である。

 旅との対極の人生は育った町で働き、その町から一歩も出ないで人生を過ごす生き方だろう。多くの人はこのような生き方をするだろうし、観光地への旅も申し訳程度にする人がもしかして多いんじゃないかと思う。自分の町しか知らないという人もけっこういるのかもしれない。それで満足するのならべつに旅なんかしなくていいだろうし、旅のような贅沢などできなかったり、旅などしたくもないと思っているかもしれない。生活の糧が町に縛られている以上、おおくの人はその地を離れることはできないのである。ふつうの人は生産の地に縛られている。旅とはその拘束から一時的に逃れること、またはその束縛をチャラにしてしまうことだろう。

 私たち日本人は日本の国内でおこったニュース、日本の国内の情報ばかり見聞きしている。外国のことは日本の情報のように多くないのである。そうして日本の制度や規範に縛られて、その社会を外側からながめたり、相対化する目というものを喪失し勝ちである。自分たちの暮らし、行動が常識で当たり前でそのほかの方法を考えられなくもなってしまう。旅や海外を見るということは、このような違った行動規範や文化を見るということでもあり、そのことによって閉塞化した文化のゆがみや偏りを正してゆくきっかけをつかむことになるのだろう。国家という区切りは、人生の幅を狭めてしまうことである。

 海外や国や人種が違えばまったくわれわれと異なる人たちが存在すると思いがちになるが、人間の基本的な感情は変わらないだろうし、どこの国の基本的な家族や友情や、愛情、喜怒哀楽は変わることもないのだろう。なにか国や人種が異なれば、そういうことすら通じないと思いがちになるが、旅はそのようなカベを忘れさせてくれるのだろう。

 旅は憧れの地やいってみたい場所があって、旅に行きたいという気持ちがもりあがるのだと思う。そのような憧れがなければ旅に出たいとも思わないのがあたりまえのことである。もし私にそのような地があればいってみたいものである。その前に貧乏人根性の金もつかいたくないし、稼ぐために時間を奪われることが嫌いな私は、先立つものすらないのである。


世界最低最悪の旅 (幻冬舎文庫) スローな旅にしてくれ (幻冬舎文庫) 新ゴーゴー・アジア (上) 新ゴーゴー・アジア〈下巻〉 アジアの地獄―それ行け!!バックパッカーズ〈2〉 (小学館文庫)
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Comment

旅について

私も先立つモノがありませんが、暗黒の思春期に読んだmasterキートンの舞台となった、イギリスのウェールズなんかは死ぬ前に行きたい気もします。

まあ、腹の底からではなく、それでも滓のような生でも命があるから、っていうていどの願望ですけどね。

ああ、うえしんさんグッドラック・イーチアザー!

線香花火四国さん、こんにちは。

こんかいの記事は旅好きな方には残念な文章だったと思います。
ただ旅本をつづけて読んでおきながら、手放しで海外旅行に興味があるわけでもなく、いきたいという願望がないというスタンスを、正直にのべておくことも必要だと思ったからです。

旅の本をたくさん読んでいるからといって、好きだとはかぎらないばあいもあるということですね。
私はどうも自分の住処を離れるような旅は、不安をもよわせるようですね。

キートンのウェールズにいきたいという願望があるのはすばらしいことですね。そういう一度はいってみたい土地や憧れがあるというのはときに、人生の支えとなりますね。

パウロ・コエーリョの『アルケミスト』という作品に、メッカに憧れて何度も行くことを夢見ることがひとつの場所で働きつづけることの支えとなっているエピソードが出てきて、私は思わずじわっと涙がこみあげてきたことがあります。ひじょうにけなげに思えました。手の届かない憧れがあり、なおかつ希望をもちつづける、というスタンスがかれを支えるというのは、人生全般にもいえることかもしませんね。

私はお金がないということで旅全般を夢見ないように捉えてきたように思いますが、そんなことを関係なしに憧れの地が見出せればすばらしいと思います。

ウェールズにはぜひいってくださいね。あるいは憧れを磨きつづけるのもいいのかもしれませんね。
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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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