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07 17
2008

バイク・ツーリング

『海とオートバイ』 内田 正洋



海とオートバイ (えい文庫 163)
内田 正洋

海とオートバイ (えい文庫 163)


 ツーリング紀行や旅行記というのは写真がたくさん収められているのが好きである。視覚にダイレクトに訴えてくるものは、一目瞭然なインパクトを与える。文章でどこそこに行き、どんなことがあり、風景はこんなものだと文字で語られても、行ったことも体験したこともない者には実感や興味もかき立てられないのである。ツーリング紀行や旅行記は文章家より、写真家のほうが適していると思う。

 私は壮大な風景に納まったバイクの姿が好きである。大きな風景にぽつんと孤独に走るバイクの姿に旅情をかき立てられる。自然の大きさとちっぽけな人間の対比に、主役としての風景や自然の偉大さや圧倒性、そして人間やバイクの卑小さを思い知らされる。そんな風景が好きである。

 この本にはそのような構図の写真が多く収められており、そして文章のほうもどこそこに行ったという紀行文ではなくて、風土や地名の起源、人類や日本人の移動や文化が考察されていて、ツーリングや旅行はこのような学問をひっぱりだしてくることで、おもしろみはもっと増すと思う。旅行は学問探索の知識に結びつくことで、深みと広がりを増すのである。

 方角の考察もまたいい。

北(キタ)は、汚し(キタナシ)という言葉から来たらしい。
沖縄では、北をニシと呼ぶ。ニシはイニシ(去にし)から来ている。
西日本では、帰ることを、イヌル(去ぬる)という。

南(ミナミ)とは水が多くある水辺のことらしい。
水面は(ミナモ)だし、日本の南は海の世界。

東(ヒガシ)は、ヒムカシ(日向かし)から来た言葉。
つまり太陽が出る方角に向かうこと。

西(ニシ)は、去にし。
シは方向を意味する。



 方角を言葉から読み解き、そして地名も言葉によって読み解く。

徳島はかつて阿波の国と呼ばれていた。……アワとはポリネシア語で海峡を意味する。
和歌山のワカもポリネシア語では、なんと船や船乗りや海人族を意味する。
さらに大阪の浪速は、それをナニ・ワという風にポリネシア語で解釈すると、ナニは美しいで、ワは河口。



 ツーリングで各地をめぐりながら、このような考察ができれば楽しいではないかと思う。また風土や土地はそのような疑問や考察を駆り立てるものである。深く、広く、学問の考察に結びついてほしいものである。新しい地に出会う新鮮さはそのような疑問や考察を思わず立ち上げてしまうものなのである。ツーリングや旅行によって、学問の考察と結びつくことが、たんなる観光消費との一線を引くだろう。

オートバイは自然に対峙する、気概のある人を育てるのだ。寒風の中を凍えながら疾走し、どしゃ降りの雨に打たれ、秒速30メートルの風に吹かれながらの旅。



人は簡単に死ぬ。そう自覚することが生きること。



 ツーリングや旅行はたんなる観光や享楽で終わるのではなくて、深い文化性や精神性が付与されてほしいものである。こういう姿勢は日常の生活や人生にも共通してくるものだと思う。享楽と精神性の違いは、旅の行動や結果に多くの違いを生み出すことだろう。人生や人格だって同じである。


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