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04 20
2019

おすすめ本特選集

愚かさに平気――『捨てて強くなる』 櫻木 健古

CIMG0001_11112.jpg捨てて強くなる
―ひらき直りの人生論 (ワニ文庫)

櫻木 健古
ベストセラーズ 1984-01

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 やっぱりこの本をこえる本は見つけられないということで、また再読。84年文庫化のもう忘れられた、古本でも見かけなくなった著者の本である。

 開き直って愚かになり、人間の優劣のモノサシをこえるという本だが、ひろさちやくらいしかいまでも読めないかな。

 いまの世の中は優秀になることや賢くなること、有名になること、勝つことばかりすすめられて、そういう価値観から自由になる方法をあまり聞くことはない。そういう価値観をセットされると、負けたり、敗者復活ができない人生はミジメだけに染められることになる。その脱出法を、現代は説くことができているかなと疑問である。

 この本は突き抜けている。優秀や勝つこと、賢くなること、損得の価値観の狭さを教えて、愚かに落ちることから人間の比較序列の世界から抜け出す。私たちはこういった比較競争を抜け出した人生観をもつことができるだろうか。

 自分の自慢話ばかりする人がいる。過去の業績や自分がいかに優れているか説く人がいる。悪気はないのだろうが、自分の価値を証明しないと人から受け入れられない、見捨てられると思っているのだろう。自慢ばかりで相手にされなくなるとまたその自尊心を充足しないといけなくなるから、ますます自慢話に固執することになる。私たちはこのカラクリを突き放して、超越した立場に立てるだろうか。

 この本はそのような優秀さや賢さ、自分の価値を証明しなければならないと思い込んでいる人の解毒剤である。無我や無価値に生きることによって、人生のどんな評価や苦しさからも平気になる。愚かになって、開き直ってしまえば、たとえ負けようが、評価が悪かろうが、痛くもかゆくもない。そういう立場になる方法をこの本は説くのである。

 仏教の世俗から隠遁する思想もそういう立場をめざしてきたのだと思われる。老子・荘子の立場もこれとひじょうに近いものである。天からながめれば、人間の違いなどドングリの背比べ、羊の顔の違いくらいでしかない。そういった突き放した立場から、人間の比較競争から抜け出す方法がこの本で説かれている。

 無我を世間の目でみるとこういう人格になるのかという面が描かれているのだと思う。もう勝ち負けも優劣もこだわらないから、世間からはバカや愚か、人生を棒にふったといわれる人生をおくろうと、もう平気である。なんのこだわりも悲しみもない。世間の必死になる価値や評価にちっともこだわらないから、もうなにをいわれようと、どうバカにされようと、怒ることも悲しむこともない。

 無我の一面には感情をもうもたないという面がある。なにかが悲しい、なにかがミジメである、あることがツラいという評価や価値観をもたない。だからもう感情がわきあがることもない。人間の価値評価もない世界に生きるのである。愚かになることは、そういった価値モノサシから抜け出すことである。無我はバカにも通じるのである。

 謙遜や自分なんてたいしたことがないという自己卑下はまだ大きな我執がある、と櫻木健古は指摘する。ちっぽけな自我にしがみついて、自分をないものにまったくできていないといわれている。私たちはこの次元にまで「愚か」になれるだろうか。

 私たちは社会の評価や基準に自分の価値観を測って、喜んだり、悲しんだり、哀れんだりする一生を送る。その価値観から抜け出せないばかりか、一生、優秀や賢さをめざし、競争し、証明しなければならないという人生を送る人が大半ではないだろうか。

 そこから抜け出し、なんのこだわりもなく、勝ち負けも優劣もまったく離れて、愚かに自分をなくして生きることが、私たちはできるだろうか。「人格者」とよばれる人は、自分の優秀さや賢さを誇らない人だったのではないだろうか。ぎゃくにこんにちはそういったことばかり誇ることが人生のめざすべきゴールだと思っている人もたくさんいるのではないだろうか。

 愚かになって、だれとも競わず、勝ち負けも誇らず、ただ平気に生きる。平穏や幸福はそういった立場にあるのではないだろうか。

 こういったことをいってくれるのは、現代ではひろさちやくらいしかいないのかなあ。バカに開き直った愚か者は、現代ではひそかな賛美が贈られることはないのかな。


「強い自分」を引き出す本人生はあきらめるとうまくいくがんばらない、がんばらない (PHP文庫)阿呆の知恵  自分らしい人生を送るための25のヒント (角川oneテーマ21)ヘタな人生論より良寛の生きかた (河出文庫)


12 31
2018

おすすめ本特選集

2018年、ことし読んでよかった本6冊

2018年のまとめ

 2018年の読書は、去年にひきつづき、神秘思想や仏教の本を読んでいました。去年から公共図書館を利用するようになり、専門書の読書がいつまでも尽きることはありませんが、ひとつの区切りをつけました。仕上げに書きおろしのKindle本を出版しました。これからひとつのテーマを深堀りしたら、一冊の本を仕上げに書き上げる目論見はもちたいと思ってます。

 それからいちおう神秘思想の探究はおあずけにして、テーマを決めずに手あたり次第、読書しています。お金がなければ古本の百円本しか買えなかったころと違って、図書館ではいくらでも専門書が読めます。いままで高くて手も出せなかった単行本がいくらでも読める僥倖を味わっています。バイクで1時間くらいかかりますから、中央図書館の近くにひっこしたいです。

 ことしは盆くらいに昼からの5時間労働に切りをつけて、それから失業中です。年内中に決めたかったのですが、この状態で年を超えることになりました。悩ましい。

 2018年はだいたい神秘思想を読んでいたのですが、過去に読んだ本以上の進展はあまりのぞめず、それ以外に読んでよかった本があったということになりますね。


2018年の読んでよかった本6冊


反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか
ジョセフ・ヒース アンドルー・ポター
エヌティティ出版 (2014-09-24)


 カウンターカルチャーや反権力はなぜちっとも世の中を変えられないのかずっと疑問でしたが、この本を読んでカラクリが目の覚めるように見えましたね。

 反逆というのはたんに、画一化や隷従したおまえたち大衆とちがうとなって、消費の差異化競争の原動力になるということですね。たんにファッション消費に呑みこまれてゆくだけ。反逆はポーズにしかならない。この反省を胸に刻んで、それに呑みこまれないようにどう振る舞えばいいのか、考える足がかりができました。





 ハイデガーの『存在と時間』を読んだ方はとても歯が立たなかったという人は多いと思いますが、なぜ読めないのかこの本はしっかりと教えてくれますね。

 私たちは自分の存在を「ないもの」とはとても思えませんね。これこのとおり身体があるじゃないかと反発するのがふつうです。でも時間に注目すると、過去の私はもう存在しませんし、この瞬間は刻々と奈落に消滅していきますね。私たちは瞬間に消えてゆく存在ですね。この実感をしっかりともつことによって、ハイデガーが読めるようになるといったのがこの本です。私たちは心や意識の持続性や実在性にどっぷりとひたっていますから、ハイデガーは遠いものなのでしょうね。あなたは自分が眠っているとき、自分の存在を確認することができますか?



嘔吐 新訳
嘔吐 新訳
posted with amazlet at 18.12.31
J‐P・サルトル
人文書院



 中島義道が、時間が「ないこと」をこれほど浮き彫りにした本はないと絶賛していましたが、上記の本と同様に、時間の非実在性の感覚をしっかりとつかまないと、なにをいっている本かまったくわからなくなるのでしょうね。

 サルトルは価値や意味のないむき出しの世界にニヒリズムの嘔吐を感じるのですが、神秘思想を読んだ私にはそれは同時に解放の瞬間であると見なした伝統があるのも知っています。ハイデガーはその指摘をサルトルに知らせようとした手紙は出されなかったようですが、このふたりの実存主義者はもしかして、神秘思想家でもあったのか私には思えます。

 西洋哲学は言葉を絶対に手放しませんが、時間の非実在性は、言葉の非実在性にも通じ、言葉を手放せない人にはその感覚はつかめえないのだろうなと思います。サルトルを神秘思想だといった声はあまり聞かないのですが。





 人生の大きな問いとして、自分はこの世の中になにか生きた証しを残せるかということは、だれしも気になることではないでしょうか。私は基本的にはなにも残さないでいい、なにも残せはしないという立場ですが、まあまったく振り切れたわけでもありません。

 この本ではユダヤ教ラビがこの問いに答えようとするわけですが、宗教の服従や禁欲はよいことなのかという現代的な問いもちゃんと発しています。とくに現代人は競争や自分の利益のために、孤独になる傾向がありますね。そういう人生への懐疑はとても心を打ちます。

 ユダヤ教の人生に対するとても懐疑的な聖典をもとに説かれていますから、宗教的な警戒心はそうもたないでいい本だと思います。人生は無意味で、束の間かもしれないが、消えゆくとしてもささやかなものを味わい喜べ、そういった立場のようです。



ルバイヤート (岩波文庫 赤 783-1)
オマル・ハイヤーム
岩波書店



 11世紀のペルシア詩人の薄い本ですが、ここまで虚無主義をあけすけに語った詩は、もう笑うしかないですね。

 宇宙的スケールで、人生の無意味さ、無目的性を嘆く言葉が、こんなに語彙豊かに語られているとは思いませんでした。絶望をこえて、もう笑うしかない突き抜け具合。絶望の底には、大きな穴が開いていますね。もうなにもかも手放して、酒を飲むしかない。この詩は酒の宣伝かと思えるほど酒を讃える詩が出てきますが、中国詩にもそういうのがありましたね。





 そういえば、ドラマや映画に記憶喪失の物語がふえたなと思っていたのですが、なにを問われているのか言語化は、なかなかできがたいと思います。恋人の記憶が失われれば、私のなにが欠落し、私はなにゆえに悲しいのか。私たちは恋人の記憶になにを賭けているのか。

 記憶喪失のまとまった本は、私にはあまり見つけることができず、この本くらいしか見当たりません。この本はおもに20世紀くらいころからの記憶喪失物語をあつかっていて、なにもいまになって急にふえたわけではないことを教えてくれます。第一次世界大戦の戦争トラウマをきっかけに記憶喪失の物語は、フロイトの精神分析と絡めながら、つくられてゆくことになります。

 ただ、この本はデータベース的には強いですが、あまり解釈や読解には期待できない本なので、その作業はほかの人に任されることになりますね。

 私たちは思い出や記憶をとても大切にしますが、でも過去はもう地上のどこにも存在しなくなりますね。その存在しなくなったものをひじょうに愛するということは、一歩引いて考えれば、おかしなことではないでしょうか。この異化の目がほしいところです。





 以上で、ことし読んでよかった6冊の紹介は終わりです。

 ことしはKindleで二冊、自分の本を出しましたので、その本の紹介もおいておきます。

 『思考を捨てる安らかさ』は書きおろしです。私たちの言葉や心の認識のあやまちについて語っています。それを知ることが、永続的な心のコントロール法につながります。

 『労働と自由についての回顧録』はこのブログ上での労働論のまとめになっています。労働論の過去記事はそれにともなって削除しています。

 二冊の本をよろしくお願いします。







12 31
2017

おすすめ本特選集

2017年、ことし読んだおすすめの本 神秘思想ざんまい

 2017年は、神秘思想の本ばかり読んでいました。

 二十年前にトランスパーソナル心理学に出会って、その探究はしばらく下火になっていたのですが、ハラリの『サピエンス全史』の共同幻想論に出会うことによって、もういちど再考してみようかということになり、早や一年がたちます。

 したがって再読したすべての本は、わたしのおすすめになります。

 新しく出会った本のなかではおすすめは、三冊ほどしか出会えなかったといえます。

 ニサルガダッタ・マハラジの『アイ・アム・ザット』と、井筒俊彦『意識と本質』、シャンカラ『識別の至宝』がその三冊になります。

 ニサルガダッタ・マハラジは言語や観念の非実在をしっかりと語っていますし、井筒俊彦は言語化の極みをきわめた神秘思想だといえますし、シャンカラは古びた宗教観ともいえますが、ブラフマンの区別なき世界を知るには圧倒的です。

 アイ・アム・ザット 私は在る―ニサルガダッタ・マハラジとの対話意識と本質―精神的東洋を索めて (岩波文庫)識別の宝玉 完訳「ヴィヴェーカ・チューダーマニ」


 あと神秘思想ではないですが、映画のほうが好きで14回も見てしまった七月隆文の『ぼくは明日、昨日の君とデートする』もあげておきます。これは「いま・ここ」、「一期一会」の思想を、物語化した作品だと思っています。過去を共有できず、はじめての出会いは最後の別れ、この一瞬、瞬間にはそういう意味がふくまれているのではないでしょうか。

 ぼくは明日、昨日のきみとデートする (宝島社文庫)


 神秘思想や仏教は怪しくて非科学的な俗信であると思われる方もたくさんいると思いますが、これは言語の非実在性という言語を否定した思想だと見なすなら、そのラディカルさや根源性もわかってもらえるかなと思います。

 神秘思想は神や超越的実在との合一をめざすものと思われていますが、それには言語の否定、言語の非実在性を悟ることが不可欠になります。

 現代社会は、言語や思考の否定や害悪を知ることはほとんどありませんね。その道具はどんなマヤカシをつくるのか、どんな過ちに陥らせ、どんなトリックに騙されるのか、ほぼ考えることはありませんね。神秘思想や仏教というのは、言語フィクションの否定です。

 言語を手放しに推奨される社会で、思考の害悪に気づいたわたしは、瞑想によってむりやり「思考を捨てなければならない」とこの探究をはじめましたが、こんかいはその非実在性の実感にだいぶ近づけました。

 言語の非実在を実感することによって、実在と思われているものに歯向かい、抗うことは、存在しないものに向かってむりやり戦おうとすることだということも、よくわかるようになりました。

 言葉や思考、または感情といったものを実在すると見なしていると、むりやりそれを省いたり、変更したり、なくしたりしなければならないと思いますよね。恐怖という感情の実在性を感じていると、それをむりやり省こうとして、その感情にもっと力を与えてしまうことになります。いわゆる神経症や恐怖症といったものは、心の実在視からおこる間違った行為にあることが見えてきます。

 言語や思考の手放し賞賛の社会では、言語の実在化、目の前に本当にあるかのように思う錯覚に陥っています。その問題に気づかせるのが神秘思想や禅だったと思いますが、宗教や神の教義を否定する我々の社会では、そのアプローチすら閉じられているといえます。


 ことしは図書館をはじめて使いはじめました。本の自腹主義にこだわっていて、なぜか図書館には抵抗がありました。稼ぎがないのに、失業期間中でもなぜか図書館を利用せず、ブックオフのどうしようもない一般書ばかり読むことになっていました。

 図書館は中央図書館のような蔵書の多いところでないと役に立ちませんが、新刊では手に入れにくくなった専門書も読むこともできます。高くてあきらめていた専門書もたくさん読むことができます。どうしていままで図書館に抵抗があったのか残念に思います。手元に残しておきたい本も手元に残らないのは残念ですけどね。

 そうだ、自腹主義は自分の選択に慎重になること、自分のお金を出すという痛みに対して、それを読む時間と価値はあるのかと、じっくり考えることに価値があるのでしょうね。無料で手に入るなら、それを読むべきか慎重な判断はおろそかになります。お金をかけたものに対して元をとらなければという気持ちも強くなります。その知識をより自分のものに近づけるために、自分の痛みと交換する価値はあるのか、その判断を育てる力が自腹主義にはあるのでしょうね。


 来年もまだ神秘主義的探究をつづけるつもりですが、言語の懐疑につらぬかれたこれといった書が見当たらないんですね。意識研究や実在論もまた寄り道すぎるし。自分の懐疑心が羅針盤です。


12 30
2016

おすすめ本特選集

2016年、わたしが読んだおすすめ本8冊

 2016年、わたしが読んだ本のなかでおすすめできる本8冊を紹介します。

 ことしは、「やらされ感とはなにか」という問いにずっとこだわって、読書をすすめました。

 なぜ会社の仕事のやらされ感に強い不快感を抱くのか、なぜ社会の規範や慣習に反発心を感じるのか、そういう根っこの部分を知りたい積年の気持ちがありました。

 さいしょはモチベーション論かなと思ったのですが、毒親や虐待の話に変わり、つぎは教育学なのかと思ったのですが、このジャンルには専門的すぎて踏み込めずに終わった感じです。

 わたしたちは自分のやりたいこと、好奇心をないがしろにされ、だれかの要求や強制にしたがうことばかりではないでしょうか。なぜそういう生を送るのか疑問を共有できる人にはとくにおすすめできる本です。


4788506793人を伸ばす力―内発と自律のすすめ
エドワード・L. デシ リチャード フラスト
新曜社 1999-06-10

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 モチベーション論の古典というべき本で、人からやらされることばかりに慣れてきた人には内省を迫る本ですね。

 学校や企業の要求には従ってきて、はたしてほんとうに自分のしたいこと、学びたいことをおこなってきたでしょうか。内発的動機にしたがわない他律的なものに生きてきた人は、「いつわりの自己」では生きてきてはないでしょうか。自分の人生を生きれていますか。


4794218044文庫 お母さんはしつけをしないで (草思社文庫)
長谷川博一
草思社 2011-02-05

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 しつけのどこが悪いのかと思われるかもしれませんが、しつけは優秀な子や品行方正な子を育てるのではなく、「支配と服従関係」で他人のいうことを聞かせる人間関係だけを学ばせるのだと教えた衝撃的な本。

 人は厳しくしつけられば、よい子どもに育つと思うのですが、外側から見れば、力で弱いものを従わせる関係をとり結んでいる模様だけが見えます。子どもは内容ではなく、親のふるまいだけを学びます。人は自分という主体をどうして見なくなってしまうのでしょうね。


4480431586子は親を救うために「心の病」になる (ちくま文庫)
高橋 和巳
筑摩書房 2014-04-09

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 子どもの心の問題が、かちっと親自身の心の問題と重なることを教えてくれるわかりやすい本ですね。それを鮮やかに見せてくれます。

 親があきらめたことを、子どもが苦しみ、そのことを親に訴えます。でも親はその痛みを子どものころにふたをしてしまって、自分の矛盾に気づきません。子どもが教えてくれるのは、自分の見ようとしない痛みや悩みなのかもしれませんね。

 そのぎゃくに、虐待は親がガマンしていたことを子どもがガマンできないことに苛立ちがマックスになるメカニズムがあるのでしょうね。


4106105209反省させると犯罪者になります (新潮新書)
岡本 茂樹
新潮社 2013-05-17

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 なぜ反省が悪いのかと疑問に思うと思いますが、とても腑に落ちる内容になっています。

 反省というのは、自分の言い分や不満をひとつも満たされない関係や思いを残します。自分の思いをいちども受け入れられず、肯定もされずにいると、自分の味方がだれもいない、わかってくれない敵ばかりの世界観をつくります。そういうことが重なれば、他人に対して敵対的、攻撃的な衝動が出てしまうのは時間の問題でしょう。

 よく傷ついた人は人にやさしくなれるといいますが、自分の痛みをうけいれたときだけであって、もし痛みにふたをする鈍感さで守ろうとすれば、他人の痛みにも鈍くなって平気で傷つけても気づかない鈍感な人になるのではないでしょうか。

 反省は自分の心にふたをすることです。


410137452X殺人者はいかに誕生したか: 「十大凶悪事件」を獄中対話で読み解く (新潮文庫)
長谷川 博一
新潮社 2015-03-28

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 世間から最大の非難や攻撃をうける殺人者に対して、もっと違った目を向けようという問題提起の本です。

 かれらはたいがい親からひどい虐待を受けて育っています。虐待の連鎖のようなかたちで、子どもは社会に向けて仕返しをします。殺人というのは、そういうかつての被害者が、無意識にたたかおうとして、社会にお返してして加害者になってしまう虐待の連鎖の被害者ではないでしょうか。

 非難や攻撃が極悪人を変えるゆいいつの方法だと思われがちです。でもかれらはもともとそのような被害をうけつづけたからこそ、だれかにその被害をくりかえしたのではないでしょうか。魂の殺人はすでにおこなわれていたということです。


4004311292漱石―母に愛されなかった子 (岩波新書)
三浦 雅士
岩波書店 2008-04-22

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 瞠目の書ですね。まだまだこの本の内容をかみ砕けたとはいえないのですが、スリリングな謎解きにはずいぶんひきこまれます。

 自分というのは他者を見るように成り立っているということや、漱石の作品中にあらわれる漱石の「心のクセ」というのがいくども問われます。

 母に愛されなかった子が妻や女性にたいしてくりかえす問い、それから承認の問題。じゅうぶんに納得できたとはいえないのですが、深い問題意識をもたらす著作でした。


4788505444冷血の教育学―だれが子供の魂を殺したか
カール‐ハインツ マレ Carl‐Heinz Mallet
新曜社 1995-12

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 教育って、意志をたたきつぶして服従を教え込むための暴力機関であるのかとまで思わせる教育思想をたどった本ですね。

 アリス・ミラーの『魂の殺人』には教育がいかに残酷な虐待をおこなうかの闇教育と名づけた章を書いているのですが、その闇教育を教育思想の中にもっと深く検証したのがこの本といえます。

 アリス・ミラーは心理学とかアダルトチルドレンの文脈で捉えられますが、まさに教育こそが虐待者と見ていたのではないでしょうか。

 「意志を叩きつぶして、服従を教えろ」 それが教育の正体なのでしょうか。


4062881950反教育論 猿の思考から超猿の思考へ (講談社現代新書)
泉谷 閑示
講談社 2013-02-15

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 自分の問いがもやもやしてはっきりしなかったのですが、この本で「主体性の剥奪」こそを問いたかったのだとわかりました。

 教育というのは、ひたすら主体性や自発性というものを奪ってゆきますね。これって人間が成長するのではなくて、人間を上から押しつぶすことではないでしょうか。

 自発性を奪われた人間はほんとうに創造や成長がおこなわれるのでしょうか。それはたんに産業や社会の要請に合致した機械のようなパーツを生み出すだけではないでしょうか。

 知性を育てるのに自発性の剥奪ほど有害なものはないと思うのですが、教育では自分に興味ない知識の暗記や羅列ばかり教えられますね。教育はもしかして知識の破壊自体が真の目的なのでしょうか。

                   *

 「やらされ感とはなにか」という漠然とした問いを抱えて、毒親論や虐待論などに迷い込んだのですが、自分はなにを問いたいのだろう、これは自分の知りたいことなのかと迷いつづけました。

 意志や自発性をつぶす他者や親、教育といったものを問いたかったのでしょうか。主導権をとり戻せという声をさぐりたかったのでしょうか。

 ここらでこの問いから離れることになると思いますが、くすぶった問いはまたほかの文脈から眠りを覚ますかもしれません。

02 17
2016

おすすめ本特選集

ミニマリストの古典本10冊を紹介します。持たない生き方なんてぜんぜん新しくない

 ミリマリストが新しいライフスタイルとして紹介されたり、2015年の流行語大賞の候補になったり、叩かれたりしていますが、それを隠遁思想への回帰と見なすなら、日本の仏教の伝統であったのだから、なんら新しいことはありませんね。

 持たない生き方なんてブッダが提唱していたのであり、日本では鴨長明や西行、良寛にたどることができますし、アメリカではヘンリー・ソローが思い浮かびますね。

 若者の消費離れが話題になり、若者の草食化も語られ、断捨離と来て、ミニマリストの流れは、物質消費社会から、知識社会といわれる社会の大きなトレンドのひとつに行きつく先に思えます。

 ミニマリストとむかしの隠遁思想となにが違うのかよくわかりませんが、けっきょく物質消費に満足をもたらす生き方から距離をおくということなんでしょうね。

 ミニマリストの源流や歴史を探るということで、隠遁思想の古典本を紹介したいと思います。


  saigyouan.jpg ◀吉野の西行庵



清貧の思想 (文春文庫)
中野 孝次
文藝春秋
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 バブル崩壊後にベストセラーとなった持たない日本の仏教僧の生き方をたどった本です。この一冊で日本の隠遁思想のガイドブックとして多くを網羅していると思います。ミニマリストってけっきょく、この伝統に還ることではないでしょうか。



森の生活 (講談社学術文庫)
D・ヘンリー・ソロー
講談社
売り上げランキング: 41,287


 ヘンリー・ソローを外して、ミニマリストなんて語れないのではないでしょうか。労働やモノをもつことの深い問いかけが心をゆさぶります。われわれはなんてムダな暮らしをしているのかと思わされます。元祖フリーターとも自給自足の生活をしたといえますね。



宗教的経験の諸相 上 (岩波文庫 青 640-2)
W.ジェイムズ
岩波書店
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 心理学者の宗教研究ですが、こういうことが語られています。「私たちは、昔の人々が貧乏を理想化したのが何を意味したのかを想像する力さえ失っている。 その意味は、物質的な執着からの解放、物質的誘惑に屈しない魂、雄々しい不動心、私たちの所有物によってではなく、私たちの人となりあるいは行為によって生きぬこうという心、責任を問われずともいかなる瞬間にでも私たちの生命を投げ出す権利、――要するに、むしろ闘志的な覚悟、道徳的な戦闘に堪えるような態勢、ということであった」



知価革命―工業社会が終わる 知価社会が始まる (PHP文庫)
堺屋 太一
PHP研究所
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 けっきょく、堺屋太一の予言したように、物質に価値をおかない中世のように、知識社会というものは向かってゆくのではないでしょうか。中世は精神を重んじ、物質に価値を見出さない社会でした。大きな流れはこの方向にシフトしているのではないでしょうか。反物質主義な世の中。



日本の隠遁者たち (ちくま新書)
饗庭 孝男
筑摩書房
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 日本の隠遁思想、仏教思想をまとめてたどりたい人にはこのような本が役に立ちますね。ミニマリストって隠遁思想をめざすのでしょうか。西行とか、種田山頭火などが語られています。



陶淵明全集〈上〉 (岩波文庫)
陶 淵明
岩波書店
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 隠遁思想の起源をさかのぼれば、中国の四世紀の詩人、陶淵明にたどりつきます。「帰りなんいざ、まさに田園荒れなんとす」という詩はとても有名ですね。この時代から官僚の道を断って、脱俗に生きる道の称揚がおこなわれています。



ブッダのことば―スッタニパータ (岩波文庫)

岩波書店
売り上げランキング: 1,518


 おシャカさんなんて、まさに家族を捨て、家を捨て、乞食に生きろと説いた元祖ミニマリストですね。いちばん古いとされている聖典です。



座右版 寒山拾得
座右版 寒山拾得
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久須本 文雄
講談社
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 中国の孤高の隠者として語られる寒山、拾得は、隠者をたどるとしたら少しは覚えておきたい詩人ですね。山水画、幽邃画のような境地の詩。



未来の生
未来の生
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ジッドゥ クリシュナムルティ
春秋社
売り上げランキング: 832,438


 クリシュナムルティはニューエイジの宗教家となるのですが、物質や所有にたいする鋭い心理的考察がミニマリストと似ているのではないでしょうか。モノが縛りつける不自由と精神の緊縛などを語っていますね。



反逆の神話:カウンターカルチャーはいかにして消費文化になったか
ジョセフ・ヒース アンドルー・ポター
エヌティティ出版
売り上げランキング: 75,797


 ちょっとミニマリストからズレるかもしれませんが、60年代のヒッピー文化ってまさに反物質主義・反消費主義の運動でしたね。ヒッピーにミニマリストの源流をたどることもできますね。そういう意味でこの一冊をあげてみました。





 以上、ミリマリストの源流10冊をあげました。

 古典ギリシャの時代には、ディオゲネスやキュニコス派といった持たない派もいたので、ミニマリストは古典ギリシャの時代からいたといえますね。

 ミニマリストは、消費離れや草食化といった消費で満足を得られない流れのひとつにすぎないのではないでしょうか。その反物質主義の流れは、知識や精神に価値をおく知識社会へと流れつくのではないでしょうか。

 そういうことは仏教僧や隠遁僧が古くからおこなってきたわけですね。

 物質から知識、精神へのシフトが、小分けに順出しにあらわれているような気がします。精神主義・知識主義への回帰がおこっているといえるでしょうか。

 価値観のシフトはしずかに大きく、表面には小出しに秘かにおこっているではないでしょうか。気づいたら、大きな価値観の転換がおこなわれていたということになっているのでしょうね。


▼隠遁思想をむかし読んだころのブックレビューです。ミニマリストって仏教や中国思想に遡ることではないでしょうか。

 放浪と漂泊への想い 98/10/29

 東洋的心の平穏-中国人の達観-仏教 99/1/17


01 22
2016

おすすめ本特選集

金儲けブロガーが嫌いな人におススメの本、ハンス・アビングの『金と芸術』

 アフィリエイトや金儲けブロガーが嫌いない人が多いようですね。

 ブログやネットは無償で、ただ書きたい欲求、自分の記事がネットで認められるために書かれるべきだという意見も根強いですね。


 この構図って、芸術分野でくりひろげられてきた議論と同じだと思います。いわく、マーケットで売れる作品は質が低く、マーケットで売れない作品の中に質の高い芸術的な作品があるのだという意見。

 商業ミュージックや純文学・大衆文学、芥川賞・直木賞の対比でも語られてきたことと同じですね。

 ブログ界隈でも、この構図で語られようとしています。金儲けや大衆に迎合する記事なんて、気高いブロガーの行為ではないということですね。

 わたしたちはなぜ金儲け目的は汚いことで、無私で無償な行為は気高くて崇高な行為と思うのでしょうか。

 なぜ大衆的に売れる作品は、芸術的に質の高い作品とされないのでしょうか。

 わたしたちはなぜこういう行動につき動かされるのか意識したことはあるでしょうか。わたしたちは無償のブログによって、なにを手に入れようとしているのでしょうか。

 この芸術と商業の対立ってなんでしょうか。


 その構図をみごとに言語化した本が、ハンス・アビングの『金と芸術 アーティストはなぜ貧乏なのか』(グラムブックス)になります。

4903341003金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか
ハンス アビング
grambooks 2007-01-01

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 おススメするといっても3,672円の高い本でありますし、500ページの大部でありますし、かなり経済的にも専門的な書となります。政府の助成金についても多くを割かれています。図書館で探してみてはいかがでしょうか。

 芸術がめざすこと、貧乏でも儲からなくてもなぜ人は芸術家をめざすのか、芸術家はなぜ尊敬されるのかといった、ふだんわれわれがもやもやと捉えている事柄をみごとに言語化した本だと思います。もっとほかにかんたんにまとめた本があればよいのですが、ほかに類書を知らないのでこの本ほど適切なものが見当たりません。

 わたしたちはなぜ金儲けを汚いと思い、芸術的無償行為に憧れをいだくのでしょうか。

 これって、世俗の欲望や名誉を断とうとした坊さんや隠遁僧と同じ構図をめざしているようですね。

 利己主義と無私・利他主義の対立です。商業の利己主義に毒されていない無私・利他の行為が優れているという世間一般の思いが仮託されています。

 でも、わたしたちは金儲けやお金を稼がないで生活できる立場に、多くの人がいるものでしょうか。わたしたちの大半は、生活のために多くの時間と労力を捧げるしか生きてゆけないのではないでしょうか。

 世俗の欲望を断った坊さんのようにはなれない人はこの本を読んで、坊さんに憧れてしまう自分の欲求を言語化してみてはいかがでしょうか。

 かんたんにいくつかの文章を本書から引用しておきます。


「それは卓越化に用いられる。人々は自分がいかに有用性のない芸術にかかわっているかを他の人々に見せつけることによって印象づける。つまり、芸術の消費においては、自分がいかに日々の心配から解放されているかをアピールしたいのである」

「高いステータスを維持するためには、芸術は商業的な価値を否定し、経済を否定する」

「反マーケット的な態度は利益のためである。誰よりも非商業的な態度をとるアーティストや芸術関係者が、人一倍高いステータスを持ち、より多くの収入を得ていることがある」

「マーケットでは質に対する報酬はない」

「アーティストは他の職業の人々よりも内的に動機づけられているという意味において、相対的により「無私」である」

「アーティストは金銭的報酬を喜んで放棄する」

「アーティストは生産者であるよりも、むしろ消費者であるかもしれない」




 これらの引用文からも反商業や商業を否定することがなにをもたらすか見えてこないでしょうか。

 それは上流階級のステータスなんですね。

 わたしたちは経済的に自分の身を亡ぼす芸術ステータスの欲求につき動かされるだけでいいのでしょうか。

 なぜ金儲けをそんなに嫌うのか、芸術の先にはなにがあるのか、こういった無意識を言語化する意味で、この本をおススメします。ただすこし専門的すぎるかもしれませんが。

 わたしは金儲けブログには、欠点ももちろん多くありますが、読者を楽しませるための読書本位の視点があることが良いのではないかと思っています。読者を楽しませることでしかお金も注目も入ってこないのではないでしょうか。

 自己本位の趣味や楽しみだけでは、多くの人を巻き込む楽しみをもちえないのではないかと、自己反省もこめて思っています。


01 03
2016

おすすめ本特選集

これまでの年間オススメ本&ベスト本を集めてみました 2015~2004年版


 これまでの年間ベスト本&オススメ本をならべてみました。

 だいたいこんな本に感銘したとか、心に銘記されたということがわかると思います。

 ブログに載っている十年間分です。抜けているあいだは、たぶんベスト本を選択排除する意味を見いだせなかったのでしょう。

 巻末のリンクも合わせると、16年分のベスト本はウェブ上で公表していることになりますね。

 年間のベスト本に選ぶというのはやはりよっぽどの理由があると思いますので、印象に残った本は、本屋でぱらぱらと目を通していただくのも一考かと思います。

 ただ、現在からはあまり価値のない本もないといえないこともありません。



2015年

ザ・シークレット<ザ・シークレット> (角川書店単行本)ファッションの文化社会学失われた「売り上げ」を探せ!―商売繁盛の大冒険急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(ソフトバンク文庫)私に売れないモノはない! (Forest 2545 Shinsyo)

 『ザ・シークレット』は心の態度のあり方として参考になる本だと思っています。『失われた売り上げを探せ』はモノを買うのではなく、充実や人生の価値を買っているという概念の読み替えは重要ですね。



 ■2014年

昭和維新試論 (講談社学術文庫)橋川文三セレクション (岩波現代文庫)昭和の精神史 (中公クラシックス)日本精神史への序論太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)

 右傾化の懸念から、戦前の近代思想や右翼思想の勃興にさかのぼって読んだ本たちですね。橋川文三の問題意識が2010年代に活きる時代になりましたね。



2012年

ゼロ年代の想像力 (ハヤカワ文庫 JA ウ 3-1)映画の構造分析―ハリウッド映画で学べる現代思想 (文春文庫)異界を旅する能 ワキという存在 (ちくま文庫)心でっかちな日本人 ――集団主義文化という幻想 (ちくま文庫)

初版 金枝篇〈上〉 (ちくま学芸文庫)わが住む村 (岩波文庫)大阪アースダイバー裸はいつから恥ずかしくなったか―日本人の羞恥心 (新潮選書)

 物語の読解方法にこだわった年だったといえますね。『金枝篇』や『大阪アースダイバー』は現代にもひきつがれる古代精神の古層をほりおこしてくれますね。



 三年間くらいはベスト本を選んでいませんね。数冊をしぼる意味を見出せなかったり、線を引けるのかという思いがあったのかもしれません。



2009年

人生が楽になる 超シンプルなさとり方 (5次元文庫)マーフィー 人生は思うように変えられる―ここで無理と考えるか、考えないかで… (知的生きかた文庫)大きく考えることの魔術―あなたには無限の可能性がある人生がうまくいく、とっておきの考え方―自分を信じるだけで、いいことがどんどん起こる! (PHP文庫)

 心理学・自己啓発的な書物をえらんだ年だったですね。いずれも読まれることはオススメできる本ですね。



2008年

金と芸術 なぜアーティストは貧乏なのか日本を降りる若者たち (講談社現代新書)企業福祉の終焉 - 格差の時代にどう対応すべきか (中公新書)マンガでわかる売れる営業マン 売れない営業マン―ちょっと「できないフリ」がお客の心をつかむ (PHP文庫)

自分を奮い立たせるこの名文句―希望、勇気、自信…先賢の知恵に学べ (知的生きかた文庫)

 テーマがばらばらですが、なにがしか心に感銘をのこした本。



 ■2007年

女の子どうしって、ややこしい!チンパンジーの政治学―猿の権力と性 (産経新聞社の本)権力(パワー)に翻弄されないための48の法則〈上〉 (角川文庫)

 集団内での権謀術数というものにこだわった年だったです。マキアヴェリズムな本たち。



2006年

新卒ゼロ社会―増殖する「擬態社員」 (角川oneテーマ21)国保崩壊―ルポルタージュ・見よ!「いのち切り捨て」政策の悲劇をもうひとつの愛を哲学する―ステイタスの不安「心」はからだの外にある―「エコロジカルな私」の哲学 (NHKブックス)

不安型ナショナリズムの時代―日韓中のネット世代が憎みあう本当の理由 (新書y)大和の原像―知られざる古代太陽の道 (日本文化叢書 (3))労働ダンピング―雇用の多様化の果てに (岩波新書)

天照大神と前方後円墳の謎 (1983年) (ロッコウブックス)

 アラン・ド・ボトンの『もうひとつの愛を哲学する』はいまでもオススメ。もうひとつの愛とは世間に愛されること、承認欲求のことです。



2005年

 日本古代史と朝鮮歴史とはなにか司馬遼太郎と藤沢周平―「歴史と人間」をどう読むか南島イデオロギーの発生―柳田国男と植民地主義

tunazawa1.jpg帝国意識の解剖学表象の植民地帝国―近代フランスと人文諸科学308935951.jpg

tsikuma00111.jpg結婚の条件高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay

 この年は文明の序列、優劣意識のテーマにこだわった年で、おかげでベスト本は豊富になりました。先進国で優越感をいだいたり、後進国を馬鹿にするわたしたちの差別意識の根本にあるもの。『帝国意識の解剖学』がいちばんオススメかもしれません。



2004年

なぜ彼は本気で恋愛してくれないのか (ワニ文庫)この人と結婚していいの? (新潮文庫)


 男と女の感情のちがいに目を覚まさせてくれた本二冊がベストブック。この年はおもに古代史を読んでいたので、ほかは絞れず。



近年まれに見るベスト本 2004-1999年版


12 27
2015

おすすめ本特選集

2015年、おすすめできる5冊の本

 2015年、ことしも終わりですね。

 ことし読んだ中から、5冊のおすすめできる本を紹介します。

 思想・学術関連はあまり読んでいませんので見栄えの良い本はありませんが、まあ、わたし的にはよかった本をならべておきます。

 2015年、ことしは人生の終わりを覚悟するような出来事がありました。もう半年前になりますのでその深刻さはすっかり忘れたのですが、軽いパニック障害になって、メンタルクリニックに通っていました。治してくれたのは医者ではなく、ネットで見つけた経験者の治すための言葉でした。

 半年は昼からの短時間バイトをしていました。昼からの仕事がどんなに朝のゆっくりした時間をもたらしてくれるか。朝、仕事のためにたたき起こされる毎日のせわしなさ、心を亡くすことの日々を思い知らされました。

 朝の時間に短時間バイトの埋め合わせに、アフィリサイトをたちあげました。ほとんど売れませんので、アフィリ本ではなくて、販売本で売ることの学習をしていました。ブログだって、この社会に生きることだって、販売することに学ぶことがたくさんあることに気づかされた日々でした。

 ことしは失業保険の三か月分と、短時間バイトの70万ほどだけでなんとか生きてこれました。

 来年はよい年になるように祈りたいですね。

 おすすめできる5冊は販売関係の本が多くなりますが、販売関係についていない人だって、ネットや社会ではなにかを売っているような生き方をしていることは自覚したほうがよいと思いますね。ブログやツイッターで読者やフォロワーが増えないということは、店で売り上げが上がらない不安とまったく同じです。



ザ・シークレット (角川書店単行本)
KADOKAWA / 角川書店 (2015-11-10)
ロンダ・バーン


 読んで損はない本です。アマゾンではいまだにロングセラーですね。願えば叶うを引き寄せの法則といいかえたにすぎませんが、この意味は、いまの気分を明るい楽しい気分にすることの重要性です。たとえ叶わなくても、いまの気持ちをよいものに保つこと。だって気分を感じるのは、「いま」しかありませんから。



ファッションの文化社会学
ジョアン フィンケルシュタイン
せりか書房



 いまはファッションについて問われた本が少ないですね。ヴェブレンやジンメルなどの社会学の概括がわかって、納得する本です。ファッションって個性的でありたい願望と、みんなといっしょでありたい願望のせめぎあいといえますね。わたしたちはファッションによって社会での価値あるお金のようにふるまおうとしているのではないでしょうか。



失われた「売り上げ」を探せ!―商売繁盛の大冒険
小阪 裕司
フォレスト出版
売り上げランキング: 76,302


 あなたはモノを買っているとき、なにを買っているかわかっているでしょうか。著者はモノや商品を買っているのではない、人生の充実や生きている価値を買っているのだといいます。モノを買っているという誤った思い込みのヴェールをはがしてくれる本ですね。そこから店員は人生の楽しみを教えるマスター、エヴァンゲリスト(伝道師)なのだと説きます。「商品を買いたい人はこの世にいない」のです。ドラッカーもこのような概念の読み替えをよくいっていました。



急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(ソフトバンク文庫)
マルコム・グラッドウェル
SBクリエイティブ
売り上げランキング: 2,958


 販売だけの本と思うのは大きな間違いです。人が情報やクチコミをつたえる見えない伝達のありようを暴こうとした本です。ふつうマスコミの影響は目に見えますが、クチコミの大きさは見えませんね。その伝達のありようを、犯罪率や伝染病、「セサミストリート」などの深堀りによって読み解いてゆきます。各項目が濃密なので脳の情報処理が追いつかないと思える舌を巻く本ですね。鳥の目が必要なのに、すっかり森の中で虫の目だけになってしまうような濃い本です。



私に売れないモノはない! (Forest 2545 Shinsyo)
ジョー・ジラード
フォレスト出版
売り上げランキング: 18,291


 販売やセールスの本ではもう古典といってよい本ではないでしょうか。このジラードという人はひとりの客のうしろには250人のクチコミの伝達力があると悟りました。つまりいちど押し売りやだますような売り方をすると、250人の客をうしなってしまうということです。ぎゃくによい満足する買い物をすると、250人の客をつれてくる可能性があるということです。クチコミの伝達力を知った売り方でギネスに載るほどの売り上げを上げ、またこんにちのアフィリのような知人の紹介に報酬をあたえる方法を編み出していますね。知人のネットワークにこのジラードは商売をしていたわけですね。



 以上で5冊の紹介ですが、2014年は日本の右傾化に懸念を感じて、戦前の右翼思想の流れというものをつかもうと読書をつづけていました。2015年もその流れの把握は有効だと思います。こちらのほうも参考にしてみてください。

 2014年、ことしのベスト本6冊 「未来の黙示録」

昭和維新試論 (講談社学術文庫)橋川文三セレクション (岩波現代文庫)昭和の精神史 (中公クラシックス)日本精神史への序論太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)


02 19
2015

おすすめ本特選集

人文系文庫のKindle化状況を調べてみました。

 みなさんは電子書籍で本を読んでいますか。それとも紙本だけで読んでいますか。

 わたしも去年に遅まきながらKindleを買いましたが、ほしい本の多くが電子化されていないことが多いです。

 Kindleなら書店に買いにいく手間をはぶけ、ほしい本はポチッとダウンロードひとつですみますね。紙本みたいに場所もとりません。だけどほしい本の多くがKindle化されていません。

 ということで参考にまでに、各出版社のKindle化はどのような状況か、調べてみました。各文庫の件数はアマゾンでざっと調べたもので、ほかの出版社、違うシリーズの本などが混じっていて正確ではありませんが、だいたいの概要はつかめるのではないかと思います(2015年2月中旬調べ)。

 おすすめ本も何冊かつけてみました。



岩波文庫 217件/11,430件

 岩波文庫のような古典こそKindleに貯めておきたい気もしますが、はじまったばかりという感ですね。


 労働についての考え方が変わる古典ですね。

アラン 幸福論 (岩波文庫)
岩波書店 (2014-12-18)
売り上げランキング: 9,702

 アランも考えないしあわせを説きました。

善悪の彼岸 (岩波文庫)
岩波書店 (2015-01-01)
売り上げランキング: 57,410

ニーチェのキリスト教道徳への批判。


講談社学術文庫 300件/3,458件

 こちらもまだまだといった感じ。

マルクス・アウレリウス「自省録」 (講談社学術文庫)
講談社 (2013-03-05)
売り上げランキング: 11,097

二千年前のストア哲学の考えは自己啓発だったのではないかと思います。

太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)
講談社 (2014-10-24)
売り上げランキング: 46,418

時系列にメディアが戦争に呑みこまれていった様がわかります。すこし詳細すぎますが。

昭和維新試論 (講談社学術文庫)
講談社 (2013-10-25)
売り上げランキング: 75,903

昭和の軍国化へといたる精神史にはどのような流れがあったのでしょうか。


ちくま学芸文庫 54件/2,100件

 やっと手をつけはじめた感じですね。ちくま学芸文庫は絶版が多そうですから、電子化で復活するのがいいかもしれないですね。

大衆の反逆 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房 (2013-11-15)
売り上げランキング: 20,451

「多数者の専制」といった大衆への批判。

夜這いの民俗学・夜這いの性愛論 (ちくま学芸文庫)
筑摩書房 (2014-10-31)
売り上げランキング: 19,444

日本の性道徳ってむかしはもっと厳しいと思ってましたが、庶民はひっくり返っていましたね。



▼ちなみに新書の件数も調べてみました。新書は新刊から電子化されているのでしょうか。

中公新書 631件/7,500件

 中公新書の件数がいちばん多そうですね。名著シリーズなんか電子で貯えたいかも。

現代哲学の名著 20世紀の20冊 (中公新書)
中央公論新社 (2014-07-11)
売り上げランキング: 66,918



ちくま新書 435件/3,468件

 多いほうなんでしょうか。

社会学の名著30 (ちくま新書)
筑摩書房 (2013-11-22)
売り上げランキング: 41,000



講談社現代新書 361件/5,336件

 現代思想や心理学の新書を復活してほしいです。

はじめての構造主義 (講談社現代新書)
講談社 (2014-02-21)
売り上げランキング: 9,476


岩波新書  219件/10,333件

 歴史が長いだけに電子化の件数は果てしなく遠いようですね。

就職とは何か-〈まともな働き方〉の条件 (岩波新書)
岩波書店 (2015-01-01)
売り上げランキング: 77,299



 電子書籍は紙本のように膨大な場所をとらない、ひとつのタブレットに膨大な書物を貯えられる、書店まで行かずにすぐに購入できる、といったメリットがあったはずです。でもほしい本が電子化されていなかったら、なかなかメリットを享受できるところまでいきませんね。その間に紙本のスペースがどんどん積もってゆきます。でもまだわたしの中でも電子書籍と紙本、どちらで読むべきかという答えが定まっていないところもありますが。


12 31
2014

おすすめ本特選集

2014年、ことしのベスト本6冊 「未来の黙示録」

 ことしのベスト本は、ひとつのテーマを深掘りしていて、そういった興味からでないとよさがわからない本かもしれない。

 ことしはずっと近代の精神史、戦前の思想史といったものを探っていた。戦前に市民社会がどうして戦争に向かっていったのか、そのプレ精神史を腑に落ちるようなかたちで実感しようともがいていた。そういった問題意識がないと、ちょっとこれらの本のよさはわからないかもしれない。

 2014年はヘイトスピーチ本や嫌韓嫌中本があふれ、日本の自画礼賛本がたくさん出された年である。右翼化、国家主義的な流れが一線を画しはじめた年である。そういった危機感と、長年の懸念であった日本の80年周期カタストロフィー説の検証というかたちで、明治から戦前の精神史をうきぼりにさせてみようと思っていた。

 明治の終りに西欧列強の仲間入りという国家目標を達成すると、青年たちのあいだには閉塞感と煩悶があふれた。左翼思想にかぶれるもの、右翼思想の勃興などをへて、戦争にのめりこんでいった。

 そのすがたは昭和の終わりに経済大国になり、ニートやフリーターになり目標もなく、ただよう現代の青年とそっくりである。大正、昭和にかけての精神史は現代にとっては「未来の黙示録」なのである。


 【追記】 天皇陛下も2015年の年頭所感にこういいました。「満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」――「天皇陛下の新年の感想 全文



昭和維新試論 (講談社学術文庫)
橋川文三
講談社 (2013-10-25)


明治の煩悶青年がたどり、いきついた先を右翼思想の流れで読み解こうとした橋川文三がいちばん戦争へといたる精神史をうきぼりにした研究者ではなかったのかと思う。昭和維新へといたる精神史。

わたしの書評→「卓越した社会精神史――『昭和維新試論』 橋川 文三



4006002572橋川文三セレクション (岩波現代文庫)
橋川 文三 中島 岳志
岩波書店 2011-12-17

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国家目標を達成し、煩悶や恐慌にしずんだ日本の青年たちが向かった先は超国家主義や右翼思想だった。この「奇胎の40年」を生み出した精神史にいちばん肉薄したのが橋川文三ではなかったのか。

わたしの書評→「超国家主義の精神史に肉薄した一冊――『橋川文三セレクション』



昭和の精神史 (中公クラシックス)
昭和の精神史 (中公クラシックス)竹山 道雄

中央公論新社 2011-01
売り上げランキング : 8932


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八岐の大蛇のように分裂したのが戦時中の日本国家というものではなかったのか。戦前の超国家主義に導いたものはなんだったのか。資本主義や封建制の強化ではなくて、それを克服しようとした試みが泥沼の戦争へと導いたのではないのか。保守思想家の圧倒的な書物。

わたしの書評→「「主体」なき戦争国家――『昭和の精神史』 竹山 道雄



4314001712日本精神史への序論
宮川 透
紀伊國屋書店 1995-02

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忘れられた書物かもしれないが、わたしが読みたかったのは明治、大正、昭和にいたる精神の通史。戦争、超国家主義へといたる社会精神にどのようなことがおこったのか。そういった書物があまりにも少ない。

わたしの書評→「「日本への回帰」の警鐘――『日本精神史への序論』 宮川 透



4582766714昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)
半藤 一利
平凡社 2009-06-11

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これほどわかりやすく、読みやすい戦前と戦争史はないのではないかと思う。ベストセラーになっただけはある。

わたしの書評→「わかりやすく読みやすい――『昭和史 1926-1945』 半藤 一利



4061598171太平洋戦争と新聞 (講談社学術文庫)
前坂 俊之
講談社 2007-05-11

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細かすぎてかなり読みづらい書物であるが、時系列で戦争へといたる道、言論封殺がおこなわれてゆくさまが理解できる書はそうないのではないかと思う。戦争を歓迎し、政府の弱腰を批判したのは国民や新聞であったのがよくわかる。

わたしの書評→「新聞はどのように死んでいったか――『太平洋戦争と新聞』 前坂 俊之






 ことしはいつの間にか半年休むことになった。四ヶ月しか働いていませんw

 夏の終わりにバイク転倒で肋骨を折った。寝起きすらたいへんだった。バイクとのつき合い方を考える。

 Kindle Fireを遅まきながら買った。古本のほうが安かったり、ほしい本が電子化されていなかったりして、活用は多くなされていない。寝転がってのネットは生活の一部になったが。

 2015年がみなさんにとってよい年であるように。ご多幸をお祈りしております。


プロフィール

うえしん

Author:うえしん
世の中を分析し、知る楽しみを追究しています。興味あるものは人文書全般。神秘思想、仏教、労働論、社会学、現代思想、経済学、心理学、歴史学。。 そのときの興味にしたがって考えています。

Kindle本、2冊発売中です。

 

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