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12 30
2016

おすすめ本特選集

2016年、わたしが読んだおすすめ本8冊

 2016年、わたしが読んだ本のなかでおすすめできる本8冊を紹介します。

 ことしは、「やらされ感とはなにか」という問いにずっとこだわって、読書をすすめました。

 なぜ会社の仕事のやらされ感に強い不快感を抱くのか、なぜ社会の規範や慣習に反発心を感じるのか、そういう根っこの部分を知りたい積年の気持ちがありました。

 さいしょはモチベーション論かなと思ったのですが、毒親や虐待の話に変わり、つぎは教育学なのかと思ったのですが、このジャンルには専門的すぎて踏み込めずに終わった感じです。

 わたしたちは自分のやりたいこと、好奇心をないがしろにされ、だれかの要求や強制にしたがうことばかりではないでしょうか。なぜそういう生を送るのか疑問を共有できる人にはとくにおすすめできる本です。


4788506793人を伸ばす力―内発と自律のすすめ
エドワード・L. デシ リチャード フラスト
新曜社 1999-06-10

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 モチベーション論の古典というべき本で、人からやらされることばかりに慣れてきた人には内省を迫る本ですね。

 学校や企業の要求には従ってきて、はたしてほんとうに自分のしたいこと、学びたいことをおこなってきたでしょうか。内発的動機にしたがわない他律的なものに生きてきた人は、「いつわりの自己」では生きてきてはないでしょうか。自分の人生を生きれていますか。


4794218044文庫 お母さんはしつけをしないで (草思社文庫)
長谷川博一
草思社 2011-02-05

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 しつけのどこが悪いのかと思われるかもしれませんが、しつけは優秀な子や品行方正な子を育てるのではなく、「支配と服従関係」で他人のいうことを聞かせる人間関係だけを学ばせるのだと教えた衝撃的な本。

 人は厳しくしつけられば、よい子どもに育つと思うのですが、外側から見れば、力で弱いものを従わせる関係をとり結んでいる模様だけが見えます。子どもは内容ではなく、親のふるまいだけを学びます。人は自分という主体をどうして見なくなってしまうのでしょうね。


4480431586子は親を救うために「心の病」になる (ちくま文庫)
高橋 和巳
筑摩書房 2014-04-09

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 子どもの心の問題が、かちっと親自身の心の問題と重なることを教えてくれるわかりやすい本ですね。それを鮮やかに見せてくれます。

 親があきらめたことを、子どもが苦しみ、そのことを親に訴えます。でも親はその痛みを子どものころにふたをしてしまって、自分の矛盾に気づきません。子どもが教えてくれるのは、自分の見ようとしない痛みや悩みなのかもしれませんね。

 そのぎゃくに、虐待は親がガマンしていたことを子どもがガマンできないことに苛立ちがマックスになるメカニズムがあるのでしょうね。


4106105209反省させると犯罪者になります (新潮新書)
岡本 茂樹
新潮社 2013-05-17

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 なぜ反省が悪いのかと疑問に思うと思いますが、とても腑に落ちる内容になっています。

 反省というのは、自分の言い分や不満をひとつも満たされない関係や思いを残します。自分の思いをいちども受け入れられず、肯定もされずにいると、自分の味方がだれもいない、わかってくれない敵ばかりの世界観をつくります。そういうことが重なれば、他人に対して敵対的、攻撃的な衝動が出てしまうのは時間の問題でしょう。

 よく傷ついた人は人にやさしくなれるといいますが、自分の痛みをうけいれたときだけであって、もし痛みにふたをする鈍感さで守ろうとすれば、他人の痛みにも鈍くなって平気で傷つけても気づかない鈍感な人になるのではないでしょうか。

 反省は自分の心にふたをすることです。


410137452X殺人者はいかに誕生したか: 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く (新潮文庫)
長谷川 博一
新潮社 2015-03-28

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 世間から最大の非難や攻撃をうける殺人者に対して、もっと違った目を向けようという問題提起の本です。

 かれらはたいがい親からひどい虐待を受けて育っています。虐待の連鎖のようなかたちで、子どもは社会に向けて仕返しをします。殺人というのは、そういうかつての被害者が、無意識にたたかおうとして、社会にお返してして加害者になってしまう虐待の連鎖の被害者ではないでしょうか。

 非難や攻撃が極悪人を変えるゆいいつの方法だと思われがちです。でもかれらはもともとそのような被害をうけつづけたからこそ、だれかにその被害をくりかえしたのではないでしょうか。魂の殺人はすでにおこなわれていたということです。


4004311292漱石―母に愛されなかった子 (岩波新書)
三浦 雅士
岩波書店 2008-04-22

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 瞠目の書ですね。まだまだこの本の内容をかみ砕けたとはいえないのですが、スリリングな謎解きにはずいぶんひきこまれます。

 自分というのは他者を見るように成り立っているということや、漱石の作品中にあらわれる漱石の「心のクセ」というのがいくども問われます。

 母に愛されなかった子が妻や女性にたいしてくりかえす問い、それから承認の問題。じゅうぶんに納得できたとはいえないのですが、深い問題意識をもたらす著作でした。


4788505444冷血の教育学―だれが子供の魂を殺したか
カール‐ハインツ マレ Carl‐Heinz Mallet
新曜社 1995-12

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 教育って、意志をたたきつぶして服従を教え込むための暴力機関であるのかとまで思わせる教育思想をたどった本ですね。

 アリス・ミラーの『魂の殺人』には教育がいかに残酷な虐待をおこなうかの闇教育と名づけた章を書いているのですが、その闇教育を教育思想の中にもっと深く検証したのがこの本といえます。

 アリス・ミラーは心理学とかアダルトチルドレンの文脈で捉えられますが、まさに教育こそが虐待者と見ていたのではないでしょうか。

 「意志を叩きつぶして、服従を教えろ」 それが教育の正体なのでしょうか。


4062881950反教育論 猿の思考から超猿の思考へ (講談社現代新書)
泉谷 閑示
講談社 2013-02-15

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 自分の問いがもやもやしてはっきりしなかったのですが、この本で「主体性の剥奪」こそを問いたかったのだとわかりました。

 教育というのは、ひたすら主体性や自発性というものを奪ってゆきますね。これって人間が成長するのではなくて、人間を上から押しつぶすことではないでしょうか。

 自発性を奪われた人間はほんとうに創造や成長がおこなわれるのでしょうか。それはたんに産業や社会の要請に合致した機械のようなパーツを生み出すだけではないでしょうか。

 知性を育てるのに自発性の剥奪ほど有害なものはないと思うのですが、教育では自分に興味ない知識の暗記や羅列ばかり教えられますね。教育はもしかして知識の破壊自体が真の目的なのでしょうか。

                   *

 「やらされ感とはなにか」という漠然とした問いを抱えて、毒親論や虐待論などに迷い込んだのですが、自分はなにを問いたいのだろう、これは自分の知りたいことなのかと迷いつづけました。

 意志や自発性をつぶす他者や親、教育といったものを問いたかったのでしょうか。主導権をとり戻せという声をさぐりたかったのでしょうか。

 ここらでこの問いから離れることになると思いますが、くすぶった問いはまたほかの文脈から眠りを覚ますかもしれません。

02 17
2016

おすすめ本特選集

ミニマリストの古典本10冊を紹介します。持たない生き方なんてぜんぜん新しくない

 ミリマリストが新しいライフスタイルとして紹介されたり、2015年の流行語大賞の候補になったり、叩かれたりしていますが、それを隠遁思想への回帰と見なすなら、日本の仏教の伝統であったのだから、なんら新しいことはありませんね。

 持たない生き方なんてブッダが提唱していたのであり、日本では鴨長明や西行、良寛にたどることができますし、アメリカではヘンリー・ソローが思い浮かびますね。

 若者の消費離れが話題になり、若者の草食化も語られ、断捨離と来て、ミニマリストの流れは、物質消費社会から、知識社会といわれる社会の大きなトレンドのひとつに行きつく先に思えます。

 ミニマリストとむかしの隠遁思想となにが違うのかよくわかりませんが、けっきょく物質消費に満足をもたらす生き方から距離をおくということなんでしょうね。

 ミニマリストの源流や歴史を探るということで、隠遁思想の古典本を紹介したいと思います。


  saigyouan.jpg ◀吉野の西行庵



清貧の思想 (文春文庫)
中野 孝次
文藝春秋
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 バブル崩壊後にベストセラーとなった持たない日本の仏教僧の生き方をたどった本です。この一冊で日本の隠遁思想のガイドブックとして多くを網羅していると思います。ミニマリストってけっきょく、この伝統に還ることではないでしょうか。



森の生活 (講談社学術文庫)
D・ヘンリー・ソロー
講談社
売り上げランキング: 41,287


 ヘンリー・ソローを外して、ミニマリストなんて語れないのではないでしょうか。労働やモノをもつことの深い問いかけが心をゆさぶります。われわれはなんてムダな暮らしをしているのかと思わされます。元祖フリーターとも自給自足の生活をしたといえますね。



宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)
W.ジェイムズ
岩波書店
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 心理学者の宗教研究ですが、こういうことが語られています。「私たちは、昔の人々が貧乏を理想化したのが何を意味したのかを想像する力さえ失っている。 その意味は、物質的な執着からの解放、物質的誘惑に屈しない魂、雄々しい不動心、私たちの所有物によってではなく、私たちの人となりあるいは行為によって生きぬこうという心、責任を問われずともいかなる瞬間にでも私たちの生命を投げ出す権利、――要するに、むしろ闘志的な覚悟、道徳的な戦闘に堪えるような態勢、ということであった」



知価革命―工業社会が終わる 知価社会が始まる (PHP文庫)
堺屋 太一
PHP研究所
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 けっきょく、堺屋太一の予言したように、物質に価値をおかない中世のように、知識社会というものは向かってゆくのではないでしょうか。中世は精神を重んじ、物質に価値を見出さない社会でした。大きな流れはこの方向にシフトしているのではないでしょうか。反物質主義な世の中。



日本の隠遁者たち (ちくま新書)
饗庭 孝男
筑摩書房
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 日本の隠遁思想、仏教思想をまとめてたどりたい人にはこのような本が役に立ちますね。ミニマリストって隠遁思想をめざすのでしょうか。西行とか、種田山頭火などが語られています。



陶淵明全集〈上〉 (岩波文庫)
陶 淵明
岩波書店
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 隠遁思想の起源をさかのぼれば、中国の四世紀の詩人、陶淵明にたどりつきます。「帰りなんいざ、まさに田園荒れなんとす」という詩はとても有名ですね。この時代から官僚の道を断って、脱俗に生きる道の称揚がおこなわれています。



ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

岩波書店
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 おシャカさんなんて、まさに家族を捨て、家を捨て、乞食に生きろと説いた元祖ミニマリストですね。いちばん古いとされている聖典です。



座右版 寒山拾得
座右版 寒山拾得
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久須本 文雄
講談社
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 中国の孤高の隠者として語られる寒山、拾得は、隠者をたどるとしたら少しは覚えておきたい詩人ですね。山水画、幽邃画のような境地の詩。



未来の生
未来の生
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ジッドゥ クリシュナムルティ
春秋社
売り上げランキング: 832,438


 クリシュナムルティはニューエイジの宗教家となるのですが、物質や所有にたいする鋭い心理的考察がミニマリストと似ているのではないでしょうか。モノが縛りつける不自由と精神の緊縛などを語っていますね。



反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか
ジョセフ・ヒース アンドルー・ポター
エヌティティ出版
売り上げランキング: 75,797


 ちょっとミニマリストからズレるかもしれませんが、60年代のヒッピー文化ってまさに反物質主義・反消費主義の運動でしたね。ヒッピーにミニマリストの源流をたどることもできますね。そういう意味でこの一冊をあげてみました。





 以上、ミリマリストの源流10冊をあげました。

 古典ギリシャの時代には、ディオゲネスやキュニコス派といった持たない派もいたので、ミニマリストは古典ギリシャの時代からいたといえますね。

 ミニマリストは、消費離れや草食化といった消費で満足を得られない流れのひとつにすぎないのではないでしょうか。その反物質主義の流れは、知識や精神に価値をおく知識社会へと流れつくのではないでしょうか。

 そういうことは仏教僧や隠遁僧が古くからおこなってきたわけですね。

 物質から知識、精神へのシフトが、小分けに順出しにあらわれているような気がします。精神主義・知識主義への回帰がおこっているといえるでしょうか。

 価値観のシフトはしずかに大きく、表面には小出しに秘かにおこっているではないでしょうか。気づいたら、大きな価値観の転換がおこなわれていたということになっているのでしょうね。


▼隠遁思想をむかし読んだころのブックレビューです。ミニマリストって仏教や中国思想に遡ることではないでしょうか。

 放浪と漂泊への想い 98/10/29

 東洋的心の平穏-中国人の達観-仏教 99/1/17


01 22
2016

おすすめ本特選集

金儲けブロガーが嫌いな人におススメの本、ハンス・アビングの『金と芸術』

 アフィリエイトや金儲けブロガーが嫌いない人が多いようですね。

 ブログやネットは無償で、ただ書きたい欲求、自分の記事がネットで認められるために書かれるべきだという意見も根強いですね。


 この構図って、芸術分野でくりひろげられてきた議論と同じだと思います。いわく、マーケットで売れる作品は質が低く、マーケットで売れない作品の中に質の高い芸術的な作品があるのだという意見。

 商業ミュージックや純文学・大衆文学、芥川賞・直木賞の対比でも語られてきたことと同じですね。

 ブログ界隈でも、この構図で語られようとしています。金儲けや大衆に迎合する記事なんて、気高いブロガーの行為ではないということですね。

 わたしたちはなぜ金儲け目的は汚いことで、無私で無償な行為は気高くて崇高な行為と思うのでしょうか。

 なぜ大衆的に売れる作品は、芸術的に質の高い作品とされないのでしょうか。

 わたしたちはなぜこういう行動につき動かされるのか意識したことはあるでしょうか。わたしたちは無償のブログによって、なにを手に入れようとしているのでしょうか。

 この芸術と商業の対立ってなんでしょうか。


 その構図をみごとに言語化した本が、ハンス・アビングの『金と芸術 アーティストはなぜ貧乏なのか』(グラムブックス)になります。

4903341003金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか
ハンス アビング
grambooks 2007-01-01

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 おススメするといっても3,672円の高い本でありますし、500ページの大部でありますし、かなり経済的にも専門的な書となります。政府の助成金についても多くを割かれています。図書館で探してみてはいかがでしょうか。

 芸術がめざすこと、貧乏でも儲からなくてもなぜ人は芸術家をめざすのか、芸術家はなぜ尊敬されるのかといった、ふだんわれわれがもやもやと捉えている事柄をみごとに言語化した本だと思います。もっとほかにかんたんにまとめた本があればよいのですが、ほかに類書を知らないのでこの本ほど適切なものが見当たりません。

 わたしたちはなぜ金儲けを汚いと思い、芸術的無償行為に憧れをいだくのでしょうか。

 これって、世俗の欲望や名誉を断とうとした坊さんや隠遁僧と同じ構図をめざしているようですね。

 利己主義と無私・利他主義の対立です。商業の利己主義に毒されていない無私・利他の行為が優れているという世間一般の思いが仮託されています。

 でも、わたしたちは金儲けやお金を稼がないで生活できる立場に、多くの人がいるものでしょうか。わたしたちの大半は、生活のために多くの時間と労力を捧げるしか生きてゆけないのではないでしょうか。

 世俗の欲望を断った坊さんのようにはなれない人はこの本を読んで、坊さんに憧れてしまう自分の欲求を言語化してみてはいかがでしょうか。

 かんたんにいくつかの文章を本書から引用しておきます。


「それは卓越化に用いられる。人々は自分がいかに有用性のない芸術にかかわっているかを他の人々に見せつけることによって印象づける。つまり、芸術の消費においては、自分がいかに日々の心配から解放されているかをアピールしたいのである」

「高いステータスを維持するためには、芸術は商業的な価値を否定し、経済を否定する」

「反マーケット的な態度は利益のためである。誰よりも非商業的な態度をとるアーティストや芸術関係者が、人一倍高いステータスを持ち、より多くの収入を得ていることがある」

「マーケットでは質に対する報酬はない」

「アーティストは他の職業の人々よりも内的に動機づけられているという意味において、相対的により「無私」である」

「アーティストは金銭的報酬を喜んで放棄する」

「アーティストは生産者であるよりも、むしろ消費者であるかもしれない」




 これらの引用文からも反商業や商業を否定することがなにをもたらすか見えてこないでしょうか。

 それは上流階級のステータスなんですね。

 わたしたちは経済的に自分の身を亡ぼす芸術ステータスの欲求につき動かされるだけでいいのでしょうか。

 なぜ金儲けをそんなに嫌うのか、芸術の先にはなにがあるのか、こういった無意識を言語化する意味で、この本をおススメします。ただすこし専門的すぎるかもしれませんが。

 わたしは金儲けブログには、欠点ももちろん多くありますが、読者を楽しませるための読書本位の視点があることが良いのではないかと思っています。読者を楽しませることでしかお金も注目も入ってこないのではないでしょうか。

 自己本位の趣味や楽しみだけでは、多くの人を巻き込む楽しみをもちえないのではないかと、自己反省もこめて思っています。


01 03
2016

おすすめ本特選集

これまでの年間オススメ本&ベスト本を集めてみました 2015~2004年版


 これまでの年間ベスト本&オススメ本をならべてみました。

 だいたいこんな本に感銘したとか、心に銘記されたということがわかると思います。

 ブログに載っている十年間分です。抜けているあいだは、たぶんベスト本を選択排除する意味を見いだせなかったのでしょう。

 巻末のリンクも合わせると、16年分のベスト本はウェブ上で公表していることになりますね。

 年間のベスト本に選ぶというのはやはりよっぽどの理由があると思いますので、印象に残った本は、本屋でぱらぱらと目を通していただくのも一考かと思います。

 ただ、現在からはあまり価値のない本もないといえないこともありません。



2015年

ザ・シークレット<ザ・シークレット> (角川書店単行本)ファッションの文化社会学失われた「売り上げ」を探せ!―商売繁盛の大冒険急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(ソフトバンク文庫)私に売れないモノはない! (Forest 2545 Shinsyo)

 『ザ・シークレット』は心の態度のあり方として参考になる本だと思っています。『失われた売り上げを探せ』はモノを買うのではなく、充実や人生の価値を買っているという概念の読み替えは重要ですね。



 ■2014年

昭和維新試論 (講談社学術文庫)橋川文三セレクション (岩波現代文庫)昭和の精神史 (中公クラシックス)日本精神史への序論太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)

 右傾化の懸念から、戦前の近代思想や右翼思想の勃興にさかのぼって読んだ本たちですね。橋川文三の問題意識が2010年代に活きる時代になりましたね。



2012年

ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)異界を旅する能 ワキという存在 (ちくま文庫)心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫)

初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)わが住む村 (岩波文庫)大阪アースダイバー裸はいつから恥ずかしくなったか―日本人の羞恥心 (新潮選書)

 物語の読解方法にこだわった年だったといえますね。『金枝篇』や『大阪アースダイバー』は現代にもひきつがれる古代精神の古層をほりおこしてくれますね。



 三年間くらいはベスト本を選んでいませんね。数冊をしぼる意味を見出せなかったり、線を引けるのかという思いがあったのかもしれません。



2009年

人生が楽になる 超シンプルなさとり方 (5次元文庫)マーフィー 人生は思うように変えられる―ここで無理と考えるか、考えないかで… (知的生きかた文庫)大きく考えることの魔術―あなたには無限の可能性がある人生がうまくいく、とっておきの考え方―自分を信じるだけで、いいことがどんどん起こる! (PHP文庫)

 心理学・自己啓発的な書物をえらんだ年だったですね。いずれも読まれることはオススメできる本ですね。



2008年

金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか日本を降りる若者たち (講談社現代新書)企業福祉の終焉 - 格差の時代にどう対応すべきか (中公新書)マンガでわかる売れる営業マン 売れない営業マン―ちょっと「できないフリ」がお客の心をつかむ (PHP文庫)

自分を奮い立たせるこの名文句―希望、勇気、自信…先賢の知恵に学べ (知的生きかた文庫)

 テーマがばらばらですが、なにがしか心に感銘をのこした本。



 ■2007年

女の子どうしって、ややこしい!チンパンジーの政治学―猿の権力と性 (産経新聞社の本)権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉 (角川文庫)

 集団内での権謀術数というものにこだわった年だったです。マキアヴェリズムな本たち。



2006年

新卒ゼロ社会―増殖する「擬態社員」 (角川oneテーマ21)国保崩壊―ルポルタージュ・見よ!「いのち切り捨て」政策の悲劇をもうひとつの愛を哲学する―ステイタスの不安「心」はからだの外にある―「エコロジカルな私」の哲学 (NHKブックス)

不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由 (新書y)大和の原像―知られざる古代太陽の道 (日本文化叢書 (3))労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

天照大神と前方後円墳の謎 (1983年) (ロッコウブックス)

 アラン・ド・ボトンの『もうひとつの愛を哲学する』はいまでもオススメ。もうひとつの愛とは世間に愛されること、承認欲求のことです。



2005年

 日本古代史と朝鮮歴史とはなにか司馬遼太郎と藤沢周平―「歴史と人間」をどう読むか南島イデオロギーの発生―柳田国男と植民地主義

tunazawa1.jpg帝国意識の解剖学表象の植民地帝国―近代フランスと人文諸科学308935951.jpg

tsikuma00111.jpg結婚の条件高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay

 この年は文明の序列、優劣意識のテーマにこだわった年で、おかげでベスト本は豊富になりました。先進国で優越感をいだいたり、後進国を馬鹿にするわたしたちの差別意識の根本にあるもの。『帝国意識の解剖学』がいちばんオススメかもしれません。



2004年

なぜ彼は本気で恋愛してくれないのか (ワニ文庫)この人と結婚していいの? (新潮文庫)


 男と女の感情のちがいに目を覚まさせてくれた本二冊がベストブック。この年はおもに古代史を読んでいたので、ほかは絞れず。



近年まれに見るベスト本 2004-1999年版


12 27
2015

おすすめ本特選集

2015年、おすすめできる5冊の本

 2015年、ことしも終わりですね。

 ことし読んだ中から、5冊のおすすめできる本を紹介します。

 思想・学術関連はあまり読んでいませんので見栄えの良い本はありませんが、まあ、わたし的にはよかった本をならべておきます。

 2015年、ことしは人生の終わりを覚悟するような出来事がありました。もう半年前になりますのでその深刻さはすっかり忘れたのですが、軽いパニック障害になって、メンタルクリニックに通っていました。治してくれたのは医者ではなく、ネットで見つけた経験者の治すための言葉でした。

 半年は昼からの短時間バイトをしていました。昼からの仕事がどんなに朝のゆっくりした時間をもたらしてくれるか。朝、仕事のためにたたき起こされる毎日のせわしなさ、心を亡くすことの日々を思い知らされました。

 朝の時間に短時間バイトの埋め合わせに、アフィリサイトをたちあげました。ほとんど売れませんので、アフィリ本ではなくて、販売本で売ることの学習をしていました。ブログだって、この社会に生きることだって、販売することに学ぶことがたくさんあることに気づかされた日々でした。

 ことしは失業保険の三か月分と、短時間バイトの70万ほどだけでなんとか生きてこれました。

 来年はよい年になるように祈りたいですね。

 おすすめできる5冊は販売関係の本が多くなりますが、販売関係についていない人だって、ネットや社会ではなにかを売っているような生き方をしていることは自覚したほうがよいと思いますね。ブログやツイッターで読者やフォロワーが増えないということは、店で売り上げが上がらない不安とまったく同じです。



ザ・シークレット (角川書店単行本)
KADOKAWA / 角川書店 (2015-11-10)
ロンダ・バーン


 読んで損はない本です。アマゾンではいまだにロングセラーですね。願えば叶うを引き寄せの法則といいかえたにすぎませんが、この意味は、いまの気分を明るい楽しい気分にすることの重要性です。たとえ叶わなくても、いまの気持ちをよいものに保つこと。だって気分を感じるのは、「いま」しかありませんから。



ファッションの文化社会学
ジョアン フィンケルシュタイン
せりか書房



 いまはファッションについて問われた本が少ないですね。ヴェブレンやジンメルなどの社会学の概括がわかって、納得する本です。ファッションって個性的でありたい願望と、みんなといっしょでありたい願望のせめぎあいといえますね。わたしたちはファッションによって社会での価値あるお金のようにふるまおうとしているのではないでしょうか。



失われた「売り上げ」を探せ!―商売繁盛の大冒険
小阪 裕司
フォレスト出版
売り上げランキング: 76,302


 あなたはモノを買っているとき、なにを買っているかわかっているでしょうか。著者はモノや商品を買っているのではない、人生の充実や生きている価値を買っているのだといいます。モノを買っているという誤った思い込みのヴェールをはがしてくれる本ですね。そこから店員は人生の楽しみを教えるマスター、エヴァンゲリスト(伝道師)なのだと説きます。「商品を買いたい人はこの世にいない」のです。ドラッカーもこのような概念の読み替えをよくいっていました。



急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(ソフトバンク文庫)
マルコム・グラッドウェル
SBクリエイティブ
売り上げランキング: 2,958


 販売だけの本と思うのは大きな間違いです。人が情報やクチコミをつたえる見えない伝達のありようを暴こうとした本です。ふつうマスコミの影響は目に見えますが、クチコミの大きさは見えませんね。その伝達のありようを、犯罪率や伝染病、「セサミストリート」などの深堀りによって読み解いてゆきます。各項目が濃密なので脳の情報処理が追いつかないと思える舌を巻く本ですね。鳥の目が必要なのに、すっかり森の中で虫の目だけになってしまうような濃い本です。



私に売れないモノはない! (Forest 2545 Shinsyo)
ジョー・ジラード
フォレスト出版
売り上げランキング: 18,291


 販売やセールスの本ではもう古典といってよい本ではないでしょうか。このジラードという人はひとりの客のうしろには250人のクチコミの伝達力があると悟りました。つまりいちど押し売りやだますような売り方をすると、250人の客をうしなってしまうということです。ぎゃくによい満足する買い物をすると、250人の客をつれてくる可能性があるということです。クチコミの伝達力を知った売り方でギネスに載るほどの売り上げを上げ、またこんにちのアフィリのような知人の紹介に報酬をあたえる方法を編み出していますね。知人のネットワークにこのジラードは商売をしていたわけですね。



 以上で5冊の紹介ですが、2014年は日本の右傾化に懸念を感じて、戦前の右翼思想の流れというものをつかもうと読書をつづけていました。2015年もその流れの把握は有効だと思います。こちらのほうも参考にしてみてください。

 2014年、ことしのベスト本6冊 「未来の黙示録」

昭和維新試論 (講談社学術文庫)橋川文三セレクション (岩波現代文庫)昭和の精神史 (中公クラシックス)日本精神史への序論太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)


02 19
2015

おすすめ本特選集

人文系文庫のKindle化状況を調べてみました。

 みなさんは電子書籍で本を読んでいますか。それとも紙本だけで読んでいますか。

 わたしも去年に遅まきながらKindleを買いましたが、ほしい本の多くが電子化されていないことが多いです。

 Kindleなら書店に買いにいく手間をはぶけ、ほしい本はポチッとダウンロードひとつですみますね。紙本みたいに場所もとりません。だけどほしい本の多くがKindle化されていません。

 ということで参考にまでに、各出版社のKindle化はどのような状況か、調べてみました。各文庫の件数はアマゾンでざっと調べたもので、ほかの出版社、違うシリーズの本などが混じっていて正確ではありませんが、だいたいの概要はつかめるのではないかと思います(2015年2月中旬調べ)。

 おすすめ本も何冊かつけてみました。



岩波文庫 217件/11,430件

 岩波文庫のような古典こそKindleに貯めておきたい気もしますが、はじまったばかりという感ですね。


 労働についての考え方が変わる古典ですね。

アラン 幸福論 (岩波文庫)
岩波書店 (2014-12-18)
売り上げランキング: 9,702

 アランも考えないしあわせを説きました。

善悪の彼岸 (岩波文庫)
岩波書店 (2015-01-01)
売り上げランキング: 57,410

ニーチェのキリスト教道徳への批判。


講談社学術文庫 300件/3,458件

 こちらもまだまだといった感じ。

マルクス・アウレリウス「自省録」 (講談社学術文庫)
講談社 (2013-03-05)
売り上げランキング: 11,097

二千年前のストア哲学の考えは自己啓発だったのではないかと思います。

太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)
講談社 (2014-10-24)
売り上げランキング: 46,418

時系列にメディアが戦争に呑みこまれていった様がわかります。すこし詳細すぎますが。

昭和維新試論 (講談社学術文庫)
講談社 (2013-10-25)
売り上げランキング: 75,903

昭和の軍国化へといたる精神史にはどのような流れがあったのでしょうか。


ちくま学芸文庫 54件/2,100件

 やっと手をつけはじめた感じですね。ちくま学芸文庫は絶版が多そうですから、電子化で復活するのがいいかもしれないですね。

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房 (2013-11-15)
売り上げランキング: 20,451

「多数者の専制」といった大衆への批判。

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房 (2014-10-31)
売り上げランキング: 19,444

日本の性道徳ってむかしはもっと厳しいと思ってましたが、庶民はひっくり返っていましたね。



▼ちなみに新書の件数も調べてみました。新書は新刊から電子化されているのでしょうか。

中公新書 631件/7,500件

 中公新書の件数がいちばん多そうですね。名著シリーズなんか電子で貯えたいかも。

現代哲学の名著 20世紀の20冊 (中公新書)
中央公論新社 (2014-07-11)
売り上げランキング: 66,918



ちくま新書 435件/3,468件

 多いほうなんでしょうか。

社会学の名著30 (ちくま新書)
筑摩書房 (2013-11-22)
売り上げランキング: 41,000



講談社現代新書 361件/5,336件

 現代思想や心理学の新書を復活してほしいです。

はじめての構造主義 (講談社現代新書)
講談社 (2014-02-21)
売り上げランキング: 9,476


岩波新書  219件/10,333件

 歴史が長いだけに電子化の件数は果てしなく遠いようですね。

就職とは何か-〈まともな働き方〉の条件 (岩波新書)
岩波書店 (2015-01-01)
売り上げランキング: 77,299



 電子書籍は紙本のように膨大な場所をとらない、ひとつのタブレットに膨大な書物を貯えられる、書店まで行かずにすぐに購入できる、といったメリットがあったはずです。でもほしい本が電子化されていなかったら、なかなかメリットを享受できるところまでいきませんね。その間に紙本のスペースがどんどん積もってゆきます。でもまだわたしの中でも電子書籍と紙本、どちらで読むべきかという答えが定まっていないところもありますが。


12 31
2014

おすすめ本特選集

2014年、ことしのベスト本6冊 「未来の黙示録」

 ことしのベスト本は、ひとつのテーマを深掘りしていて、そういった興味からでないとよさがわからない本かもしれない。

 ことしはずっと近代の精神史、戦前の思想史といったものを探っていた。戦前に市民社会がどうして戦争に向かっていったのか、そのプレ精神史を腑に落ちるようなかたちで実感しようともがいていた。そういった問題意識がないと、ちょっとこれらの本のよさはわからないかもしれない。

 2014年はヘイトスピーチ本や嫌韓嫌中本があふれ、日本の自画礼賛本がたくさん出された年である。右翼化、国家主義的な流れが一線を画しはじめた年である。そういった危機感と、長年の懸念であった日本の80年周期カタストロフィー説の検証というかたちで、明治から戦前の精神史をうきぼりにさせてみようと思っていた。

 明治の終りに西欧列強の仲間入りという国家目標を達成すると、青年たちのあいだには閉塞感と煩悶があふれた。左翼思想にかぶれるもの、右翼思想の勃興などをへて、戦争にのめりこんでいった。

 そのすがたは昭和の終わりに経済大国になり、ニートやフリーターになり目標もなく、ただよう現代の青年とそっくりである。大正、昭和にかけての精神史は現代にとっては「未来の黙示録」なのである。


 【追記】 天皇陛下も2015年の年頭所感にこういいました。「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」――「天皇陛下の新年の感想 全文



昭和維新試論 (講談社学術文庫)
橋川文三
講談社 (2013-10-25)


明治の煩悶青年がたどり、いきついた先を右翼思想の流れで読み解こうとした橋川文三がいちばん戦争へといたる精神史をうきぼりにした研究者ではなかったのかと思う。昭和維新へといたる精神史。

わたしの書評→「卓越した社会精神史――『昭和維新試論』 橋川 文三



4006002572橋川文三セレクション (岩波現代文庫)
橋川 文三 中島 岳志
岩波書店 2011-12-17

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国家目標を達成し、煩悶や恐慌にしずんだ日本の青年たちが向かった先は超国家主義や右翼思想だった。この「奇胎の40年」を生み出した精神史にいちばん肉薄したのが橋川文三ではなかったのか。

わたしの書評→「超国家主義の精神史に肉薄した一冊――『橋川文三セレクション』



昭和の精神史 (中公クラシックス)
昭和の精神史 (中公クラシックス)竹山 道雄

中央公論新社 2011-01
売り上げランキング : 8932


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八岐の大蛇のように分裂したのが戦時中の日本国家というものではなかったのか。戦前の超国家主義に導いたものはなんだったのか。資本主義や封建制の強化ではなくて、それを克服しようとした試みが泥沼の戦争へと導いたのではないのか。保守思想家の圧倒的な書物。

わたしの書評→「「主体」なき戦争国家――『昭和の精神史』 竹山 道雄



4314001712日本精神史への序論
宮川 透
紀伊國屋書店 1995-02

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忘れられた書物かもしれないが、わたしが読みたかったのは明治、大正、昭和にいたる精神の通史。戦争、超国家主義へといたる社会精神にどのようなことがおこったのか。そういった書物があまりにも少ない。

わたしの書評→「「日本への回帰」の警鐘――『日本精神史への序論』 宮川 透



4582766714昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)
半藤 一利
平凡社 2009-06-11

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これほどわかりやすく、読みやすい戦前と戦争史はないのではないかと思う。ベストセラーになっただけはある。

わたしの書評→「わかりやすく読みやすい――『昭和史 1926-1945』 半藤 一利



4061598171太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)
前坂 俊之
講談社 2007-05-11

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細かすぎてかなり読みづらい書物であるが、時系列で戦争へといたる道、言論封殺がおこなわれてゆくさまが理解できる書はそうないのではないかと思う。戦争を歓迎し、政府の弱腰を批判したのは国民や新聞であったのがよくわかる。

わたしの書評→「新聞はどのように死んでいったか――『太平洋戦争と新聞』 前坂 俊之






 ことしはいつの間にか半年休むことになった。四ヶ月しか働いていませんw

 夏の終わりにバイク転倒で肋骨を折った。寝起きすらたいへんだった。バイクとのつき合い方を考える。

 Kindle Fireを遅まきながら買った。古本のほうが安かったり、ほしい本が電子化されていなかったりして、活用は多くなされていない。寝転がってのネットは生活の一部になったが。

 2015年がみなさんにとってよい年であるように。ご多幸をお祈りしております。


11 28
2014

おすすめ本特選集

当サイトでことし売れた おすすめできる本ランキング10位

 当サイトでことし売れた本を手動で統計をとってみたら、意外に思えました。さいきんは話題にすることもなかった本が多く読まれていました。

 おすすめ本記事とかで選ばれたのかと思いますが、わたしのおすすめではありますが、読者の方がきちんと読むべきか嗅ぎ分けて選ばれていると思いました。自信をもっておすすめできる本が選ばれています。

 絶版本とか古本でしか手に入らないものも多いのですが、どうしてこんな名著が絶版になっているのかとつねづね疑問に思うのですが、読者の方には出版状況とかかわりのない自分にとってのインパクトを強く与える本と出あってほしいと思います。

 ちなみに当サイトのアマゾン収入など月にいくらかのこづかい程度でしかありませんし、これらの本の紹介料などすずめの涙です。統計はことしの11月末までのものです。



 第1位 38冊

4393710312リチャード・カールソンの楽天主義セラピー
リチャード カールソン Richard Carlson
春秋社 1998-12

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 この本がダントツ。わたしの超おすすめ本。ただの自己啓発に思えるか、認識がひっくりかえる書物になるかは、あなたの認識しだい。思考とはなにか、感情とどうかかわっているのか、禅や仏教の意味が開かれるかの瀬戸際の本。この本の意味がわかれば、悟りの意味がわかるかも。

■くわしい書評はこちら。『楽天主義セラピー


 第2位 24冊

4569666035人生がうまくいく、とっておきの考え方―自分を信じるだけで、いいことがどんどん起こる! (PHP文庫)
ジェリー ミンチントン Jerry Minchinton
PHP研究所 2006-03

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 この本も信じられないことに絶版になっています。劣等感にみちびく思考のあり方が「ウソだろ?」と思えるほど明晰に開示されています。自尊心がなぜ欠けているのかとお思いの方におすすめの一冊。ちなみに原題は「最高の自尊心」といったもの。

■くわしい書評はこちら。『人生がうまくいく、とっておきの考え方


 第3位 19冊

4584391793なぜ彼は本気で恋愛してくれないのか (ワニ文庫)
ハーブ ゴールドバーグ
ベストセラーズ 2003-12

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 おすすめの恋愛本から選んでくれたのだと思いますが、男としてほめられる性質が女性に冷たい態度に見えるあり方をうきぼりにしています。男は非情であり感情に冷酷であることが、男として求められるのです。

■書評はこちら。『なぜ彼は本気で恋愛してくれないのか


 第4位・第5位 15冊

この人と結婚していいの? 新潮文庫
新潮社 (2012-07-01)
石井希尚


 タイトルは違うと思いますが、男と女の違いに悩んだからこの一冊。どうして男は、どうして女はと思ったらこの本を読むしかない。

■書評はこちら。『この人と結婚していいの?


 第4位・第5位 15冊

4042893015権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉 (角川文庫)
ロバート グリーン ユースト エルファーズ Robert Greene
角川書店 2001-11

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 組織や集団のなかで権力争いや競争がおこったときにはこの本ほどおそろしさを発揮する本はないと思います。「翻弄されない」ではなくて、「権力を操って握る」本。すこし歴史的・詳細的な内容が濃すぎて読みやすくはありませんが、権謀術数の世界にふれた人にはぜひこの恐ろしい本を。下巻もぜひ。

■くわしい書評はこちら。『権力に翻弄されないための48の法則


 第6位 13冊

484540897X恋愛セラピー [セラピーシリーズ] (LONGSELLER MOOK FOR PLEASURE R)
松本 一起
ロングセラーズ 2012-02-12

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 恋愛できなかった人は自分に自信がなかったからだと教えてくれます。また嫉妬や恋人を責めるようになったときに、恋人を失いたいのですかと聞きます。恋愛って心の修行に思えます。

■書評はこちら。『恋愛セラピー


 第7位・第8位 11冊

483795572Xどう生きるか、自分の人生!―実は、人生はこんなに簡単なもの
ウエイン・W. ダイアー Wayne W. Dyer
三笠書房 1999-09

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 現代はだれかに文句をいっておれば、だれかやなにかを変えれば満足して満たされると思うことが多いのでしょうね。でもそれはみずから「犠牲者」になること。自分が「被害者」になる生き方を選ぶ考え方があまりにも蔓延しているのでしょうね。「自分ばかり損している、つらい目に会っている」と思う人はぜひこのダイアーのベストセラーを。


 第7位・第8位 11冊

4199060030人生が楽になる 超シンプルなさとり方 (5次元文庫)
エックハルト・トール
徳間書店 2007-11-09

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 5次元文庫ってオカルト・トンデモ本ばかりなのですが、この本は違います。「いまに生きろ」とよく聞く言葉が、時間のほんとうの姿を問うことで見えてくる本です。過去はほんとうにあるのでしょうか、未来は? あなたを悩ます出来事や過去はほんとうにあるのでしょうか。時間を問うことでわたしたちが「幻」に生きていたことを自覚させてくれます。これはオカルトとかスピリチュアルとかいって敬遠する人はたぶんこの世界をまともに認識できません。

■くわしい書評はこちら。『人生が楽になる超シンプルなさとり方


 第9位・第10位 10冊

4788907186大きく考えることの魔術―あなたには無限の可能性がある
ダビッド・J. シュワルツ David J. Schwartz
実務教育出版 2004-09

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 この本は凡百の自己啓発書と違うと思えました。なにが違うのかと自分でもうまく捉えられていませんが、たとえば会議である計画を話し合っているとき、できない理由はいくらでも出てきます。だけど「どのようにしたらできるか?」を問えば、アイデアがいくつも浮かびます。この本はそのような「どのようにしたら、できるようになるか」を教えてくれる本だと思います。

■くわしい書評はこちら。『大きく考えることの魔術


 第9位・第10位 10冊

4422412418ボディートーク入門―体が弾めば心も弾む
増田 明
創元社 1995-11

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 怒ったときや失恋したときにからだはどういう状態になっているかわかりますか。なぜそのような状態になるかわかりますか。そのような身体と感情の関係を、動物の怒りや恐れのあらわれとして見る見方を教えてくれる本です。心と身体のつながりをあまりにも忘れた時代であるから、身体という動物を飼いならすこともできない・知らないことになっているのでしょうね。

■くわしい書評はこちら。『ボディトーク入門



 以上で10冊になります。次点や数冊売れた本でもっといい本があるのにと思わないわけではありませんが、ほかのおすすめ本は当サイトでいつか見つけるかもしれませんね。


08 09
2013

おすすめ本特選集

創業100周年のおすすめ岩波文庫20選 哲学・社会書篇

 岩波書店が2013年8月、創業100周年をむかえたんだったね。古典・名著をながらく出してくれているおかげで時代をこえた名著と言葉にいつまでも出会うことができるね。これからも出版を維持していってほしいね。

 古典・名著というのは時代に古びず、いま出会っても大きな感動や考え方の転換をもたらす内容を秘めているものだと思う。

 わたしが出会って、考え方をおおいに修整を迫られた岩波文庫の20選。


                    ◆

4003202317菜根譚 (岩波文庫)
洪 自誠
岩波書店 1975-01-16

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『菜根譚』は人生のうちに一度は読んでほしい本。欲望の全開肯定の時代に、欲望の否定と諦観をかたった考え方に出逢うことはそうないと思う。テレビやスポーツ紙だけ見ていたら、欲望に歯止めをかけるという考え方とまず出逢うことはない。だれもが憧れる富や名誉にも苦しみや災いがあることを知っておくことは、欲望や富がかなわないことによって侮蔑される時代の慰めと安堵をもたらしてくれるだろう。


400338041Xキリストにならいて (岩波文庫)
トマス・ア・ケンピス
岩波書店 1960-05-25

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ケンピスの『キリストにならいて』は『聖書』についで世界で二番目に多く読まれたといわれるベストセラー。自己啓発の元祖といってもいい。これをキリスト教だといって敬遠するのは大きな損失。宗教や神を信じるのではなくて、心の平安を得るひとつの方便・考え方を手に入れるという姿勢で当るのがいい。人は人の非難や賞賛におおくの関心・心配事を寄せてしまうのだが、そういう煩いを神への依拠によってとりさる方法論が教えられている。宗教って心を安らげるための方便、ひとつの考え方と捉えるべきだと思う。


4003361016自省録 (岩波文庫)
マルクスアウレーリウス
岩波書店 2007-02-16

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ローマ時代の哲人王の書き残したものが二千年のときをへても読めるのってすごいね。とくに気をつけて読んでほしいのが思考や判断をさしおさえると苦悩や苦痛も去ってしまうという仏教の瞑想観と通じる教えをもっていることだ。思考や言葉がありもしない苦悩をわれわれにもたらすのだ。瞑想の原点の考え方と同じなのだが、仏教はそういう基本の考え方がなかなかつたわりにくいものだね。ほかに「死後の名声」についての考えも超越しているね。


4003363949道徳の系譜 (岩波文庫)
ニーチェ Friedrich Nietzsche
岩波書店 1964-10

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ニーチェの著作はほとんどアフォリズム・断想によって書かれているのだが、この書は論文形式。テーマが拡散しないまとまった読み物。ニーチェは道徳によって人間が画一化・均質化し、凡庸で堕落した「畜群」になってゆくのだと激しく非難した。善や道徳は人のおこないだけではなく、人の質も他者を傷つけないために劣った、より引き下げられたものになるのだと警告した。平等の理想なんてものもそうだね。道徳をなんとなく理想や最高のものと思っている人にはこの陥穽もあるということに気づかせてくれる。


4003411668自由論 (岩波文庫)
J.S. ミル John Stuart Mill
岩波書店 1971-10-16

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J.S.ミルの『自由論』もニーチェの『道徳の系譜』や『善悪の彼岸』でいっていたこととまったく同じことをいっていたと思うのだけど。慣習や規則が凡庸な人を育てる鋳型として役に立つとしても、天才や大いなる個性を持ったものにはかれが育つ環境を破壊してしまう。凡庸なものが型どおりに生きる社会がいいのか、天才が自由に息を吸える社会がいいのか。卑近な例でいえばオタク・バッシングなんてそういうものだったと思う。深さのないものにはその深さは犯罪の深さにしか共通のものを見出せないのだ。奇矯で奇妙なものを排除してゆくとのこるのは凡人ばかりの人畜無害な閉ざされた社会になるのではないか。


400323071X森の生活〈上〉ウォールデン (岩波文庫)
H.D. ソロー Henry David Thoreau
岩波書店 1995-09-18

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労働に疑問や懐疑をもった人のバイブルだね。家だのモノだの豪華なものをもつために、われわれはどうして四六時中働いていなければならないのだろうね。ほんとうにそういうモノが必要なのか。自分に必要なものは閑暇と孤独ではないのか。ソーローはそういう労働とモノを買うことのバカらしさに気づいて、自給自足の生活をいとなんだ。ソーローは日雇いやフリーターとして働いた。元祖ニートのような生き方を望んだ。われわれはソーローのような生き方を勇気をもって選べるか、家庭や富やモノ、将来設計、年金などを捨てて。


4003420810有閑階級の理論 (岩波文庫)
T. ヴェブレン Thorstein Veblen
岩波書店 1961-05-25

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岩波文庫では発売されていたり絶版になったりすることが多いので注意。「有閑階級」というのは富裕者のおヒマのある階級のことで、どうして「見せびらかし消費」がおこなわれるのかくわしく分析されている。わたしたちはどうして必要でもないモノや流行ものの服をたくさん買ったりするのだろうね。こういう言葉で分析された本と読むのと知らないのとでは消費の態度はおおいに変わってくると思う。こういう本を読むと消費の懐疑やバカらしさというものに気づいて、消費の抑制に役に立つと思う。


4003365623幸福論 (岩波文庫)
アラン Alain
岩波書店 1998-01-16

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はじめて読んだとき、ものを考えることが職業の哲学者がどうして考えないことの効用やよさを語るのか腑に落ちなかった。折にふれ、ものを考えない効用を説く。後にわたしはものを考えつづけることがゆううつや悲しみ、恐れなどの感情をつくり、その思考を断てばその感情もなくすことができるという考えに出逢って、アランの説いていた意味がよくわかるようになった。ものを考えることが好きな人にとってこそ、ものを考えないたいせつさが必要なんだろうね。


4003200810陶淵明全集〈上〉 (岩波文庫)
陶 淵明
岩波書店 1990-01-16

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「帰りなんいざ、田園まさに荒れなんとす」 陶淵明は官界への立身出世を断って田園での暮らしに立ち返った四世紀中国の詩人。中国は隠遁や脱俗の思想の系譜をながらくもってきて、日本もおおく影響をうけてきた。欲望を断つこと、分を知ること、心の安寧に価値をおくこと、中国や日本はそういった思想をながらくもってきたはずである。でもいまでは欲望肯定・全開の時代になっている。わたしたちは欲望や夢を追いつづけることが奨励される社会に苦しみを背負わされているのではないか。陶淵明の詩はそういう欲望からの逃避や安楽を垣間見させてくれるかもね。


4003364023宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)
W.ジェイムズ
岩波書店 1969-10-16

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心理学者のウィリアム・ジェイムズのこの本も物質主義に毒されない精神の安楽・高貴さをもとめた人たちがむかしにいたことを教えてくれるね。『清貧の思想』というのはなにも物質や富の否定ばかりではなく、まずもって精神の安楽・高貴さを追求したがゆえに物質に魅力をうしなうのだろうね。宗教というのは神を信じる信じないの論点より、精神に価値をおくか、物質に価値をおくかの判断のほうが大きいのかもしれないね。


400342221X世論〈上〉 (岩波文庫)
W.リップマン
岩波書店 1987-07-16

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リップマンの『世論』はなによりもわれわれがいかに間に合わせのイメージで外界像をつくりだしているかといったこの世の認識のありかたを解き明かしたことに価値があるね。われわれがもっている世界のありかたってたいがい人づてやマスコミによってつくられたイメージ、伝聞情報であって、ステレオタイプや勝手なイメージ、一面的な判断によってつくられたものだね。リップマンはそういうわれわれの歪曲された狭い世界観というものをつきつけてくるね。人は世の中のことをちゃんと認識できるのか、まず反省することがたいせつだろうね。


4003330811大乗起信論 (岩波文庫)

岩波書店 1994-01-17

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「一切の形あるものは本来、心にほかならないから、外界の物質的存在は真実には存在しない」。この『大乗起信論』はおおいなる疑問と謎を心に残す書である。心がはたらかなければ、外界や知覚は存在しないのか。それとも概念や思考の実体化のあやまちを説いているのか。外界や知覚は心がはたらかなければ存在することがないのはたしかだ。しかし心がはたらかなければそれは存在しなくなるのか。すべて虚妄や迷妄なのか。わたしには解けない謎を提出するこの書はいつまでも手放せない。


4003381912シレジウス瞑想詩集〈上〉 (岩波文庫)
A. シレジウス Angelus Silesius
岩波書店 1992-03-16

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絶版の時期のほうが多い本だろうね。17世紀の神秘主義的詩人だが、二行詩なので読みやすい。こういう宗教詩というのは宗教について語っていると読むのではなくて、心の安らかさについて語っているのだと読めば、信者でなくても役立てることができる。いまさらわたしたちはどうやって神を信じるというのか。もはや心理学的方法としか読むことができない。そういう読み方をすれば、どうすれば心が安らかになるのかといったヒントがたくさんつまっている。そういう方便として用いるべきである。


3412900.gifイギリスにおける労働者階級の状態―19世紀のロンドンとマンチェスター (上) (岩波文庫)
エンゲルス
岩波書店 1990-02-16

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社会主義者による書という偏見で読むのではなくて、無心でこの本の中に入ってみると19世紀イギリス人のおかれた貧困や飢餓、労働というものがどういうものだったか、リアルにつたわってくる本である。イギリスはむきだしの資本主義や労働搾取の世界を経験し、福祉や労働法といったものが遵守されない、存在しない労働の世界を生きた。こんにちに働くわれわれだって一皮むけば、このような恐ろしい労働無法と失業の飢餓にさいなまされる冷酷な経済の世の中を生きているのだ。エンゲルスの告発や怒り、警句がものすごくつき刺さってくる本である。


400323152Xどん底の人びと―ロンドン1902 (岩波文庫)
ジャック ロンドン 行方 昭夫
岩波書店 1995-10-16

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ロンドンの貧民街に浮浪者をよそおって潜入体験したジャック・ロンドンのルポである。ロンドン自身はアメリカで缶詰工場や渡り労働をおこなった貧しい労働者階級だったが、このルポでは悲惨で救いもない貧民街の状況や体験をつきはなしたように告発してゆく。社会主義へのパンフレットのような要請から告発の書となっているのだろうと勘ぐるほどの凄惨な状況がこれみよがしに羅列されてゆく。そういうことを割り引いて読むべきだろうが、写真入りのルポはリアルでなまなましい当時のすがたが眼前に見せられるかのような迫真の書になっている。


4003415019窮乏の農村―踏査報告 (岩波文庫 白 150-1)
猪俣 津南雄
岩波書店 1982-06-16

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農村や農業ってのどかで癒される田園風景のイメージがあるのだが、昭和恐慌下の農村の状況を語ったこの本を読めば、農村というものもどんなにカネに追いまくられた世知辛い世の中であるかよくわかる。いまでは農業はだいぶ変わったのかもしれないが、昭和はじめのころの農村の状況が丸ごとわかるようなすぐれた本である。


4003313518女工哀史 (岩波文庫 青 135-1)
細井 和喜蔵
岩波書店 1980-07-16

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ひところ『蟹工船』が読まれたようだが、繊維業で働いていた女工たちの過酷な労働状況をつぶさに報告したこの本のリアルさにかないっこない。私たちは労働者としてどこかの企業に勤めてお金を稼いでいるはずだが、むかしの人たちの労働生活がどのようなものだったか知ることは少ない。先人の女工たちの過酷な労働があったからこそ、こんにちの豊かといわれた日本がある。人柱のような女工たちの労働を見よ。


img_1427737_63420126_1.jpg金枝篇 (1) (岩波文庫)
フレイザー
岩波書店 1966-01

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岩波文庫ではながらく絶版で、ちくま学芸文庫や図説を講談社学術文庫で読めるけど復刊の願いもこめて。この歴史民族学的書物は「なぜ王は殺されるのか」というテーマをめぐって、似たような事例を古今東西からかき集めてくる。そのことによって「王殺し」の神話は世界じゅうで信仰されていたことがわかる。むかしの人や未開の人たちが「原型」として描いていた世界共通の宗教的世界観があったことをおしえてくれる。それは日本でも共有されていただろうし、こんにちでも正月やクリスマスの慣習に顔をのぞかせる世界観ではないのか。わたしたちの世界観・原始宗教の「原型」がここにある。


4003320611荘子 第1冊 内篇 (岩波文庫 青 206-1)
荘子
岩波書店 1971-10

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荘子の世界観にふれることは人間中心の世界ではなくて、天や宇宙という壮大なスケールからの世界観を思い知ることだと思う。こういった世界観にふれないことは金魚鉢の金魚のように生きることだ。また意外にも仏教の祖形となるような考え方も根底にあり、仏教を知るには老荘も欠かせないのではないかと思う。もうスケールや視野がてんで違う世界観。せせこましい人間の近視眼で終りたくなかったら必読の書。わたしの読み方として漢文なんて外国語だから現代語訳の意味だけ捉えたらいいと思う。


4003363221読書について 他二篇 (岩波文庫)
ショウペンハウエル Arthur Schopenhauer
岩波書店 1983-07

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ショーペンハウアーはなによりも新潮文庫の『幸福について』をすすめるのだが、ここは岩波文庫を紹介するところなので、この本を。「一日を多読に費やす勤勉な人間はしだいに自分でものを考える力を失ってゆく」。この一文でじゅうぶんに破壊力のある言葉だね。本を読むことよりもっとたいせつなことがある。それは自分の頭で考えることである。本を読むとはだれかが考えた思考の軌跡をたどることである。自分で考えるというのは先のレールがまったくない空白の道を歩くことである。自分で考えるということが「体験」をもたらす。本を読むというのはだれかの経験を又聞きするようなもの。心したいものだね。


12 31
2012

おすすめ本特選集

2012年、ことし読んでよかった本

 2012年に読んでよかった本、おすすめの本を紹介しておきますね。ぜんぶで8冊。並び方はたんに読んだ順。


4150310475ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)
宇野常寛
早川書房 2011-09-09

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 アニメや映画、ドラマの分析力・読解力がすごいと思いましたね。この物語はこういうことをいっていたのか、メッセージはこういうことだったのかと感嘆しきりの一冊でした。宇野常寛おそるべしと頭に叩き込まれた一冊でした。

 書評 スゴイ物語読解力―『ゼロ年代の想像力』 宇野常寛


4167801256映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)
内田 樹
文藝春秋 2011-04-08

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 これもレベルの高い物語分析を楽しませてくれる一冊。ただしジジェクやラカンなどの思想の借り物がほとんどで、サブタイトルが現代思想を学ぶだからとうぜんかもね。

 書評 ハイレベルな映画解釈―『映画の構造分析』 内田 樹


448042833X異界を旅する能 ワキという存在 (ちくま文庫)
安田 登
筑摩書房 2011-06-10

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 物語にはよく異界に出向いて再生してくるという構造が組み込まれていますね。わたしは能をまったく見たこともないのですけど、この本によってその構造の謎が解き明かされています。ただし後半は整理された前半と違って、幻滅させられましたが。

 書評 なぜ異界に再生があるのか―『異界を旅する能』 安田 登


4480426752心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫)
山岸 俊男
筑摩書房 2010-02-09

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 日本人は集団主義ではなかったという報告がなかなかナイスですね。「そうせざるをえないから、そうふるまっている」という例がいかに多いことか。人は自分の意志より集団の意志を尊重して、集団主義的に行動せざるをえなくなっている。いろいろ考察をひろげたくなる一冊でした。

 書評 「日本人は集団主義ではなかった」―『心でっかちな日本人』 山岸 俊男


4480087370初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)
ジェイムズ・ジョージ フレイザー James George Frazer
筑摩書房 2003-01

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 農耕社会の思考原理が理論的にわかる一冊ですね。なぜ王は殺されなければならなかったのか。世界じゅうからたくさんの似た風習や儀礼が集められてきて、それが世界に共有されていたらしいことがわかってきます。この考えは季節行事や年中行事の中にまだ生き残っていて、けっして滅び去ったわけではない世界観の原型ですね。

 書評 なぜ王は殺されなければならなかったのか?――『初版 金枝篇』 J.G.フレイザー


4003316223わが住む村 (岩波文庫 青 162-2)
山川 菊栄
岩波書店 1983-06-16

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 江戸から昭和にかけての神奈川県藤沢市の生活やうつりかわりが生き生きと写された佳作であり、このような優れた書き手がわが町にもいたらと思わせるほど、うらやましいものでした。

 書評 村にすぐれた書き手がいれば―『わが住む村』 山川 菊栄


4062178125大阪アースダイバー
中沢 新一
講談社 2012-10-11

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 中沢新一にしか描けない独特の人類学的大阪観でしょうね。太陽信仰のあった大阪をプロト大阪の底にすえます。そこから墓場とラブホテルの関係、刑場とお笑いの発展、ナニワ商人と砂州の関係などに切り込んでゆきます。

 書評 死や死者がともにある人類学的思考―『大阪アースダイバー』 中沢 新一


4106036614裸はいつから恥ずかしくなったか―日本人の羞恥心 (新潮選書)
中野 明
新潮社 2010-05

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 わたしたちは裸を隠す社会しか知らなくなっていますが、わずか150年前まで日本人は人前で裸をさらすことになんの抵抗もなかったようなのです。男も女も関係なく、若きも老いも。隠すことによって性的な意味、セクシーな領域がぎゃくにひろがったのではないでしょうか。謎と探究に火をつけそうな本です。

 書評 150年前、人前での裸が平気だった日本人―『裸はいつから恥ずかしくなったか』 中野 明

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プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。ビジネス書、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、精神世界、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

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